「2人の偉大な俳優の最後の輝きが感慨深い」2度目のはなればなれ tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
2人の偉大な俳優の最後の輝きが感慨深い
物語を引っ張るのは、90歳の主人公が、病気の妻を一人残し、老人ホームを「脱走」してまで、ノルマンディー上陸作戦70周年記念式典に参加しようとする「理由」である。
度々、挿入される上陸作戦時の回想シーンから、それが、ある戦車兵の死に起因していることが明らかになっていくのだが、その一方で、主人公と戦死者が特に親しい間柄だった訳ではなく、主人公のせいで戦車兵が死んだ訳でもない(と思える)ことには、やや釈然としないものを感じてしまった。
「自分が彼を死に追いやった」と思い込んでいる主人公が、「サバイバーズ・ギルト」と呼ばれる罪悪感に苛まれ、苦しんで来たことは理解できるし、実話をベースにした物語なので、過度な脚色も避けるべきなのだろうが、それでも、「史上最大の作戦」を舞台にしたエピソードにしては、ドラマチックさに欠けているように思えてならない。
そのせいか、敵地にいた兄を、自らの爆撃で殺してしまったのではないかと苦悩する元空軍兵と、主人公が、英軍兵士が眠る墓地を参拝するというクライマックスよりも、彼らが、カフェで、ドイツの退役軍人達と、相互に敬礼するシーンの方が、「かつて殺し合いをした者同士の70年ぶりの和解」が心に響いて、感動的に思えてしまった。
いずれにしても、映画を観て、最も心に残るのは、やはり、マイケル・ケインとグレンダ・ジャクソンの、人生の重みが感じられる存在感と、人間としての深みだろう。
特に、ジャクソンは、夫の悩みを察知して、彼を記念式典へと送り出し、夫が抱える戦争のトラウマを聞いて、「あなたのせいじゃない」と慰め、夫が生還したお陰で自分達が幸せな結婚生活を送れたことを彼に理解させ、さらに、「今度いなくなる時は、私も連れてって」と「とどめ」を刺すなど、まさに完璧な妻を完璧に演じていて、強い印象を残す。
ジャクソンは、この映画が遺作になったということだし、ケインも、これで俳優を引退するらしいのだが、2人の偉大な俳優の最後の輝きを見届けることができて、観ているこちらも幸せな気分になることができた。