「日本だけではないんだ。」2度目のはなればなれ penさんの映画レビュー(感想・評価)
日本だけではないんだ。
日本では、本当は幸運なことなのに、自分だけ生き残った元特攻隊員が、こころの深いところで、自責の念にとらわれているという設定の映画が確か、過去何本かあった記憶がありますが、日本の特攻という特殊な環境によるものかと思っていました。
でも本作を観て、それが誤りであることに気づきました。
その「自責」は、国に対するものではさらさらなくて、まだあどけない顔のまま、自分の一番大切な人のことを思いながら、犠牲になった多くの者たちに対するものだということです。国に対するものなら戦勝国ではそうした感情はおこらないでしょう。でも違うのです。そのことが、ある秀逸なエピソードで明らかにされていきます。
日本だけではないんだ。そう思いました。
フラッシュバックのように70年前の二人と、今の二人の姿が交互に現れます。
踊り明かしたはち切れんばかりの若さと、いろいろなことがままならなくなった今の老いの対照の妙。大きく変わった二人ですが、確実に変わらないものがあったこともまた映し出されてゆきます。
なかなか生涯を添い遂げるのさえ当たり前ではない時代にそのこと自体に希少価値があるように思い、涙腺が緩んで仕方ありませんでした。
マイケル・ケインは、以前より、英国紳士風の温かな感じがよいなと感じていて、好きな俳優でしたがもう齢91歳なんですね。草笛光子といい勝負ですが、本作が引退作だそうです。相手役のグレンダ・ジャクソンはマイケル・ケイン同様、二度のオスカーを受賞している演技派の名優ですが、昨年6月、この作品の撮影後に87歳で亡くなられたそうです。色々ままならなくなった姿の演技は半分は本物だったのでしょう。昨年1月に亡くなった母の姿に重なり、胸が熱くなりました。
ご冥福をお祈りします。