「日本人は外国人の寿司職人に高級マグロは売らないらしい」グランメゾン・パリ おきらくさんの映画レビュー(感想・評価)
日本人は外国人の寿司職人に高級マグロは売らないらしい
テレビドラマは未見。
予告編は映画館で20回は観てると思う。
結論を言えば、中盤までは酷いと思ったが、終盤はまあまあ良かったので、総合的な評価は三つ星ということで。
予告編を観ている時からずーーーっと思っていたことだが、この映画は「二つ星」を舐めすぎでは?
二つ星でも十分凄いと思うのだが、この映画を観てると「二つ星」=「しょぼい」みたいな扱いで、モヤモヤする。
二つ星でもしっかりリスペクトされていて、その上でさらに三つ星を目指す、みたいな話だったら良かったと思うが、本作は二つ星であることが残念で何の価値もないみたいな描き方になっていて、実際の二つ星や一つ星のレストランに失礼すぎる気が…
キムタク演じる尾花が三つ星を獲得できない理由の一つが「現地で高級食材を売ってもらえないから」というものだったが、本当にそんなことってあるのだろうか?
一応、尾花は二つ星のシェフで、社会的地位の高い人間が集まるガラディナーで料理を任せてもらえるぐらいの人物なのだが。
「外国人は日本人には差別的な対応をする」という考えからそういう話にしているのだとしたら、それこそ外国人への偏見だと思う。
フランス人が高級食材を売らない理由として「外国人が日本で寿司職人をしても、高級マグロは売らないだろ」みたいなことを言っていたが、そうなの?
マグロってセリで一番高い値段を示せば売ってもらえるイメージなので、国籍関係無いと思うのだが…
もしフランス人の言っていることが正しいなら、日本人がシンプルに最低。
あと、この問題の解決法はちょっと強引に感じた。
尾花がドラマ版を観ていない人間からすると、登場した時からパワハラ・モラハラ全開のクズ野郎で、「こんなやつ、どんだけ才能があったとしても成功して欲しくねえ」と思ってしまった。
後半に尾花が鈴木京香演じる倫子や韓国人シェフのユアンを説得する場面も、演出は感動的ではあるが、尾花のそれまでの横柄な態度は別に変わっていないのに、説得する時だけ感動的なことを言って倫子やユアンの心が動かされていくのを観て、微妙な気分になった。
人って大事なのは言葉では無く行動だと個人的には思っているので、まず尾花の行動に変化があってから、その後に倫子やユアンを説得する場面があるべきでは?と思った。
例えるなら、しょっちゅう浮気してる男が、口だけは上手くて、彼女から別れ話を切り出された瞬間だけ全力で謝って許してもらう感じ(上手く伝わっている気がしない…)。
まあその後、尾花は人格が入れ替わったのかと思うぐらい思いやりたっぷりの良い人になっていたのでいいのかもしれないが、脚本としては上手くないなと思った。
鈴木京香がホール担当になる場面は、『王様のレストラン』のことが頭をよぎった。
ユアンがデザートの研究のために借金して、そのせいで借金の取立てに来たマフィアがレストランで大暴れって流石に話に無理ありすぎな気が…
しかも、その後火事を起こすのが本気で意味不明だった。
三つ星を取るって超大変だと思うのだが、そのために尾花たちがやることの次元が低いように感じた。
他の店なら普通に出来ていることだと思うのだが…
こんな状態で二つ星は取れていることが逆に凄い。
そんなわけで中盤まではイマイチに感じたが、終盤のフルコースを振る舞う場面は、一流レストランの料理を紹介する番組を観ているような感じで、見応えがあった。
ただ、結論が決まりきった方向に向かうだけの場面なので、想像を上回るような感動はなかった。