「第二次世界大戦から70年後のイギリスで、Dデイ記念式典に参加するため一人で旅立った男と彼に70年連れ添った妻を通し、人生のことを考えたくなる作品です。秀作。」2度目のはなればなれ もりのいぶきさんの映画レビュー(感想・評価)
第二次世界大戦から70年後のイギリスで、Dデイ記念式典に参加するため一人で旅立った男と彼に70年連れ添った妻を通し、人生のことを考えたくなる作品です。秀作。
鑑賞予定をしていない作品だったのですが
空いた時間に鑑賞できそうな作品を探していて
この作品を発見。作品紹介も気になりました。
そんな訳で鑑賞です。・_・
思いがけず、人生の深みを感じる良い作品でした。
老人ホームで暮らす、老夫婦が主役です。
夫婦で一つの部屋に入っています。
介護の必要が出てきたのは老婦人のほう。
一人で入居するつもりが、離れたくないとご主人。
自分も一緒に入居したのだそうです。仲良しさん。
「2度目の-」とタイトルにもあるように、過去に1回目の
はなればなれがあった二人。第一次世界大戦に出征する夫を
見送ったのが最初だったようです。
2回目めとなる今回。Dデーの70周年記念式典(?)にどう
しても参加したかったご主人=バーニー。
正式な申込みには間に合わず(抽選に漏れた?)単独でフランス
に渡ろうとしていました。
自分の年齢・体力・体調から考えて今年が恐らく最後の機会。
妻=レネに相談すれば、多分止められる。
どうしても-と主張すれば、その理由も話さなければならなく
なる…。70年前に何があったのか、についても。
一人で老人ホームを抜け出してフランス行きの船に乗るバーニー。
うーん。90オーバー老人の失踪事件発生。@_@
#「ハロルドフライの-」が頭に浮かびました。年寄りの一人旅。
# いや、船の中で私立大学の理事長だという老人に声をかけられ、
# 同行することになるので二人旅ともいえるかもですが…。
どちらの作品の主人公も、人生の残り時間の少なさをきっかけに
心に刺さったトゲの後始末に行くかのような行動に見えました。・_・
失踪を知った老人ホームでは、スタッフが警察に捜索願。あらら
…いや、そうしない訳がないのけれど ・-・;
やがてフランス行きの船に乗ったことが分かり、それを知って
バーニーがDデー記念式典に言った事を察するレネ。
一方、レネの側にも、現在進行形で夫に内緒の秘密がありました。
次第に悪化している心臓の病気。狭心症。
医者から「厚い本を読み始めるのはやめた方が良い」と冗談混じりに
言われてしまう程度に進行している様子。
読み終える前に命が…ということなのでしょう。…なんか笑えない
介護担当の若い女性が、バーニーに伝えないのか?と聞いてきますが
レネにはこの事をバーニーに伝える気が無いのです。
” 伝えたところで、バーニーを悲しませるだけよ ”
貴女もバーニーに話したらダメと念を押し、夫の帰りを待つレネ。
◇
と、この夫婦の70年前と今日との姿を描いた作品です。
バーニーもレネも、それぞれ相手を想って生きてきたことが分かります。
人生の重みを感じる晩年です。
ただ、バーニーには生きている内に精算したい過去があったのです。
最初の戦争で同じ戦場で戦った戦友が命を落としてしまうという過去。
自分が「上陸しろ」と言ったためだと、ずーっと心に想い陰となって
いました。そのことを誰にも(レネにも)告げられずに、70年の年月が
過ぎていたのです。
” レネにその話をすれば、黙って聞いてくれるだろう ”
” ただ、レネに余分な悲しみを共有させてしまう… ”
この機会が最後だろう と、一人で老人ホームを抜け出すバーニー。
うーん。深いストーリーです。
余韻も素晴らしい。秀作です。
観て良かった。
◇あれこれ
■戦後
バーニーにとって戦争は終わっていなかったのですよね。
70年前に戦場だったフランスへ渡り、彼の墓標を見つけて
そこでようやく彼の戦いも終息したのでしょう。
自己満足といわれたとしても、区切りは必要と思います。
戦争で「人に言えない秘密」を抱えて島た人の数、決して
少なくないものと推察します。・_・;
■当時の敵、今は?
イギリスもアメリカも。前線で戦ったドイツ人も。
70年という時間は、当時の敵を「生き残った同士」にする と
そういうものなのでしょうか。はて。
あのドイツ人が何を思って記念式典の会場にいたのか
その理由を考えることを、忘れてはいけない。
そんな気がします。
■墓場まで持っていくもの
相手のためを思えばこそ、相手に話さないこと。
バーニーは戦場での自分の判断を悔やみ続け
レネは自分の病気を隠して普通に振る舞い続ける。
夫婦なのに隠し事なんてしませんよ。 という夫婦もあれば。
夫婦だからこそ話さないことがある。 との夫婦もきっといる。
どっちが正しいか などという話では無いと思うのですが
共に前者を選んで、やり遂げたバーニー夫婦に敬意を表します。
◆あれはどうなったのでしょう?
後で思い出して気になったのが2点。
・預かった「手紙と写真入りケース」をどうしたのか?
・爆弾投下した街にいたかもしれないという弟の安否?
見落としたのかもしれませんが、この話がその後どうなったのか
分からなくて気になってます。?-?
※パンフレットに載っていないかと、購入しようと思ったのです
が「販売無し」でした。なんてこったい。。
◇最後に
” ミッションコンプリート ”
そう言いながらレネの元に還ってきたバーニー。
フランスに行った目的を尋ねることもなく、ただ労うレネ。
” けれど、次に遠くにいく時は一緒にいくわ ”
そして半年後、バーニーはこの世を去り
レネもその1週間後に亡くなったとのこと。
病気のこと、最後までバーニーには隠し通せたのでしょうか。
バーニーも、気付いても知らないふりをしていたのかも …とか
さりげなく最後まで一緒だった夫婦の素敵な物語でした。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。