ポライト・ソサエティのレビュー・感想・評価
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ムスリムの女性を主人公にしたアクション映画と、どのようにでも深掘りできる要素満載にもかかわらず、あえての安直(そう)なアクションに全振りした潔さを称えたい一作
『絶叫パンクス! レディパーツ』を手がけたニダ・マンスール監督だから、低予算アクション映画の体を装って、いろいろ仕掛けてくるんだろうなー、と思ったら、その点については予想通り。
しかし「これはB級作品ですから!」と観客に印象付けようとする仕掛けや演出を随所にちりばめていて、やっぱりそのミスリードを誘いたいというあからさまな思惑と、といってやっぱりアクションへの憧れを表現したい!という熱意があふれていて、やはり称賛せずにはいられなくなるのでした。
主人公リア(プリア・カンサラ)の空回り気味の奮闘で笑わせておいて、徐々に明らかになってくるある陰惨な企みに突き進んでいく流れも、まぁ強引そのものではあるんだけど、単なる悪事ではなくて、きっちりムスリム社会におけるジェンダー問題の視点を取り入れているところはさすが。「あの映画のあの設定とそっくりじゃん!」と思わなくもないけど。
『絶叫パンクス!』がレーティング付き(16+)である一方、本作はG指定なので、両作を比較すると過激度という意味で本作の描写は(これでも)ちょっと控えめかも。その分祝宴の美しい衣装、踊りをスクリーンで鑑賞する醍醐味は比類がないので、可能な限り劇場での鑑賞をお勧めしたい作品です!
「私は怒りの権化!」&空中回転
アクション、ダンス、血流して壁もドアもバリバリ壊す姉妹喧嘩、女友達とのクールで熱い友情、二人の娘を大事にしているママとパパ。そして学校を出たらすぐに見合い結婚させられて自分のやりたいこともできず夢さえ持てなかった世代の女性たち。共感できて気分もすっきり笑えました。結婚式の時の姉妹のドレスとヘアメイクは本当に美しく音楽と選曲(浅川マキの歌!)も面白くてよかった。章立て構成がタランティーノやファティ・アキンの映画のよう、テンポがよく楽しめた。至高の姉妹愛。
浅川マキの歌の改変
↓
ちっちゃな時から 近くにいつもいて 動画とってくれてミット打ちもやってくれた ありがとう かっこいいスタントウーマンになるから お姉ちゃんはアーティストになるんだよ お姉ちゃんの絵大好き
IDENTITY
インド映画だと思ってたら、舞台はイギリス、主人公はカンフーを使うムスリム女子、マーベルって単語も出てくるけど少し『ミズ・マーベル』っぽい。
ただのコメディなのかと思ってたら、最後の方はシリアスになっていきます。
音楽が良くて、60sガールズポップスのシュレルズが流れたり、ビックリしたけど日本語の曲も流れます。
調べたら日本語の曲は、浅川マキ「ちっちゃな時から」で、この浅川さんは海外でも評価が高く、イギリスのレーベルからもリリースされてるそうです。
映画中1番ブッ飛んだのは、女性ボーカルのパンクバンド、エックス・レイ・スペックス「IDENTITY」が流れた事で、まさか映画館で聴けるとは(笑)
ア~イデンティティ~♪ ア~イデンティティ~♪
最高です!!
どこで使われてるかは秘密(笑)
監督は主人公と同じ女性のパキスタン系イギリス人、音楽やパンクが好きで詳しいみたいです。
評価は厳しめ、70~75点ぐらい。
何も調べないで観た方が、どうなんだ?どっちなんだ?とハラハラできるので、あらすじ読まずに観るのをオススメします。
要素多い
お酒を飲んでもムスリムってか?
Alba: Well, live by the sword, die by the sword.
Clara: Ria, are you hearing this? Ria?
Alba: Ria, it's gonna be at least 30 minutes.
Clara: Repeat, 30 minutes.
Ria: He's heading back to the changing room.
Alba: We need to abort mission.
Clara: No, no, no.
Alba: Abort. Abort! Abort!
Ria: No. Keep going.
前半の部分で本作の脚本を執筆した脚本家であり監督のニダ・マンズールによる言葉の巧みさは尻尾のないエイプからすれば、「ナンノコッチャ!?」ってなるかもし知れないけど、このセリフ... 臨場感ある場面で割とお堅い福音書の言葉をかませながらスリリング的ぃ~なファクターを加えて、いい塩梅なショットとなっている。
パキスタンの映画なんて思っているとイギリス発ってか!? 考えてみれば分かることで、何故かって、映画の尺が短すぎる。それとイスラム教徒の話なので、ヒンドゥー教徒とは違い「3人の娘がいれば身上つぶす。」なんて諺のような多額の結納金がいらないので新婦を殺す必要もないと思っていると...(※南の島に住んでいた時、同じフラットメイトのパキスタン女性が言っていたので... 付け加えるとインドやパキスタンでは母屋と台所が別になっていていることが多く、夜中に新郎がガス栓を少しだけひねっておく... すると次の朝、新婦が朝食の準備をしようと... 次の瞬間、ドッカ~ン💥 もっと酷いのは乙4種の引火性液体を直接かけたりもしちゃいます。でもってまた新しい新婦を迎えるってか!?)イタイ話はこれぐらいで...
Ria: Well, your dad doesn't love you.
Kovacs: Yeah, he does!
Clara: Ooh, daddy issues.
Kovacs: He just bought me a car!
Ria: But you could ask yourself, did he remember
your birthday?
フィルスコアからも80年代を蘇らせるようなスパイものサウンドをあしらいながら、どことなく『ゲット・アウト』的ぃ~なテイストにコメディの王道のようなのは、脇を固めるクララとアルバのデコボコぶりが嫌みを感じさせずに最初から最後まで楽天的キャラクターで完結される。それはこんな姉のレーナの吐き捨てるようにサリムに対して...
You drugged me!
You did tests on me!
And you tried to shove your mum in me!
And also, I may have a magnificent womb,
but your dick is
"distinctly average." なんてね⁉
監督のバイオから、彼女自身、パキスタン系イスラム教徒の世界で育っているからもっと内面的と言うか内に向かうエネルギーを感じさせる映画と思いきや弾けて、尖っていて、友情や姉妹愛をテンポの利いた回し蹴りにのせて、外向きに強烈なパンチを放つ... そんな映画に仕上げている。でもあれほどテンポの良かった作品が、ラストの間延びをしたような『卒業』のようで... 自分たちの "Identity" を感じさせない亜流のようなところが、あたしはあまり好きになれない映画になっている。
映画の内容と言うよりも個性的なフィルム・スコアにある意味、映画の存在があるのかもしれない。そんなことを監督は "Filmmaker " という季刊誌のインタビューにこう答えている。
She’s so cool in it, and I always thought, “This is punk in a
way.” And music has been an important part of the film.
Not only South Asian Bollywood music, but also Riot Grrrl
and British punk. You know, Poly Styrene of X–Ray Spex—
the last song in the film is a big X-Ray Spex song—was one
of the only Black women punks in the ‘70s when it appeared
that just white women were doing cool things. I looked at
Virginie Despentes, a French feminist philosopher who has
the King Kong Theory: “Women are more like King Kong
than Kate Moss.”
エンディング曲は、夭折した Poly Styrene による ♪Identity
※ちなみに... 姉のリーナとリアがラストに乗るスカイブルーのコンバーチブル・サンダーバードは実在するオークショナー "H&H Classics" で売りに出されていました。余計なお世話様なので失礼します。
怒れる南アジア系俳優
怪しき陰謀に巻き込まれた姉を救おうとする、スタントウーマン志望の妹リアを描く、イギリス製青春バトルアクション。“スクールカースト”の最下層に扱われるクラスメートと力を合わせて、付け焼き刃なアクションで立ち向かうという負け犬達の逆襲というコンセプトと共に、悪役や脇役のポジションに収まりがちな南アジア系キャラの自己主張でもある。
奇しくも日本では、同じく南アジア系俳優のデヴ・バテル主演の『モンキーマン』が本作と同日公開。『モンキーマン』がブルース・リーや『ザ・レイド』、『ジョン・ウィック』テイストなのに対し、本作はジャッキー・チェンや『マトリックス』の影響を感じるのが面白い。バイオレンス度MAXな『モンキーマン』と比べるとアクションそのものはベタだし、劇伴選曲のチョイスなど全体的にタランティーノ風ではあるが(浅川マキの曲を使っているあたりはシブさを感じたが)、自身もパキスタン系イギリス人である女性監督の意地と情熱を買いたい。南アジア系俳優を覆う『ポライト・ソサエティ=凝り固まった社会』を、南アジア系女子高生がアクションでぶっ壊すのだ。
全くもって両極端な2作『ポライト・ソサエティ』と『モンキーマン』だが、共通している点も無きにしも非ずなので、見比べてみるのも一興かも。
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