「シェフの本懐とは何か」グランメゾン・パリ Immanuelさんの映画レビュー(感想・評価)
シェフの本懐とは何か
映画は沢山の人が一所懸命に作っています。だからあまり悪口は言いたくないし、自分の好みに合っていないということだけで悪口を書くのはあまりやりたくないです。大体「じゃあお前がもっと良いものができるのか?」と言われれば、いち鑑賞者にすぎない何の取り柄もない一般人の僕が偉そうに語るのも恥ずかしいわけです。なので、あくまで僕の好みではという話を書きます。
申し訳ないけど、本作は僕にはどうにも好きになれないもので、僕自身の少ない鑑賞経験からしてもワースト1・2ではないかと思いました。
最初から1時間半くらいまで延々と、主人公が自己中で傲慢に振る舞い、うまくいかないことにイライラし仲間にもモラルなく当たり散らす様子が延々と続きます。それを見続けるのが非常に僕には苦痛でした。そして肝心の仕事の内容の方も、仕入れがうまくいかない理由も全くその通り(「銀座にフランス人が店を出したとして、最高のマグロを手に入れられると思うか」という卸業者の言葉が、大変説得力がある)。
主人公の師匠?のフランス人の「諦めることも大事」と鈴木京香さん演じるシェフに諭すその言葉も、非常に重みがあって全くその通りと頷くしかない。「諦めないで続けること」も大事ですが、誰もが勝者になれるわけでは無いので、天井を突破できないことが十分にわかったら、方向転換すること・初心に戻ること、つまり「執着を手放すこと」も大事なのです。
そもそも主人公がなぜそこまで三つ星にこだわるのかがよくわかりませんでした。主人公の意地なのかなんなのかわかりませんが、もしもお客さんが喜ぶことが第一であるなら三つ星というレッテルにこだわらず、目の前のお客さんに全集中すればいいだけであって、例え三つ星が取れなくてパリの一等地でできなくとしても、フランスの田舎で地道に、大金持ちの富裕層相手でなくても、リーズナブルに沢山の人を喜ばせることができるのではないかと思ってしまうのです。
超高級食材や珍味、異常に手間をかけ秒単位で計算して出される料理を、小難しい顔でポエムのような感想を語る富裕層の賞賛よりも、庶民にリーズナブルな食材でリーズナブルに美味しい食事を提供して、お客さんに笑顔になってもらう方が良いのではないでしょうか。「自分の役割はそうではない」ということなのでしょうか。
「シェフの本懐」とはなんでしょうか。それは自己満足のために名誉を得ることではなく、あくまでお客さまの満足のために料理を作ることだと思う。本作の中でもそうだと言っていますが、主人公がそう思っているとはあまり思えませんでした。じゃあ、なんでそんなに三つ星にこだわるんだと思うのです。
僕はよくわかりませんが、そもそもミシュランの三つ星とは「お店の歴史と背景」とかも多分に重要であると思うのです。それが老舗の信頼と実績ということだと思います。何十年もレベルの高い食事を出し続ける歴史ある三つ星のお店に、いかにレベルの高い食事を提供するとしても新しい店を同列に比べることはできないと思うのです。二つ星をとっている時点でもうすでに破格に評価してくれていると思います。まずはそこからじっくりと信頼と実績を安定して築いていったずっと先に、三つ星があるのではないかと想像するのですが、いかがでしょうか。
話を映画に戻すと、1時間半の拷問ののち後半30分くらいの所で、突然意味もなく全て好転します。主人公はあれほど自己中で傲慢だったのに、ころっと全く正反対にチームワークを重視しだします。そしてあれほど仕入れに苦労したのに、事件を機に手のひらを返したように仕入れ先がころっと正反対に協力的になります。鈴木京香演じるシェフの味覚異常も直ります。三つ星の発表まで僅かの時しか無かったはずなのに、その短期間で三つ星が取れます。いかに料理の質が良くなったとしても、そんな短期間でミシュランの評価が覆るのでしょうか。・・・ちょっと理解に苦しみます。
話の筋が一貫していないと思えること、本作の大部分を占める前半の拷問、そして申し訳ないけどキムタクさんの一本調子の演技・・・。キムタクさんとテレビシリーズのファンには良いのでしょうけど、そうでなければちょっと厳しいと思うのは私だけでしょうか。
いいなと思った点を探すと、鈴木京香さんの演技が良かったです。役どころの複雑な心境がよく伝わってきました。
Thank's, all Cast and Staff ! :‑D
三つ星へのこだわりは、グランメゾン東京までは良かったと思います。ただ、それを経ての尾花夏樹の成長があって、日本の師匠のように地元の馴染み客に愛される店をフランスの地方都市で作ってほしかったです。地元の人々との交流や地元の食材の発掘。その土地の歴史や風土を生かした料理を作る。そんなキムタクが見たかったのです。それで星が一つでも貰える店ができたら、最高にカッコいいと思います。
時かけファンさん、コメントありがとうございました😊
キムタクさんのファンの方からお叱りをいただくのではないかと恐れていましたが、共感いただけてありがたいです。
初めてコメントいただきましたので、とても嬉しかったです。:-D
大変共感しました。あの、ポエムのような料理評、ホントに酷かったですね。暴力や放火なんて、こういう料理映画で描くべきではありません。お金と時間をやたらかけて作られたフランス料理より、近所の定食屋さんで食べるご飯とお味噌汁の方が、私にはいいです。こんなダメな脚本を演じなければならなかった役者の皆さんに同情します。