SUPER HAPPY FOREVERのレビュー・感想・評価
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ある男性。伊豆に旅行中、出会った女性に惹かれ、結ばれるも その女性...
ある男性。伊豆に旅行中、出会った女性に惹かれ、結ばれるも
その女性は早くに他界してしまい。感傷にひたる様子。
その女性の写真や回想、旅先で無くした帽子など、象徴のような物事
描写も映像も美しくて、物語以上に見とれてしまう鑑賞体験でした。
男性目線では、故人を偲ぶ・引きずる展開でありながら、
陰鬱な感じとまではいかず
明るさ・美しさも、ちらほらとあり。
また、帽子を軸にしてみると、いったん失われたものの、
持ち主を変えてまた生き続ける話でもありますね。
幼馴染2名、佐野さんと宮田さん、実名で役を演じて居られたことに、驚きました。
嫌いじゃないですが、もう一味ほしかった!
傑作まではいかなくとも
凪の想いが心に沁みる
妻である凪を亡くして、想像を超える喪失感に苛まれる佐野の気持ちはいかばかりであろうか?と
最初のパートは観ていられないくらい苦しくなる。
2018年8月に妻と出会った地のリゾートホテルを、2023年8月に友人 宮田と再び訪れる佐野。
そこで妻にプレゼントした赤いキャップを探すも見つからず、妻の手がかりもなく、
喪失感ばかりが彼を襲う。
そして、凪との思い出の曲をベトナム人ホテル客室清掃員のアンがうたっているのに耳を傾ける佐野。
話は2018年の凪との出会いパートになり、
いかに凪が佐野への想いを大切にしていたかが、凪の行動・言動・表情などで紡がれていく。
忘れ物が多いキャラ設定の凪、佐野からプレゼントされた赤いキャップをなくしていまい、
ずっと探し続ける。ずっとずっと。佐野と会う約束を忘れてしまうほど探すことに没頭する。
そのくらい大切な帽子。
佐野と会えないままかと思いきや、会うことができ、これが結婚までつながったのだろう。
このときが2人にとってのSUPER HAPPYの始まりだったのかなと思った。
最後は凪と出会い、忘れた帽子が出てきたら、かぶってていいよと言われたアン。
アンは凪の帽子をかぶって、今の凪と佐野の思い出のうたをうたっている、
で、それを最初のパートで佐野が聴いているのにリンクする、という、そんな終わり方である。
このあとの佐野がどうなるのか、凪との結婚生活はどうったのか、宮田とは仲直りできたのか、など
その後のストーリーは観客に委ねられた。
「喪失がもたらす幸せな想い出」
五年前と同じ旅先。同行者も同じ友人。視界には空と海の眩いばかりの青さが広がる。違うことは五年前にここで出会い恋に落ちて結婚した妻、凪が最近亡くなったことだけだ。妻が亡くなった現実は、心と精神を重く痛めつける。現実を受けいれたくない気持ちがある一方で、凪はもういない。友人の空虚な励ましや「現実を受けいれろ」といった言葉は、凪の死と向き合っている佐野にとって虚しく響き、友人に悪態をつく。そんな佐野の姿は痛々しい。
ホテルから出ようとしたとき、廊下から聞こえる歌。凪がよく口ずさんでいた歌を佐野が耳にするシーンから、回想が始まる。
佐野と凪の視線の交わり、船上での出会い、食事の好みの一致、赤い帽子のプレゼント、クラブでの二人の一体感、どの場面も佐野と凪のロマンスの始まりを告げる幸福なシーンだ。この回想は、佐野にとって永遠に特別な幸せな想い出として描かれている。
凪の旅行が友人の都合で一人旅になったことや、スマホを忘れたりライターをなくしたりするなど彼女の、忘れっぽい性格を簡潔に描写するシーンもある。凪はホテルのベトナム人の従業員と気さくに話し、写真を撮ったり、彼女の歌を聴いて「うまいよ」と一言交わしたりする。
凪の回想シーンの大部分は、佐野からもらったバースデープレゼントの赤い帽子をなくし、それを必死に探し回る姿だ。赤い帽子は凪にとって、佐野への愛を象徴する、特別な幸せを感じさせるものだった。結局帽子は見つからなかったが、ホテルを後にした佐野と偶然再会する。その時の凪の「また会えた」という心の底からの笑顔と、それに対する佐野の安堵した表情が印象に残る。
この映画の最大の魅力は、佐野だけでなく、亡くなった凪の永遠に特別な幸福感をも描写している点だ。凪の想いを映像化することで、二人の永遠に特別な幸せが多層的に伝わってくる。
愛する凪との死別。そして愛する佐野の姿。その二人が、失われたことで蘇る永遠に特別な幸福な思い出を通じて、見る者はただ身をゆだねるだけで幸福感に包まれるのだ。
思い返せばいい映画だった
見終わってすぐの感想は、「これで終わり?」だったんだけど、、、
見終わって数時間後の今思い出すと爽やかな気持ちだけが胸に残っている。
風呂でおじさんが倒れる場面はじめ、常に死が匂わされ、こちらを不安にさせる音の演出などもあり、途中恐ろしいことが起きるのでは?とも思った。
一方で二人が出会う場面は会話のディテール、二人の演技含め多幸感に溢れていた。
それこそ、こういうことがあれば人生やっていけるよなあ、と思えるくらい。
ここにテーマの一つがあるのかな?
話題というかテーマがとっ散らかってる印象がなかったわけではなくて、、
というか主題もしっかり理解できてる自信はないんだけど
その分からなさ含め、これからしっかり考えていきたいと思える映画だった。
とにかく映画館でまたみたいと思える。
素晴らしい映画体験だった。
意外と
透き通るような景色の中に感じる儚さ
タイトル通りの話
永遠に超幸せ、なんてありえないと思うので、おそらくあまり幸せではない話なんだろうと思って見始めたら、やっぱりそうだった。
主人公の男女はいずれも過去に囚われていると思う。
コンビニの駐車場でカップラーメンを食べた一瞬が永遠になり、幸せを約束するように思えるけど、見る方はすでにそれが悲しい結末に至ることを知っているので、全く幸せではない。
すでに死んだ女の映像。それは岬に出るという幽霊そのものだ。
なので、ベトナム人のホテル従業員が、キャップを掠め取ることは、悪事というよりささやかな開放だと思う。過去が成仏する感じ。
浜辺をトボトボと歩き回る男と女に比べて、彼女の自転車移動は軽やかだ。
色々とディテールがうまくかみ合っていない感じもあったが、映像に引き付けられるものがあったので、満足しました。
タイトルなし
雰囲気あっていい映画だと思うんだけど、言いたいことを言い切れていないように見えた。まあ何でも言い切ればいいってもんじゃないし、そもそも言いたいことが浅いだけなのかもしれないけど。
三宅唱の影響だと思う。「きみの鳥はうたえる」のラストは最高に素晴らしかった。誰しも憧れるぐらい完璧。そして、あれは監督が言いたいことを言い切る為にあのカットで終わるのがベスト。
「ナミビアの砂漠」も「ぼくのお日さま」もこの映画も、もっと突き詰めて突き詰めきってから撮り始めなければ傑作にはなれない。最近の若い監督のほぼほぼの作品が話の芯から距離をとって見えるけど、三宅唱とは決定的に違うかな。物語の芯に触れようとする覚悟の無さだけがこちらに伝わってくる。
結局主人公の男もその友達も赤い帽子も、何にも話し終えてないのよ。帽子は伏線のセリフ通りになったってだけで、あれで良いのかな?
ご時世もあってはっきり言えないんだけど、自分の中で表現を突き詰めきることはハラスメントにはならないんじゃないかなあ。自分一人なら何日も徹夜して精神がおかしくなってもいいんだし。
抗しがたい無常感に深く静かに感動した
お初の五十嵐耕平監督作。
これは好きだった。
今年の日本映画のベストの一本だろう。
🌾妻の凪を亡くして自暴自棄の佐野を描く第一章。
5年前に凪と出会った海辺のホテルを訪れた佐野と友人の宮田。あまりにも理不尽な佐野の行動が目にあまる。
偶然にも間もなく閉館するというホテル。アンたちベトナム人の従業員が退職の日を迎えようとしていた。
凪が5年前に失くした赤いキャップを探すも見つかることはない。
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🌾5年前、凪の一人称で語られる第二章。
そこに奇跡のような出会いがあった。
恋の魔法があった。
凪のときめきに救われて涙する、って自分は何者。
ホテルで働くアンと心を交わした束の間。
佐野からプレゼントされた赤いキャップが消えて見つからない。
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🌾時を現在に戻した第三章。
もはや佐野のグダグダを否定できない。
自分も到底受け止められないだろう。
アンたちの退職の日、赤いキャップを被ったアンがいた。凪の魂はベトナム🇻🇳に行くのかな。
ん?ミステリー?
構成美
幸せの赤い帽子
なんと言うか、連作短編の半分くらいという印象。
多分このあとアン視点と宮田視点のパートがあって、エピローグで佐野の未来が描かれるのだろう。
主に佐野視点の現在パートと凪視点の過去パートに分かれるが、あまり連動性を感じない。
もちろん話は繫がっているのだけど、ただ順番を入れ替えただけというか。
現在に戻った後は視点がアンに移り、佐野は映りもしない。
時系列で言うと、佐野は喪失感に囚われたまま宮田が去ったところで終わっていることになる。
話としては非常に尻切れトンボだった。
風呂場の老人は凪の死を想起させ、宮田の親の話は凪も若年性アルツハイマーかと疑わせる。
そうしたいくつかのパーツの意味は分かるが、物語が中途なので効果のほどを測る術がない。
ホテルの閉館も雰囲気添え程度で本筋には絡まない。
というか、佐野の再生も堕落も描かないこの作品の本筋ってどこだ。
タイトルが宮田の所属するセミナーの名前というところも、どう受け止めるべきか…
それぞれのパート、特に過去パートの雰囲気は山本奈衣瑠の自然な演技もあってとても好き。
ロッカーの赤い帽子を最初に鏡で映す演出も。
とりあえず宮田は付き合いよすぎだし、UMBROは主張し過ぎ。
SEA YOU
不思議な作品でした。
滲みまくった青春というか、喪失感たっぷりというか、邦画なのに邦画っぽくない作りに良い感じにハマれました。
序盤の佐野の自暴自棄な感じは不快さはあれどその1歩手前で憎めなさが出てきたり、第三者視点で観るとコミカルに見えるところもあったりして、この手の邦画が陥りがちな不快一直線な人物像にならずに進んでいったのでその点も良かったです(個人差あり)。
宮田がなんやかんや付き合ってくれてるのがとても良くて、本職が看護師だから救護も咄嗟にできるし、佐野が荒くれたタイミングでストッパーに入ってくれたり、社交性たっぷりなのもあって物事が順調に進むのにそれを佐野がぶっ壊す流れが宮田には失礼ですが好きでした。
宮田のSUPER HAPPY FOREVERの指輪を佐野が海に投げ捨ててしまうという中々の鬼畜っぷりに怒るでも喚くでもなく、ガクッと肩を落として部屋を去っていく宮田の哀愁がとても良い画になっていました。
それに対して佐野がまた連絡してなーって言うのでお前さぁ…って笑いがこぼれてしまいました。
不貞腐れた佐野の見る現実から過去の凪視点の映像へ戻る演出が滑らかで痺れました。
暗く描かれる現実から明るくなっていく過去の対比の映像化ってこんな感じなんだと上手いなぁってなりました。
家族の不幸で来れなくなった友達を心配しながらも折り返しの電話を頼むあたりおいおいと思いつつも、佐野が現実で語っていた携帯電話を落としそうで落とさない女性に目がいって声が出た2人がわちゃわちゃして宮田も交えて一緒にご飯も食べてクラブにも行ってとバカンスを楽しんでいるな〜という爽やかさが前半の重苦しさを払拭してくれるのもナイスなスパイスでした。
カップラーメンを2人ですすりながらこの幸せがずっと続けばいいのにね〜と言ってるのがブッ刺さりまして、、、普段からカップラーメンを食べる時に感じる幸せって格別ものなんですが、こうやって言葉に出した作品って今まであったかなとなりましたし、2人で美味しそうにすするもんですから鳴かなくていい腹の虫が鳴いてしまって恥ずかったです笑
数日の出会いだからこそのすれ違いが後々尾を引きずる展開かと思いきや5年の期間夫婦になってるもんですから不思議だよな〜とあの展開を見ても思ってしまいます。
落ちてあった赤いキャップをわざわざ古着屋に持っていって1000円で買うところも良かったですし、一つのキーパーソンである赤いキャップの登場が落とし物ってところも良かったです。
アンさんが物語の中心をつかさどって、それでいて現在と過去を繋ぐ役目も果たしているからこそ、要所要所で登場してにこやかな表情をしてくれたり、宴会会場での歌唱だったり、赤いキャップの行方だったりと初演技とは思えないナチュラルっぷりが最高でした。
夫婦として描かれるところが微塵も無かったのも面白い作りで、その間に何があったのかを観てる側に委ねる作りになっているもんですから色んな想像ができますし、最初の出会いが結婚生活よりも何倍も幸せだったのかなと考えさせられました。
旅先での出会いやささやかな幸せがここまで尾を引くとは…佐野の落胆っぷりも凪がいたからこそですし、佐野も幸せだったと思うけれど、凪も十分幸せだったんじゃないのかなと思いました。
余韻をたっぷり残してくれる素敵な作品でした。
鑑賞日 10/16
鑑賞時間 14:10〜13:55
座席 B-11
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