2度目のはなればなれのレビュー・感想・評価
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経験した人たちが抱えてきたもの、感じてきたこと、向き合ってきたこと...
経験した人たちが抱えてきたもの、感じてきたこと、向き合ってきたこと
それは年齢による変化があるのだろうと思わされてきた
戦争を語ることのなかった人たちが、歳を重ねて語り出したり
実話を基にしたこの作品も、バーニーやアーサー、レネの年齢になって、あの時からこれだけの時間を経て、自身の先を感じ始めて、行動に移せた、向き合えた、語れたことのように感じた
彼らが抱えてきたものは、とてつもなく重く、辛く、苦しい記憶
けれど、彼らだけが特別ではなかった
みながそうだった
歴史に残るストーリーでなくとも、みなにあった
バーニーたちの過去と向き合うようなこの旅も、帰りを待つレネの記憶も、そんな無数の中のひとつ
それでも、これほどに重く、胸を締め付ける
涙を抑えることなど出来なかった
バーニーも口にする、事実、truth
たくさんの事実
分かっていたはずのそれに気づかせてくれた
シリアスだけでなく、お茶目で、ユーモアも混ぜながら
忘れがたい作品
いろんな想いを残してくれた
最後の時間が、少しでも穏やかに過ぎたことを願わずにはいられない
266 大脱走する者
2024年公開
晩年はバットマンやフォーホースメンの隠れた親玉を
演じて人間味あふれるフォロワーを演じてきた
マイケルケインの引退作。
奇しくも共演のグレンダ・ジャクソンも本作が遺作となる。
館内はワタシと同世代の方たちで溢れており
これから迎える人生のラストマイルにどうするか
を一緒に体験したいと思っているに違いない。
ちなみに過去にオトンが施設から自宅に戻るため
脱走をよく企て、その際は施設内総出で居所を探したらしく
それが海を越えて異国に旅行となると
どのようになるか想像するに笑える。
バーニー(ケイン)は長嶋監督似の元軍人と行動を共にし、
お互いのケジメをつけるためにD-DAY式典に参加せず
米軍英霊墓地を訪れる。
敵であったドイツ兵との語らいも涙を誘う。
奥さんのレネとは残りの時間を一緒に暮らしていこうと
誓う。散歩時いつもイラっとさせる自転車野郎の愛車の
空気を抜くイタズラをしながら。
音楽もサントラほしいね。
あーいい話でした。
字幕は戸田奈津子御大。
この方もまだまだ頻度は少なくなるも頑張ってますな。
70点
鑑賞 2024年10月19日 京都シネマ
配給 東宝東和
70年ぶりの帰還
妻のレネと老人ホームで暮らすバーニー。彼はノルマンディー上陸作戦70周年記念式典が行われるフランスへ行くためにホームを脱走する。70年前戦場に向かう彼を見送った時と同様に妻に送り出されて。
しかし彼が向かった理由は式典の出席ではなかった。彼は70年前にノルマンディーの地に置き去りにしてきた自分自身の思いを遂げるためにかの地を目指す。
第二次大戦を経験したバーニー。彼に限らず多くの戦争体験者はあまりにもつらい体験をしたがゆえに自身の体験を語りたがらない。口に出すにはあの時の状況がいやがうえにもフラッシュバックする。あの悲惨な記憶が蘇り体験者を苦しめる。二度とあのような思いはしたくない。自身の記憶を掘り起こすことはあのつらい体験を再び体験することに他ならない。彼らの多くはそれらの記憶を心の奥底に封じ込め、その記憶は死ぬまで掘り起こされることはない。
そんな彼らを誰も責めることはできない。彼らが体験したつらい思いは体験者にしかわからないからだ。むしろ自分の体験を話してくれる体験者の方が稀有な存在なのだ。
バーニーもノルマンディー作戦から生還した時、妻のレネに何があったのか語ることは一切なかった。しかしレネは彼の気持ちを理解していた。同じ時代あの戦争を共に生き抜いた同志として。
道中でバーニーは彼と同じく戦争で心に傷を負った二人の男と出会う。同じ退役軍人のアーサー、彼にもやはり他人には語れないつらい戦争体験があった。彼は自ら行った空爆で自分の弟を死なせてしまったことを悔やみ続け、アルコールに溺れていた。また若き退役軍人のスコットもやはりアフガンへの従軍でPTSDを患っていた。
そして現地では元ドイツ兵たちとも出会った。ドイツ菓子購入を躊躇していたバーニーは勇気を振り絞って彼らと会話する。
同じ戦争体験者同士、そこには敵か味方か、勝者か敗者かなどとは関係なかった。あの時は皆が共に国のためと信じて戦った。そして両者ともにあの戦争で得たものより失ったもののほうがはるかに大きかった。会話の最中涙を流す元ドイツ兵の老人、その気持ちがバーニーには痛いほどよくわかった。
バーニーは式典のチケットを彼らに渡しアーサーを連れて戦没者の墓へと向かう。彼がこの地を訪れた理由は戦友を弔うためだった。今回この機会を逃せば二度と訪れることができないだろうという思いから。
上陸作戦でともに戦った戦友ダグラスは帰らぬ人となった。彼はバーニーの目の前で爆撃され命を絶たれた。それを間近に見たバーニーにとってそれはただ戦友の死というだけでなく、自身の命も絶たれたかのような体験だったに違いない。自分と何ら変わらぬ同世代の若者の死。自分が死んでいてもおかしくはなかった。彼が死に自分だけが生き残った、そんな自分だけが生き残ったことにバーニーは罪悪感を感じて生きてきたのだろうか。
彼は年を取り、この先の人生が決して長くないことを悟りあの時封印した自身の記憶と向き合うことにしたのだ。そしてあれ以来一度も訪れることのなかったノルマンディーの地に足を踏み入れた。同じく罪悪感に苦しむアーサーを伴い戦友を弔うために。
戦友を弔い、70年越しの心のしこりが取れた彼の心は晴れやかだった。PTSDに苦しむスコットを励まし、アーサーとも冗談を言い合い別れを告げた彼は家路を急ぐ。妻の待つ家へと。
帰還の途に就く彼をマスコミたちが追い回し、彼は有頂天になり羽目を外す。心のしこりが取れたおかげであろう。
そして帰宅した彼をあの時と同様に妻は受け入れてくれた。何事もなかったかのように。そんな妻に彼は70年前の出来事を話す。それは70年越しの告白だった。愛する妻にも話せなかったつらい体験を彼はやっと話すことができたのだ。
あの時あのノルマンディーの地に置き去りにしてきた彼の思いは今ようやく現在の彼に追いついたのだ。
心に背負っていた重荷をようやく降ろすことができた彼は愛する妻と残り少ない人生を穏やかに過ごせたことだろう。無礼なチャリダーの若者たちのタイヤの空気を抜きながら。
戦後80年になろうといういまの時代、戦争を体験しご存命である方々の人数はわずかだ。国の為政者に戦争体験者がいなくなるとその国は戦争を起こしやすくなるとよく言われる。
過去の悲惨な戦争を知らない人間たちは再び同じ過ちを犯す。いまの世界を取り巻く状況を見ていて不安になる。
バーニーがダグラスの墓の前で声を押し殺して述べた言葉が印象的だった。「無駄死にだ」と。様々な理由で始められる戦争。しかし尊い命を犠牲にしてまで正当化される戦争はこの世にはない。戦争を始めた時点でどちらが正義でどちらが悪ということもない。戦争を始めた途端それは否応なく敵味方双方の尊い命を奪い去る、戦争をするものすべてが悪に染まるのだ。
実話に基づくお話で、ちょっとシチュエーションは異なるが、同じく実話ベースの「君を想い、バスに乗る」を思い出した。高齢者の映画は自分も歳をとったせいかとにかく心に沁みる。
御年91歳のマイケル・ケイン、彼の芝居の端々からその生きてきた人生の重みが感じられるとても魅力的は俳優さんだ。これが引退作とは実に惜しい。そしてチャーミングな彼の妻を演じたジャクソンも介護士の女の子に母親のように温かく接する姿が印象的だったし、夫婦役の二人は本当に長い年月をともに連れ添ったかのように見えて見ていてとても心を癒された。
ノルマンディー上陸作戦の厳しい思い出
バーニーは元イギリス海軍の兵士で、妻のレネと老人ホームで暮らしていた。89歳の爺さんが、フランスで行われるノルマンディー上陸作戦の70年記念式典に参加しようとしたら、いっぱいだった。その事をレネに話したら、行ってもいいよって言われた。翌朝、レネが目覚めたらバーニーがいなくなっていた。黙って1人で旅立っちゃったのよ。これ、レネの認知症なのかと思ったら、そんな症状は一切無かったね。事実が分からないレネや看護師、そりゃ行方不明って事にしちゃうよな。あら、バーニーが船に。移動中もイベントって事なのかな?バーニーが出会う昔の同僚達。いろいろ思い出す戦時中の事。辛そうな事ばかり。やっぱり戦争はやっちゃダメだよね。バーニーが居なくなって昔の2人の事を思い出すレネ。ずっと仲良しなんだね。ただ、ちょっとモヤッとしたのが、2人の家族の話が無かった事。親のエピソードとか子供ができなかった(いたかもしれないけど)とかね。ストーリーとしては、それほど動かなかったけど、2人別々の思い出話しがとても良かった。2人ともコミケ能力が高くて素晴らしかった。そして、まさかのラストにウルッ。とても楽しかったです。
海岸を散歩できる幸せ
ブライトンは三苫選手がいる街ですね、海の近くの道は散歩すると気持ち良さそうでした。紅茶に4つも砂糖入れるのかぁ。イギリスの老人ホームは部屋も広くて居心地良さそう。
レネが毎日おしゃれして暮らしていること、日常的にジョークを言って和ませること、若い頃の思い出のバラの押し花を70年経っても大切にしていること、バーナードを待つレネの生活も微笑ましく愉快でした。
90歳でひとりドーバー海峡を渡るのは、そんなに大冒険という印象はなかったです。距離近いし。でも、バーナードがドーバー海峡を渡った目的やノルマンディでの出来事に感動しました。5000人の兵士の墓標の空撮にジワジワと涙が出てきました。「無駄な死」だったと呟くバーナードの言葉は重かったです。
戦争に煽られて、若い兵士には出撃以外の選択肢がなく、簡単に命を落とされてしまう。70年前(2014年時)の昔の出来事ではなく、現在も戦争の脅威が広がりつつあり、過去の教訓は活かされていない現実に唖然としてしまいます。
慰霊のロードムービーであり、夫婦愛の物語
ノルマンディー上陸作戦70年記念式典に参加するため老人ホームを抜け出し単身イギリスからフランスに向かった90歳の老人のロードムービー。
しかしその旅は慰霊であり、自ら戦争に加担した者の反省の旅だった…
と書くと、戦争色が色濃く感じるけど…
本筋は、だまって夫を旅立たせた奥さんとの夫婦愛の物語。
戦後の後悔と夫婦愛の物語のバランスが良く、とても映画らしい映画だった。
戦勝国にとってはお祝いの祭り、敗戦国にとっては慰霊の会なんだな。
夫婦であっても1人で越えるべきこと、2人だから越えられること
個人的な問題意識?から、ジョーカー2を見ようと思ったのですが、あまりにレビューが低くて迷っていたところ、たまたま目に入った本作が良さそうだったので鑑賞しました(そういう映画選びも時々あります、、、)
はっきり言います!
パートナーと共に人生を生き切るということがどういうことかを味あわせてくれる、素晴らしい作品です!
特に、夫婦であっでも、1人で乗り越えなければならないこともあれば(その間、パートナーはそれをじっと見守る)、2人だからこそ力を合わせて越えられることがある、ということを見せてくれたように思います。
本作については、映画館で映画パンフレットは売っていませんでした。少なくとも日本では作成していない感じです。もしかしたら、本作のもととなった実話のご夫婦と、演者であるベテラン俳優さん達への敬意と愛情を込めて作られたこの作品を、見る人が見て愛してくれたら嬉しい、、、そんな気持ちで公開しているのかもしれません(ボリューム層をターゲットに大ヒットを目指して制作された作品でないことは明らかなので)
作品のベースとなった実話も素晴らしいですが、実話とほぼ同じ年齢の俳優さんたちが、高齢である今もなお、演じて何かを伝えたい、とする姿に心を打たれました。
主人公のお二人の俳優さんがいなければこの作品は無いわけで、この作品がなければ、作品のもととなった実話を私が知ることは出来ませんでした。
本作を観て感じたことは、お互いを労わりあいながら生きる夫婦の力強さと優しさ、そして年齢を重ねて2人で様々なことを乗り切った後に見る、景色の穏やかさです。
私はこの後の人生、まだまだ努力しなければ、この穏やかな境地には至れませんが笑、目指すべき到達点を少しだけ垣間見させてもらったように感じました。
「まだ想像もつかないほど先の話だけれど、パートナーと生きる一生がどのようなものか知ってみたい」という若い方、あるいは、もう何十年も連れ添って来て、人生山あり谷ありで乗り越えて来た、というご夫婦には、きっと観て心を打たれる、素晴らしい作品だと思います!
ただ一点だけ老婆心ながら注意点を。
あくまで私個人が感じただけなのですが、作中のご夫婦と自分の人生と重ねて、沈む夕日を見るのは、自分にはまだ早かった、と感じました。人生を生き切った主人公2人と同化して眺める景色は、素晴らしく穏やかではありますが、その中に僅かにでも寂寥感を感じてしまう人は、この作品の後味には寂しさが残ってしまうかもしれません。
自分が経てきたティーン世代のドラマなら、自分の過去と重ね合わせて共感できるところが沢山ある気がしますが、いよいよ人生の総仕上げをする年齢を描いた映画は、まだ観てもピンと来ない、、、というより、人生が終わりになってしまうことへの寂しさを感じてしまいました。自分はまだ、誰かと共に人生を生き切っていないからなのかもしれません。
ん〜、うまく表現できませんが、大好きなおじいちゃん、おばあちゃんが亡くなった時、頑張って生きてくれてありがとう、お疲れ様、と感じながらも、やはり寂しい気持ちになるのと同じような感覚かもしれません。(観た後、なんとなく寂しくなって、少し引きずってしまいました。こう感じたのは、私だけでしょうか)。作品中では、主人公が意地悪じいさん?よろしく、無礼な若者の自転車の空気をコッソリ抜くシーンとか、クスッと笑えるシーンも色々あるんですけどね。
、、、それでもやはり、この作品は素晴らしいと思っています。制作者の皆さんと俳優さんたちに、拍手喝采です!
私もあと20年くらいしたら、またパートナーと一緒に見直したいと思います。
今回は、「作品を鑑賞するのにふさわしい年齢」というものがあるのかもしれない、、、と感じた、初めての経験でした!(^^;) まあ、これもひとつの経験ですね)。
、、、と、書いていたら、今ニュースで西田敏行さんの訃報が入ってきました、、寂しいです、、、ご冥福をお祈り申し上げます。
追伸
レビューで夫婦愛のことばかり書いてしまいましたが、
本作品で一番感動的なのは、主人公がかつてのドイツ兵と対峙するシーンと、戦没者墓地を訪れるシーンです。
あの行動、あのセリフは、長い人生を実際に生き抜いてきた俳優さんにしか出せない重みと説得力があります。本当に、泣きます!
何ヶ月か前にNHKで、日米のかつての兵士同士が野球試合をするドキュメンタリーを見ましたが、本作と同じように、人は「許し合いたい心」を抱えながら生きるのだと感じました。自分が生まれてからこの方、戦争を経験せずに生きて来られたことには、本当に感謝をしなければいけないと思いました。
ふたりの英名優のラストという価値
マイケル・ケインの最後の作品。引退されたとは知りませんでした。1998年の『リトル・ヴォイス』で、シナトラの”It’s Over”を半狂乱で歌っていたのがとにかく印象的で、以来、対策でも度々楽しませてもらっただけに残念。
本作はそんなM・ケインの最後の作品にぴったりの内容。介護施設で暮らす老夫婦の夫役を演じ、愛らしく落ち着いた英作品らしい内容でした。作中のM・ケインの老衰っぷりはどこまでの演技なのかがわからないと思ってしまうほど、痛々しくもあり、派手さはないけれど名演をされているのだと思います。
相方を務められたグレンダ・ジャクソンは本作を観るまで知らない役者さんでしたし、過去の出演作を観たこともなさそうです。かなり高齢でしたが愛らしく、若かりし頃の過去作も観たいと思わせてくれる魅力がありました。本作が遺作となられたとのこと。
映画の内容が「面白い」と言えるかどうかはわかりませんが、英国名優ふたりの芝居を楽しめる作品です。
名優の演技で楽しめた
名優の演技で最後まで楽しめたが、戦争のトラウマや果たせなかった約束などの重たいテーマがある。五千を越える墓石のシーンは、戦争の悲惨さや不毛さを訴えているが、それでも世界から戦争は無くならない。
老夫婦の愛の深さを感じ、いつも何も言わずに映画に行かせてくれる妻に、チョコではなく、シュークリームを買って帰った。
忘れえぬ良作
とても良かったです。
まず、脚本がとても良かったです。
丁寧かつ緻密に作られており、台詞の良さだけでなく、語る事・語らない事の塩梅が素晴らしくて圧倒されました。
そして、それを演じた俳優たちの演技が全て良かったです。
生のみっともなさまでも愛らしく、エンドロールでは泣きながら全ての登場人物の幸せを願わずにはいられませんでした。
賞を沢山取るような目立つ作品ではないが、生涯忘れえぬ良作というものが稀にあります。
私にとっては、この作品はまさにそれでした。
壮大なラブストーリーだったなぁ
退役軍人の冒険めいた話かと思っていたが、長年連れ添った老夫婦の愛ある美しいストーリーだったなぁ。
終盤のシーン。
2人で散歩へ出掛けた帰路でバーニーが駐めている自転車のタイヤの空気を抜いたシーンはクスッとした。
マナーを知らない若造への天罰だな。
「お爺ちゃん、やるなぁ」
2人の偉大な俳優の最後の輝きが感慨深い
物語を引っ張るのは、90歳の主人公が、病気の妻を一人残し、老人ホームを「脱走」してまで、ノルマンディー上陸作戦70周年記念式典に参加しようとする「理由」である。
度々、挿入される上陸作戦時の回想シーンから、それが、ある戦車兵の死に起因していることが明らかになっていくのだが、その一方で、主人公と戦死者が特に親しい間柄だった訳ではなく、主人公のせいで戦車兵が死んだ訳でもない(と思える)ことには、やや釈然としないものを感じてしまった。
「自分が彼を死に追いやった」と思い込んでいる主人公が、「サバイバーズ・ギルト」と呼ばれる罪悪感に苛まれ、苦しんで来たことは理解できるし、実話をベースにした物語なので、過度な脚色も避けるべきなのだろうが、それでも、「史上最大の作戦」を舞台にしたエピソードにしては、ドラマチックさに欠けているように思えてならない。
そのせいか、敵地にいた兄を、自らの爆撃で殺してしまったのではないかと苦悩する元空軍兵と、主人公が、英軍兵士が眠る墓地を参拝するというクライマックスよりも、彼らが、カフェで、ドイツの退役軍人達と、相互に敬礼するシーンの方が、「かつて殺し合いをした者同士の70年ぶりの和解」が心に響いて、感動的に思えてしまった。
いずれにしても、映画を観て、最も心に残るのは、やはり、マイケル・ケインとグレンダ・ジャクソンの、人生の重みが感じられる存在感と、人間としての深みだろう。
特に、ジャクソンは、夫の悩みを察知して、彼を記念式典へと送り出し、夫が抱える戦争のトラウマを聞いて、「あなたのせいじゃない」と慰め、夫が生還したお陰で自分達が幸せな結婚生活を送れたことを彼に理解させ、さらに、「今度いなくなる時は、私も連れてって」と「とどめ」を刺すなど、まさに完璧な妻を完璧に演じていて、強い印象を残す。
ジャクソンは、この映画が遺作になったということだし、ケインも、これで俳優を引退するらしいのだが、2人の偉大な俳優の最後の輝きを見届けることができて、観ているこちらも幸せな気分になることができた。
退役軍人
主演のマイケル・ケイン引退作、妻役のグレンダ・ジャクソンの遺作である本作
主人公のマイケル・ケインがノルマンディー上陸作戦に従軍した英国の退役軍人であり、その70周年記念行事に参加するため、施設を抜け出しアレヤコレヤ…
老人が突然一念発起して旅に出る映画はここ最近の流行りなのか何作かありますが(今年も一本観た)戦争から帰還した退役軍人という背景があるので、心に何かしら傷があるわけです
私の父方の祖父も太平洋戦争に従軍した元日本兵
終戦後は酒に溺れ、決して孫の自分達には当時のことを語らず、小学生のとき病死しましたが、今考えてみると、祖父には語りたくても語れない記憶や辛さがあったのでしょう(子供だった自分達にとっては、ただの無口なアル◯爺さんでしかなかったのですが…)
ノルマンディー上陸作戦といえば、スピルバーグの「プライベート・ライアン」の冒頭の壮絶シーンが有名ですが、その裏にはその戦いに参戦した連合軍、敵国のドイツ軍、敵味方関係無く壮絶な過去があるのだ、ということを痛感する作品になっております、オワリ
マイケル・ケイン、任務完了
【これだけ長期間、テレビで、映画館で、見続けられた俳優は、イーストウッドとマイケル・ケインの他にいるだろうか】
「マルセイユ特急」淀川長治の日曜洋画劇場だったとおぼろげに記憶している。
(前後で「リオの男」荻昌弘、「フレンチ・コネクション」水野晴朗だったような・・・)
劇場で「遠すぎた橋」「殺しのドレス」を鑑賞した時の衝撃は、
今も鮮明に記憶に残っている。
ヒッチコック「サイコ」のパーキンス変装キラーの恐ろしさは、
エンタメとしての怖さ、
デ・パルマ「殺しのドレス」のマイケル・ケイン変装キラーの気味悪さは、
振り返ったらそこにいそうな不気味さだった。
「勝利への脱出」「デストラップ」「ハンナとその姉妹」といった作品以降、
マイケル・ケインからは、
ローレンス・オリビエ、
アンソニー・ホプキンス、
ヒュー・グラント、
ジェレミー・アイアンズといったイギリス俳優特有の、
美しいイギリス英語と、
舞台で培われた特徴的なセリフ回しが際立っていた。
これらの要素は、
作品のテイストの影響もあり、
現代の俳優には日本ではなかなか見られない、
貴重なものになりつつある。
約半世紀にわたり、
新作映画を劇場で観ることができるという経験は、
感慨深いものがある。
本作では、
ノルマンディ上陸作戦というWWⅡの歴史的転換点の戦闘を舞台に、
歴史に翻弄され、
悲運を背負った老兵たちの、
心の傷跡を丹念に描き出し、
戦争の残酷さと人間の尊厳を、
若兵、老兵、ドイツ人も含めて対比させる。
作品の性質上、
回想のカットバック、シーンバックが多くならざるを得ない、
一般的には回想が増えるとストーリーにブレーキが掛かる、
が、
それらを感じさせないような若い人たちを配置するシナリオ、
その役割を的確に演じる芝居と演出の技術の高さは、
ケインやグレンダ・ジャクソンへの敬意の表れでもあるのだろう。
戦闘時の空、陸、海の悲劇、
ドイツ人の敬礼、フランス人の感謝など、
歴史から抜けられない出来事が丁寧に描かれている。
そして、ケインが任務完了、
タイヤの空気を抜いて、状況終了、
マイケル・ケイン、
グレンダ・ジャクソン、
そして
戦争という過酷な時代に生きた人々への、
贈り物のような作品だった。
【蛇足】
テレビで何度も観た、
「史上最大の作戦」→「The Longest Day」
「大脱走」→「The Great Escape」
本作は
「The Great Escaper」
ノルマンディ上陸作戦にかけて、
ではなく、
気持ちはマックィーンのヒルツ大尉なのかもしれない、
脱走17回・・・いや18回。
【蛇足の蛇足】
モーリス・ジャールの史上テーマと、
バースタインの大脱走テーマが、
口ずさんでると、
どちらかわからなくなる・・・
「ひまわり」「犬神家の一族」
「ロング・グッドバイ」
テレサ・テン「つぐない」
あるある・・・
名優マイケル・ケイン引退作品。グレンダ・ジャクソンの遺作 。ノルマンディー上陸作戦に参戦した男とその妻の70年目の”一番長い日”。
名優マイケルケインの引退作品。
なのになんていうコピーか。
「笑顔で、泣ける!!」人情コメディか。
「ノーランに愛された男」ノーランにもケインにも失礼。
よほど売りにくい作品らしい。
しかも、パンフレットも無し。
数々の出演作品の一覧を見ながら、解説を読もうと思ってたのに。
さらに予告編のイメージも”夫婦愛”感動作としてしか語っていなかったが、実際に観たら、もう一つの大きなテーマ「ノルマンディー上陸作戦」にほとんど触れていなかった。
その70周年記念式典に出席するために、施設を脱走。
70年ぶりに再び海峡を渡るために、離れ離れになった夫婦の話。
どこかユーモラスなのは、夫婦役二人の役者の真摯な名演があってこそ。
二人の名演と言うより、やはり二人のこれまでの人生の重みが画面から伝わってくる。
グレンダ・ジャクソンはイギリス公開前に他界、遺作になったのは残念。
’60~'70年代に活躍した俳優たちの新作がもっと観たいです!!
もう病気で絶対に行けないのに、次は一緒に行くという妻と並んだ二人が、一瞬若い姿に戻るカットが今思い出しても泣ける。
自分の今後に重ね合わせ、涙ウルウル
とても良かったです!と共に、観る方たちの年代により受け止め方は様々かとも。
ワタシ自体戦争体験は無いし、戦争を知らない子供たちが流行った年代よりも少し後の世代ですから、肌感覚はありませんが、自分の意志とは関係なく駆り立てられた戦争での恐怖・罪悪感・痛みなどは十分わかっているつもりです。
そして、愛する人と離れ離れになる辛さ、戻って来れても来れなくても、行く方・見送る方、戻りたい方・ひたすら待つ方、どちらも胸が張り裂けそうな想いになるのも分かるつもりです。
今回描かれた退役軍人たちは、年代や国に関係なく心に何らかの傷を負いながら日々を過ごしているのを見るにつけ心も締め付けられます。
やはり戦争とは何も幸福をもたらさないものだと改めて思わされるのに、どうして至る所でいまだに戦争が起き、治まることが無いのでしょう。
それでも主人公夫婦は日々の暮らしをユーモアを交えながら茶目っ気たっぷりに過ごしていきます。
「無駄な時間は1秒も無かった」ただの日常、素晴らしい言葉でした。
パートナーと過ごす日々をより大切に、特別な普通の暮らしを大事にしたいと深く深く思わされる作品でした。
心の傷と夫婦の愛
マイケル・ケインとグレンダ・ジャクソンの演技がすごすぎて、泣けてしまった。
すごく地味な内容で、決して派手なアクションも大きなトラブルもない。
ともすれば、間延びして退屈に感じてしまうかもしれません。
しかし沁みる。
・戦争の語り部の必要性、語り継ぐことの重要性
・70年経ってもPTSDを抱えるほどの戦争のむなしさと怖さ
・70年以上にわたる夫婦の愛。
というテーマがガツンと前面に出ているのがひしひしと伝わってくる。
決して戦争を美化せず、愛国心と戦勝を祝うことをアピールすることもせず、むしろ主人公やフェリーで知り合った退役軍人たちの姿を通じて、戦争とはいかに「心の傷」を残すのかということを徹底的に描いていて、すごく大事だなと。
そして、その旅を経たことで、夫婦の間にお互いへの愛があふれ出す。
見た目はお互い老けたけど、心は新婚当時の20代から何一つ変わらない、いやもっと好きになってる。
ああ、なんかこういうお爺ちゃんお婆ちゃんになりたい!
モデルになったご夫婦は7日差で亡くなったとのことで、ほぼ一緒に旅立ったようですが、マイケル・ケインは引退とグレンダ・ジャクソンは公開前に死去で、演じた二人も同時にはなればなれ、という現実がシンクロしてなんだかより沁みてしまいました。
マイケルケイン引退作品ですと!?
そんな悲しい触れ込みじゃあ観ないわけにはいかない
で、面白かったかと言えば「う~ん」
設定も役者の演技も全く問題ないのだが
どうしても全体が間延びしてしまっている
つまり、退屈な時間が常に付きまとう感じ
夫婦の関係性、Ddayを絡めた悔恨と終活
老人たちの残された時間はそう多くはないのだが
その流れる時間をまるで老人たちと同じ感覚で
スローに観る者に味あわせることには賛否がありそう
いい作品になりそうな要素満載だったんだけど
なんだか残念
でも、マイケルケインが見れて満足です
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