マハーラージのレビュー・感想・評価
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欲と恐れが支配を支える
何気なく配信で見たこの映画はかなり重いものだった。
人間社会において支配はどこにでも存在するけれど、ドームのように余す所なく全体を覆われた支配には突破口などなかなか無い。
司祭様が言っていた「内側からは無理だが外側からなら何か出来る」支配に呑み込まれた者が事を動かす難しさを表している。
このJJという宗教指導者は男という生き物の欲深さをよくわかっていて、自分自身もそうであり、性的奉仕の様子を金を取ってまで取り巻きの下僕に覗かせる、それを必要とし群がる下僕らに支えられ、それをやる事でさらに自身の権力を誇示し格差を強固なものにしている。
JJ役の俳優にインパクトがあり、それに付き従うカワスが道化のような狡賢さを醸し出していた。
アーミル・カーン氏の息子は熱演だけれど、もっと眼力が備わっていたら尚良しだったかな、と思う。
ところどころ、ん?と思う箇所もあったが、支配と強欲と不正、狂信と隷属と悪しき慣習、改革と孤独、この世の色んな要素が含まれていて見応えがある作品だった。
理解を深める余地
【インド映画ならではの規格外な世界観を今回も堪能できる作品】
壮大なスケールと緻密な描写は、見る者を圧倒する。
実話ベースの物語であることは理解できるものの、
物語の中核を担うハヴェリの存在や影響力、
いくつかの点が明確化されれば、
より深い理解と共感を得られたと感じた。
【圧倒的なスケールと緻密な描写】
冒頭から飛び込んでくるのは、
まさに規格外なインド映画の世界だ。
派手なダンスシーン、
色彩豊かな映像は、
見る者を飽きさせない。
特に、ハヴェリの壮麗な宮殿や、
大勢の信者たちが集う宗教儀式は、
圧倒的なスケール感で描かれており、
インド映画ならではのダイナミックさを存分に味わうことができる。
【理解を深める余地】
物語の核心を担うJJの存在や影響力について、
もう少し掘り下げた描写があれば、
より深い理解に繋がったと感じた。
JJは一体どのような人物なのか、
なぜ人々をそこまで惹きつけるのか、
そのカリスマ性や思想の根源について、
もう少し詳細に描かれていれば、
観客はより深く共感することができたのではないだろうか。
また、JJの起こした事件と、
世界各地で過去に起きた類似事件との比較についても、
もう少し明確にしてほしかった。
この事件が、普遍的な問題なのか、
それともインド特有の宗教観や文化に基づく特異な事件なのか、
または、
この事件特有の何か、があるのか。
ラストの裁判所シーンでその違いがなんとなく示唆されるものの、
観客がより深く考えることができるような描写があれば、
より一層の深みのある作品になったと感じた。
司法制度…
結果としてイギリスの統治下ということはあるのだろうが、この時代のインドにおいて、きちんと確立されていたことに驚く。聖職者が立場を利用し、性加害を行うという事例は古今東西あり、今回の場合、本人も家族も受け入れていた、むしろ喜ばしいと受け取る家族もいたくらい、宗教というより、洗脳の恐ろしさを感じる。それに立ち向かったカルサンの勇気、彼を支えた仲間たちがその後のインドにおける、宗教指導者も司法で裁かれること、女性の地位向上に影響を与えたのだと思う。直接的な歌詞とダンスシーンがあるのがインド映画らしい。JJ役が印象的だった。
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