「バートン監督の古くも新しい世界へ」ビートルジュース ビートルジュース 澄千代さんの映画レビュー(感想・評価)
バートン監督の古くも新しい世界へ
久々のティム・バートン監督作品が気になったので鑑賞しました。
物語は前作『ビートルジュース(1988)』から35年後、大人になったリディアは亡き夫との間に生まれた娘アストリッドを育てながら霊媒師として活躍していた。だが、アストリッドと折りが合わず、そんな時に街の幽霊がアストリッドを死後の世界へ連れ去ってしまう。アストリッドを連れ戻すべく、リディアは「ビートルジュース」と3回唱える。ビートルジュースに助けを求めるが、ジュースも復活した元妻ドロレスにテンヤワンヤ。その解決策?もあってか、ジュースは念願の婚姻契約を条件にリディアの求めに応じるが…。
後日、前作も鑑賞、本作が少し古めかしく感じた理由が理解できました。
本作のジュースや死者たちは特殊メイクだし、俳優陣も屋敷やセットの会話シーンが多く、最新の映像技術は感じられなかった。まるでテーマパークを巡っているような。バートン監督はあえて一昔前の前作の映像や作風を意識したんだと思います。他、ワイヤー吊り上げやボブのオモチャっぽさ、砂ヘビのコマ送り、愉快な死後の世界など、前作そのまま。古典的だけど、これらが後々のバートン監督の世界観の根底にある気がします。
バートン監督は本作で原点回帰を願っていたかも。
過去のバートン監督作品は『バットマン(1989)』のジャック・ニコルソン、『シザーハンズ(1990)』のジョニー・デップ、『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち(2016)』のエヴァ・グリーンと、怪演俳優が付き物。特に、ジョニー・デップは出演作品が多く、バートン監督に多大なインスピレーションを与えた俳優だと思います。確かに、あのナルシシズムのミステリアスな演技は惹きつけられるけど、それもスキャンダルで大きくイメージタウン。事実、その頃からバートン監督の新作がほぼ無く、アイデアを失ったように思えます。そんな久々の本作は原点回帰も含め、再出発の意味合いもあるのかもしれませんね。
ビートルジュース役マイケル・キートンは一周回って怪人になりましたね。キートンはある時はバットマンでヒーローになり、ある時は『ファウンダー(2016)』など会社重役を演じ、ある時は『スパイダーマン ホームカミング(2017)』など悪役に徹する。どの役も不思議とハマっている。そんな役を経て、前作のチンピラ感のある新進気鋭の人間怖がらせ屋から、創業600年の悪役の品格を得た人間怖がらせ屋が演じられるようになっていました。
他、リディア役ウェノナ・ライダーは今でもゴシックが似合う。ホラーほど暗くも無く、コメディほど明るく無い、バートン監督作品に欠かせない女優です。モニカ・ベルッチは相変わらずお美しい。バートン監督のアニメ作品が実写化したようなドロレスになれる女優はなかなかいないと思います。デリア役キャサリン・オハラも相変わらずパワフルでした。
本作は改めてバートン監督の世界観を知れた作品になりました。平凡な日常にポツンと現れる怪人、バートン監督はそんな童話のような世界観を組み立てられる監督だと思います。本作を機に、再びバートン監督の不可解な世界が覗ける事を願っています。