「ドラマより映画は面白くなかった。」グランメゾン・パリ bbbさんの映画レビュー(感想・評価)
ドラマより映画は面白くなかった。
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ドラマと違い、現地フランスに移したことによる映画ならではのスケール感はあったように思う。しかし、主人公・尾花のポリシーであるフランス料理を「極める」という点では、とても残念なぐらい妥協した描かれ方しかなされていなかった。日本の料理界では通用するものの、本場フランスで果たしてミッシュラン3つ星という称号に相応しいぐらいにフランス料理の本質や料理人としてのアイデンティティまでも兼ね備えた「尾花」の料理や人物像を本映画で描き切ったといえるのだろうか。
答えは否である。結局は、本場フランス料理人にはなり切れず、アジア料理人によるアジアン・ティストという亜流で妥協した「尾花」の料理人像が浮かび上がってしまっている。最後のミッシェラン3つ星の授賞式は映画の結末を無理やり取って付けたかのような違和感を拭うことができなかった。ドラマに魅せられた一視聴者としてはとても残念な映画である。
何が原因なのか。それは、シナリオを含めた映画のコンセプトにやはり本場フランス料理の本質や現地の料理文化の考証があまりにも不足しているところにあるのではないだろうか。映画のなかで現地フランスの舞台やフランス人は登場するものの、フランス料理の味わいや哲学などのフランスらしさが一切、伝わってこなかった。フランスの登場人物が放った「フランス料理をなめんなよ」のセリフが改めて想起される。
サクセス・ストーリーではなく、尾花がフランス料理を「極める」ために、フランス料理やフランス文化といった本場料理の限界に直面し、料理人としてさらに葛藤するヒューマンドラマに視点を当てた「尾花夏樹」を見てみたかった。
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