「貧困ビジネスには手を出すな!」悪い夏 kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
貧困ビジネスには手を出すな!
田舎にいるほど生活保護受給のハードルは低い。近所の目があるから困窮していても生活保護申請をしない人が多いせいだろうか。ホームレスだって少ないし、近くの民生委員も黙っちゃいない。むしろ生活保護を勧めてくるくらいだ。それでも、都会での不正受給が多いとかビックリするニュースが流れてくる。実際は1%前後だけどね・・・これをSNSなどで生活保護を批判する。ますます申請しづらくなる・・・捕捉率下がる。
この作品では不正受給や受給させてそれを吸い取る悪徳業者、そして罠にハマったケースワーカーなどが絡んで社会の闇を描き出している。特に闇オチしたケースワーカーの佐々木(北村匠海)の描写がエグい。金本(窪田正孝)、山田(竹原ピストル)、莉華(箭内夢菜)、さらに林野愛美(河合優実)などクズで悪い奴ばかり。愛美の一人娘・美空が純粋なだけに際立ってくる。そして万引きをしたため仕事を失った佳澄(木南晴夏)が対照的だけれども一般的に居そうな困窮者。こういうパターンが現実なんですね。
現在の異常な物価高騰からますます増えるだろう生活困窮者。その多くは申請の際に闇オチした佐々木のようなタイプのケースワーカーによって断られるのだろう。一方で壁に貼られたポスターには「生活保護は国民の権利」などと謳われている。暑さのせいでこうなった?みんな汗をかいている。
ラストシークエンスは見事。面白い。特にポリスコスプレの高野(毎熊哲也)。大雨の中での大乱闘。誰が誰を刺したか殴ったのかというのはすぐに忘れそう。そしてそれぞれの小さな幸せを感じるエピローグ。清掃員をする佐々木なんて自分が言った仕事をする責任を全うしていて交換が持てるし、アパートの部屋にかけられた子供用の傘がとてもいい。まさか河合優実がそこに住んでないことはないよね?