2度目のはなればなれのレビュー・感想・評価
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レビューで評価が良かったので見てみました。
この夫の気持ちは良く分かる。
目が見えるうちに
足が動けるうちに
見ておきたいもの、
行っておきたい場所があり過ぎて。
その日じゃないと開催されない大切なイベントや、例えお墓の前であってもまた会いに行くべき人のもとへは命があるうちでなきゃ行けない。
そして、行ったら必ず家に帰ってくるから。送り出してくれた奥様にも拍手。
思い出の朝日を見た時のこと、ずっと忘れないでいてその日のバラを押し花にして思い出を取っておいたことも素敵。
また晩年になって2人で朝日を見れて良かったです。
主人公が、ドイツの退役軍人の皆さんに入場パスを渡すところ、相手の方が感無量で泣いてしまったら無言で手を取り、お互いに敬礼する場面で思わず泣いてしまいました。
戦争のことは考えさせられるけれども、とても落ち着いた時間の流れる良い作品でした。。!
一緒に年を重ねる相手がいる幸せ
観るタイミングを逃して終了間近にやっと観れました
ほのぼのとしたストーリーかと思えば、心にズシリとくる作品でした
あらすじ通り夫婦愛がテーマでしたが、もうひとつ、戦争から帰れた人の心の重りもテーマだと思いました
無事帰れたからめでたしめでたしではなくて、生き残ったという罪悪感を抱えたまま生きる辛さ
悪いのは戦争で、生き残った人には何の責任もないのに
誰にも相談できず、その罪悪感から自分を解放できるのは自分自身で、だから何十年も罪悪感を抱えたままなのかもしれません
そして夫婦愛、バーニーとレネの夫婦愛が本当に心にきました
送り出して帰りを待つ妻、あの心の強さがすごい
「私達は結婚してから1秒も無駄にしていない」、そんな風に言えるって素晴らしすぎます
ごく自然に会話しているラストシーンがまた美しくて、もう涙ポロポロ
一緒に年を重ねる相手がいるって本当に幸せな事だとつくづく思いました
そして、やりたい事はやるべきなんです
これが実話だと後から出てきてさらに感動でした
終活最大の難問
戦争を生き抜いた世代の、終活の話だと思った。
「THE GREAT ESCAPER 」
たしかに「大脱走(者)」ですね、歩くのすらおぼつかない90歳が、誰の世話も受けずたった一人で連絡船乗り場まで行き、ドーバー海峡を渡り、現地に行ったのだから確かに偉大かも。
但し、計画性なし、お金だってない。(ちょいボケ入ってたか?)
アーサーが助けてくれなかったら野宿するしかなかった。
そういう夫を普通に送り出した妻・レネも相当肝が座ってる。
そっけないが、ツンデレなのだ。
ノルマンディー上陸作戦を経験したバーニーが、70周年記念式典にどうしても参加したかったのは、心に刺さった杭と折り合いをつけるには最後のチャンスと思ったからだろう。それは、バーニーに親切にしてくれた、育ちの良い金持ちジェントルマン・アーサーも同様。バーニーは、行きずりの戦友を死なせてしまったのは自分では、という葛藤に苦しみ、アーサーは、弟を殺したのは自分では、という罪悪感とともに生きてきた。
そして、それはノルマンディーで迎え撃ったドイツ兵にも。
彼らも、ここで命を落とした「英霊」を悼むために、ひっそりとやってきた。
彼らも、これが最後の機会だと思ったのだろう。
言葉少ない彼らに、バーニーはそっと手を重ねる。
憎きドイツ軍だが、個人として何の悪意があったのか。
ドイツ兵であっても、ここで多くの同胞を亡くし辛い時代を共有したという点では同士ではないか。
手と手を重ねて視線を交わしただけで、お互いの人間としての苦悩を共有できたよう。
バーニーは、自分とアーサーの参列の特等席を彼らに譲る。
追悼の式典なら、彼らには十分出席する資格があるのだ。
そんな風に思えるのは、70年という年月がバーニーの思考に、熟成の期間を与えたからだと思う。
ノルマンディー上陸作戦の数ヶ月前から、ドイツ軍の増援部隊や装備を迅速に動かせないよう連合軍の爆撃機がフランスの道路網や鉄道網を攻撃し、フランスの民間人が多数犠牲になった事実がさりげなく挟まれる。ドイツ軍との戦闘を生き延びたアーサーの弟は、民間人のレジスタンスに救われたのに、味方であるはずの、アーサーも含めたイギリス空軍の爆撃でやられた。手を下したのは自分かもしれない。こんなとんでもなく皮肉なことも、現実にはあったことだろう。
やはりバーニーに親切にしてくれた、現代の戦争で片足を失いPTSDを抱える若い元軍人の連絡船乗務員は、アーサーともども、お返しとしてバーニーから人生を大きく変える光をもらった。
情けは人の為ならず、とはこういうことだと思った。
バーニーとレネの、互いに口にすることはない終活は着々と進むが、最大の難関が見えてくる。
それは、どのように逝くか、ということ。
夫婦仲が良いのは、人間が得られる幸せの中でも最上級なものの一つだと思うが、死ぬときは大抵はひとりづつ。仲が良い分残されたほうの辛さはいかばかりか。
子どももいないようだし、この夫婦はあるときからずっと、このことを考えてきたのだろう。
「今度離れ離れになるときは、私もついていくことにした」
言葉通りにできたレネの終活は、GJだったようだ。
マイケル・ケインはさすがな名優、大物オーラを出すこと無く、思慮深さと意志の強さを持ち、少々ボケが入った「普通の老人」を、いとも自然に、言葉に頼ること無く表情と醸し出す空気で演じている。
我が物顔のサイクリストに仕返しで自転車のタイヤの空気を抜いたり、思いがけず有名人になって浮かれて反省したり、笑ってしまった。だけど夫は妻のためにすかさず巨大なスイスのチョコレートをプレゼントしてもらってたよね。高価なソーセージももらって、食いしん坊な妻を喜ばせたい、微笑ましい夫ぶりです。
90歳でも毎日お化粧し、美容活動に余念がないレネは若い頃、相当モテたようなので、バーニーはずっと気が気ではなかったかも。今だってツンデレで、かわいいおばあさんだし。
但し、頭が良く思慮深いであろう以外、アーサーの人となりは良くわからない。
妻をひたすら愛しているのは確かだが、育ちも欠点もわからないからちょっと不気味な気もする。
若い頃に見たらどうということない映画と思っただろうが、あと30年もすれば歩くのもおぼつかない、身の回りの世話すらひとりでは苦労するような時が来るのだと身につまされた。
その頃自分はどんな生活をしているんだろう、いや、そこまで生きていないかも
自分、人生も後半で、あとは衰えていくだけ、それはどうしようもない現実だ。
時が経つのは早く、つい昨日と思っていた若い頃がいつの間にか遠い過去のものになっていて愕然とする。
人生は短い、とつくづく思ってしまった。
それにしても、うらやましい夫婦ですよね。
愛する人と離れることなく、ケアが行き届いた小綺麗な高級(に見える)老人ホームに暮らし、車椅子を押しながらの散歩の途中でふたりで躊躇なくアイスクリーム食べられるくらいのお小遣いもある、夢で思い描くようなゆとりある老後ではないですか。
戸田奈津子さんが字幕を務めていて、ご自身もご高齢なので老境を描いた映画には適任だったように思いました。
タイトルなし(ネタバレ)
「史上最大の作戦」こと第二次大戦のノルマンディー上陸作戦。
その日は「Dデイ」と呼ばれる。
2014年はDデイ70周年の節目だ。
英国の海辺の町ブライトンの老人ホームで暮らすバーニー(マイケル・ケイン)とレネ(グレンダ・ジャクソン)。
英国のDデイ記念式典に申し込み忘れたバーニーは、式当日、フランスでの式典に参加すべく、早朝ひとりでホームを抜け出した・・・
というところからはじまる物語。
日本タイトルの「2度目」は今回のバーニーとレネの「はなればなれ」。
1度目は大戦の際のことだった。
バーニーは、Dデイでの「忘れ物」を70年経ち、死期も迫った現在になって成就しようと試みる。
いい映画なんだけど、50年目ぐらいで実行すればいいのに・・・と思ってしまい、やや乗り切れず。
ま、死期がみえたからの決心なのだろうが。
個人的には、道中、バーニーが知り合う元空軍爆撃士のエピソードが切なかった。
監督のオリバー・パーカー、脚本のウィリアム・アイヴォリーとも、作品を観るのは本作がはじめて。
大戦シーンや過去の回想など、やや水増し的だなぁと思いました。
マイケル・ケイン、グレンダ・ジャクソンとも、若い時分は、どちらかというと苦手な俳優さんだったんですが、本作では「流石」と思いました。
人生のHOLY HOUR
通常スクリーンで鑑賞(字幕)。
名優マイケル・ケインの引退作。実話を元に、老夫婦の70年に渡る愛と絆、人生のホーリー・アワーを美しい映像と共に描き出す。ずっと戦争の傷を抱えて来た夫の心を癒した妻の言葉に涙が止まらなかった。本年度ベスト級の感動作だと思う。
慈愛に満ちた作品
戦争のトラウマというかやり残したことを
やり遂げる主人公バーニーと
その目的を黙っていてもわかり、帰りを待つ妻のレネ。
黙ってやり残したことをやり遂げるためにいなくなる夫を
妻はちゃんと理解しているのだろうと思うのですが、
その関係性と慈愛の深さに敬服するばかりでした。
やり残したことをやり遂げたからこそ
充足していた人生だったと思えるのでしょうね。
それを見守る妻も然りで。
ww2時と現在、2回にわたり夫を送り出す妻。
だから2度目のはなればなれ。
3回目は一緒に行くという妻。
行き先は、、、
バーニーを始めとする退役軍人の佇まいが
キリッとしていて好きです(特にバーニー)。
さらにはフランスで出会ったドイツ人の退役軍人との
やりとりにはグッときました。
自分自身、老後と言いましょうか、終い方を考えさせられ
ました。私事ですが今夏に亡くした母のことを思うにつれ
自分の死生観にも思いを馳せてしまう作品でした。
優良(有料)老人ホームのオシドリ夫婦に癒やされる
マイケル・ケイン(1933年3月14日生まれ)の引退主演作。
私が印象に残っているマイケル・ケインは2000年のサンドラブロック主演のデンジャラス・ビューティーのお〇まのメイクアッププロデューサーのベクター。
あのとろ~んとした目。下瞼のぷよぷよ感。やり手のオ◯マ感がスゴかった。
イケメンの若いころは全然存じあげません。すみません。
Dデイ。
うんっ、デイリーヤマザキのポイント5倍デーか?
予約するの忘れていたけど行ってみようかな?
アタシのことは大丈夫だから、行ってきなさいよとレネ(グレンダ・ジャクソン:同じく1933年生まれ)に背中を押され、早朝のドーバー行のバス停へ。
出勤してきた施設職員にどこに行くの?お散歩?などと話しかけられているうちにバスが行ってしまう。タクシーを飛ばしてフランスにわたるフェリーに乗る。真っ青のビニール袋と手押し歩行器だけ。ちょっとボケてる。計画性ゼロ。レネが長年面倒みてくれていたせいだね。イラク戦争で地雷で片足をなくした黒人のあんちゃん添乗員や寂しい元英国空軍兵のアーサーにとても親切にしてもらってホテルのツインルームに泊めてもらえたよ。PTSDについてのフラッシュバック描写。アーサーは何となく小堺一機にみたいな雰囲気の俳優さん。退役軍人たちの同窓会的な式典。オバマがオマハ・ビーチで演説したのは2014年の70周年の時。
サーベル・コースト。
戦車をのせた揚陸艇のチーフだったボーニー。戦車兵から恋人の写真と手紙の入ったタバコ?のブリキの小箱を突撃直前に託される。ボーニーの目の前で戦車兵は上陸してすぐに砲弾が当たって帰らぬ人に。過酷なノルマンディ上陸作戦。
リナ役のグレンダ・ジャクソンは公開直前に亡くなって、遺作になってしまいました。菅井きんさんや金さん銀さんを思い出していました。
リナはボーニー意外にも複数のイケメンと付き合っていたみたい。
部屋に散乱した古い写真がね。
警察も臨機応変にSNSを活用し、大脱走した バーニーは一躍時の人に。
テレビで観ていたリナ。
バーニーがいろいろ報告するんだけど、知ってるわよ❗
意外と素っ気ないところがリアル。
お金貯めよーっと。
邦題が…
「新宿で」
癒やされる〜☺️
品格ある反戦
良い話の一言で片付けてはいけない
戦局を決めたノルマンディ上陸作戦を共に戦い、彼の地で目の前で亡くなった戦友を思う。戦争という我々の想像を遥かに超えた厳しい時代に青春を捧げて、せめて次の世代は戦争のない平和な時代をと願って自分たちの国は正しいと信じ戦ったあの頃を思う。
彼ら老夫婦を取り巻く環境は小さいけれど温かな幸せに満ちているし、お互いを気遣い、愛を積み重ねながら、自らが存在したことを世間に示しながら天寿を全うしていく姿はとても素晴らしい。カットも丁寧に積み重ねられていてふたりは常にチャーミングで前向きだ。遺恨を残しているはずの元敵兵とのエンカウントも素敵な話に昇華しているし、トラウマと向き合う姿も感動的だ。
あまりの素晴らしさに涙が溢れる映画だが…ちょっと待て。
第二次世界大戦での世界の戦死者は5千万人。明治の終わり頃の日本の人口と同数の命が失われている。
5千万通りの、あったはずの未来の幸せや人生が失われて、その犠牲の上に今の我々の、世界の毎日が成り立っていて、とはいえ愚かにも人類は終戦後もずっと紛争や戦争を延々と続けていて、ここ最近のウクライナとロシア、イスラエルとパレスチナの戦争はそのまま次の大戦にまでもつれ込みそうな勢いだ。
この80年の間に日本はジリジリと国際的な地位を下げて曾祖父さんの世代が望み創り上げた「子供達が当たり前に腹一杯食べて毎日笑っていられる世界」はとうの昔に失われてしまった。街は移民や旅行者で溢れて治安は悪くなる一方、楽して儲けることこそが美徳で汗水垂らして働くのは勘弁で他人からの承認が全ての世界が回っている。これでは未来のために戦った世界中の英霊に誰ひとり顔向けができないのではないか?どうしたら個人の小さな力で戦争のない世界を実現できるのか?そんな思いが映画館を出て夜の寒さに震える私の胸に去来した。
みたいな文章が書きたくなる映画です。日本の湿っぽい反戦映画をこんな詩的に仕上げられる英国人のセンスに脱帽しました。まあ敗戦国で自虐史観しか植え付けない教育受けてたらこれは作れないよね。さすが戦争に負けたことのない国だわ。
マイケル・ケインとグレンダ・ジャクソンの老夫婦がお互いをずっと愛し続ける姿は、倦怠期を過ぎてパートナーに興味すらない人々には眩しすぎるかもしれないから夫婦やカップルで行くのはお勧めできないかもしれないと思ったりしましたね。
それでは次回をお楽しみに!
あと選挙に行ってから映画見よう!
ハバナイスムービー!🎞️
The Grate Escaper
イギリスの海辺の町の老人ホームに、妻のレネと共に住んでいるバーニーは、退役軍人(元海軍兵)。
ノルマンディー上陸作戦に従軍していた。
70周年式典の開催にひとりで向かうのだが、齢(よわい)90歳。
施設では突然いなくなったバーニーが脱走したのかと騒ぎになり…といった物語。
鑑賞前は「ハロルド・フライ」のような高齢者のロードムービー的な話かなと思っていたが(似た要素ではある)、戦争のつらい思い出と妻との絆を描いた話である。
心がひどく傷む戦争の記憶。フラッシュバックするダグラスの姿。バーニーの背中を押し、また迎え入れ、最後まで寄り添った妻との姿に涙した。
邦題が良いと思った。字幕が戸田奈津子さんで、こちらもお久しぶり。戸田さんも88歳、感慨深い。
マイケル・ケインの出演作を見たのは「サイダーハウスルール」(1999)が最後だったため、おじいさんになったなあと思うと共に、これでもう引退と知ると、とてもさびしく思う。
戦争体験世代
週刊文春のシネマチャートにて、評者5人中全員4つ星以上うち2人は5つ星だった。よくある老人向けの映画だろうという先入観は捨てきれなかったものの、結局、気になって観に行った。
イギリスの名優といわれるマイケル・ケインとグレンダ・ジャクソンだが、50代の私にとっては、思い入れのある俳優ではない。つまり、よく知らない。それぞれ2度のオスカーを受賞しているということなので、ネットで調べてみた。
マイケル・ケインは、「ハンナとその姉妹」(1986)、「サイダーハウス・ルール」(1999)で最優秀助演男優賞、グレンダ・ジャクソンは、「恋する女たち」(1969)、「ウィークエンド・ラブ」(1973)で最優秀主演女優賞を受賞している。そのほか数々の各国映画賞受賞歴は枚挙にいとまがない。なお、グレンダ・ジャクソンは、1992年に政界に転出し、労働党から立候補して当選、運輸政務次官まで務めたが、2015年に政界を引退し、80代で女優業に復帰したという経歴の持ち主である。
この映画は89歳の退役軍人バーナードがノルマンディー上陸作戦記念式典に参加するため老人ホームを抜け出したという実話を元に描かれている。
老人ホームで暮らす老夫婦は互いに寄り添いながら人生最期の日々を過ごしている。老いの現実を美化することなくありのまま受け入れ、誇りやユーモアを忘れないところが魅惑的だ。一方、戦争の無惨さを伝える題材として、PTSDのメンタルケア、亡き戦友が眠る戦没者墓地への参拝などが挿入される。若いころに戦場で負った心の傷はずっと癒されることはないのだ。
老親を抱える50代以上の人にぜひ観てほしい映画である。戦争とは語り継ぐべきものなのに、戦争体験のある語り部は年々減ってきている。この映画は戦争を美化しているのではなく、そこで戦った老人たちを讃えている。
昨年87歳で逝去したグレンダ・ジャクソンは遺作に、3歳年上のマイケル・ケインは引退作となった。
経験した人たちが抱えてきたもの、感じてきたこと、向き合ってきたこと...
経験した人たちが抱えてきたもの、感じてきたこと、向き合ってきたこと
それは年齢による変化があるのだろうと思わされてきた
戦争を語ることのなかった人たちが、歳を重ねて語り出したり
実話を基にしたこの作品も、バーニーやアーサー、レネの年齢になって、あの時からこれだけの時間を経て、自身の先を感じ始めて、行動に移せた、向き合えた、語れたことのように感じた
彼らが抱えてきたものは、とてつもなく重く、辛く、苦しい記憶
けれど、彼らだけが特別ではなかった
みながそうだった
歴史に残るストーリーでなくとも、みなにあった
バーニーたちの過去と向き合うようなこの旅も、帰りを待つレネの記憶も、そんな無数の中のひとつ
それでも、これほどに重く、胸を締め付ける
涙を抑えることなど出来なかった
バーニーも口にする、事実、truth
たくさんの事実
分かっていたはずのそれに気づかせてくれた
シリアスだけでなく、お茶目で、ユーモアも混ぜながら
忘れがたい作品
いろんな想いを残してくれた
最後の時間が、少しでも穏やかに過ぎたことを願わずにはいられない
266 大脱走する者
2024年公開
晩年はバットマンやフォーホースメンの隠れた親玉を
演じて人間味あふれるフォロワーを演じてきた
マイケルケインの引退作。
奇しくも共演のグレンダ・ジャクソンも本作が遺作となる。
館内はワタシと同世代の方たちで溢れており
これから迎える人生のラストマイルにどうするか
を一緒に体験したいと思っているに違いない。
ちなみに過去にオトンが施設から自宅に戻るため
脱走をよく企て、その際は施設内総出で居所を探したらしく
それが海を越えて異国に旅行となると
どのようになるか想像するに笑える。
バーニー(ケイン)は長嶋監督似の元軍人と行動を共にし、
お互いのケジメをつけるためにD-DAY式典に参加せず
米軍英霊墓地を訪れる。
敵であったドイツ兵との語らいも涙を誘う。
奥さんのレネとは残りの時間を一緒に暮らしていこうと
誓う。散歩時いつもイラっとさせる自転車野郎の愛車の
空気を抜くイタズラをしながら。
音楽もサントラほしいね。
あーいい話でした。
字幕は戸田奈津子御大。
この方もまだまだ頻度は少なくなるも頑張ってますな。
70点
鑑賞 2024年10月19日 京都シネマ
配給 東宝東和
70年ぶりの帰還
妻のレネと老人ホームで暮らすバーニー。彼はノルマンディー上陸作戦70周年記念式典が行われるフランスへ行くためにホームを脱走する。70年前戦場に向かう彼を見送った時と同様に妻に送り出されて。
しかし彼が向かった理由は式典の出席ではなかった。彼は70年前にノルマンディーの地に置き去りにしてきた自分自身の思いを遂げるためにかの地を目指す。
第二次大戦を経験したバーニー。彼に限らず多くの戦争体験者はあまりにもつらい体験をしたがゆえに自身の体験を語りたがらない。口に出すにはあの時の状況がいやがうえにもフラッシュバックする。あの悲惨な記憶が蘇り体験者を苦しめる。二度とあのような思いはしたくない。自身の記憶を掘り起こすことはあのつらい体験を再び体験することに他ならない。彼らの多くはそれらの記憶を心の奥底に封じ込め、その記憶は死ぬまで掘り起こされることはない。
そんな彼らを誰も責めることはできない。彼らが体験したつらい思いは体験者にしかわからないからだ。むしろ自分の体験を話してくれる体験者の方が稀有な存在なのだ。
バーニーもノルマンディー作戦から生還した時、妻のレネに何があったのか語ることは一切なかった。しかしレネは彼の気持ちを理解していた。同じ時代あの戦争を共に生き抜いた同志として。
道中でバーニーは彼と同じく戦争で心に傷を負った二人の男と出会う。同じ退役軍人のアーサー、彼にもやはり他人には語れないつらい戦争体験があった。彼は自ら行った空爆で自分の弟を死なせてしまったことを悔やみ続け、アルコールに溺れていた。また若き退役軍人のスコットもやはりアフガンへの従軍でPTSDを患っていた。
そして現地では元ドイツ兵たちとも出会った。ドイツ菓子購入を躊躇していたバーニーは勇気を振り絞って彼らと会話する。
同じ戦争体験者同士、そこには敵か味方か、勝者か敗者かなどとは関係なかった。あの時は皆が共に国のためと信じて戦った。そして両者ともにあの戦争で得たものより失ったもののほうがはるかに大きかった。会話の最中涙を流す元ドイツ兵の老人、その気持ちがバーニーには痛いほどよくわかった。
バーニーは式典のチケットを彼らに渡しアーサーを連れて戦没者の墓へと向かう。彼がこの地を訪れた理由は戦友を弔うためだった。今回この機会を逃せば二度と訪れることができないだろうという思いから。
上陸作戦でともに戦った戦友ダグラスは帰らぬ人となった。彼はバーニーの目の前で爆撃され命を絶たれた。それを間近に見たバーニーにとってそれはただ戦友の死というだけでなく、自身の命も絶たれたかのような体験だったに違いない。自分と何ら変わらぬ同世代の若者の死。自分が死んでいてもおかしくはなかった。彼が死に自分だけが生き残った、そんな自分だけが生き残ったことにバーニーは罪悪感を感じて生きてきたのだろうか。
彼は年を取り、この先の人生が決して長くないことを悟りあの時封印した自身の記憶と向き合うことにしたのだ。そしてあれ以来一度も訪れることのなかったノルマンディーの地に足を踏み入れた。同じく罪悪感に苦しむアーサーを伴い戦友を弔うために。
戦友を弔い、70年越しの心のしこりが取れた彼の心は晴れやかだった。PTSDに苦しむスコットを励まし、アーサーとも冗談を言い合い別れを告げた彼は家路を急ぐ。妻の待つ家へと。
帰還の途に就く彼をマスコミたちが追い回し、彼は有頂天になり羽目を外す。心のしこりが取れたおかげであろう。
そして帰宅した彼をあの時と同様に妻は受け入れてくれた。何事もなかったかのように。そんな妻に彼は70年前の出来事を話す。それは70年越しの告白だった。愛する妻にも話せなかったつらい体験を彼はやっと話すことができたのだ。
あの時あのノルマンディーの地に置き去りにしてきた彼の思いは今ようやく現在の彼に追いついたのだ。
心に背負っていた重荷をようやく降ろすことができた彼は愛する妻と残り少ない人生を穏やかに過ごせたことだろう。無礼なチャリダーの若者たちのタイヤの空気を抜きながら。
戦後80年になろうといういまの時代、戦争を体験しご存命である方々の人数はわずかだ。国の為政者に戦争体験者がいなくなるとその国は戦争を起こしやすくなるとよく言われる。
過去の悲惨な戦争を知らない人間たちは再び同じ過ちを犯す。いまの世界を取り巻く状況を見ていて不安になる。
バーニーがダグラスの墓の前で声を押し殺して述べた言葉が印象的だった。「無駄死にだ」と。様々な理由で始められる戦争。しかし尊い命を犠牲にしてまで正当化される戦争はこの世にはない。戦争を始めた時点でどちらが正義でどちらが悪ということもない。戦争を始めた途端それは否応なく敵味方双方の尊い命を奪い去る、戦争をするものすべてが悪に染まるのだ。
実話に基づくお話で、ちょっとシチュエーションは異なるが、同じく実話ベースの「君を想い、バスに乗る」を思い出した。高齢者の映画は自分も歳をとったせいかとにかく心に沁みる。
御年91歳のマイケル・ケイン、彼の芝居の端々からその生きてきた人生の重みが感じられるとても魅力的は俳優さんだ。これが引退作とは実に惜しい。そしてチャーミングな彼の妻を演じたジャクソンも介護士の女の子に母親のように温かく接する姿が印象的だったし、夫婦役の二人は本当に長い年月をともに連れ添ったかのように見えて見ていてとても心を癒された。
ノルマンディー上陸作戦の厳しい思い出
バーニーは元イギリス海軍の兵士で、妻のレネと老人ホームで暮らしていた。89歳の爺さんが、フランスで行われるノルマンディー上陸作戦の70年記念式典に参加しようとしたら、いっぱいだった。その事をレネに話したら、行ってもいいよって言われた。翌朝、レネが目覚めたらバーニーがいなくなっていた。黙って1人で旅立っちゃったのよ。これ、レネの認知症なのかと思ったら、そんな症状は一切無かったね。事実が分からないレネや看護師、そりゃ行方不明って事にしちゃうよな。あら、バーニーが船に。移動中もイベントって事なのかな?バーニーが出会う昔の同僚達。いろいろ思い出す戦時中の事。辛そうな事ばかり。やっぱり戦争はやっちゃダメだよね。バーニーが居なくなって昔の2人の事を思い出すレネ。ずっと仲良しなんだね。ただ、ちょっとモヤッとしたのが、2人の家族の話が無かった事。親のエピソードとか子供ができなかった(いたかもしれないけど)とかね。ストーリーとしては、それほど動かなかったけど、2人別々の思い出話しがとても良かった。2人ともコミケ能力が高くて素晴らしかった。そして、まさかのラストにウルッ。とても楽しかったです。
全99件中、41~60件目を表示