「原作者の力量が垣間見える」あたしの! Scottさんの映画レビュー(感想・評価)
原作者の力量が垣間見える
オープニングが絶望的に下手なんだよね。
この作品を観続けるのは辛いなという気分にさせるの。
ラーメン食べるカットに切り替わって話が始まるんだけど、描かれる女子高生像が芝居がかりすぎてて違和感があるの。
学校一の王子様・直己先輩が留年で同じクラスになって、そこから始まるあれやこれや。
これ話が振られた時点で「色々あるけど最後は友情も大事だってなるんだよな」って結末まで見える話なんだよね。それでも観ていられるかどうか。
当たり前だけど主人公のあこ子は直己くんと両想いになって付き合います。
ここで台詞が気になったんだけどバスの中で主人公の親友・充希が「直己くんの彼女になれたんだから」って言うんだよね。「直己くんを彼氏にしたんだから」じゃないのね。直己くんが上位すぎる。
そして予定調和のように恋愛の前に友情にヒビが入り、しかし修復されます。
この辺でね、ありきたりな話ではあるんだけど、原作者は力量あるなと思うの。
充希がめちゃくちゃするんだけど「でも、しょうがないよね」ってギリギリ思える線の描き方がされてるの。本当は直己が好きなのに、主人公との友情をとって気持ちを押さえてきて、でもやっぱり押さえきれないっていう。キャラ設定がすごい。
あこ子もね「ここステレオタイプ展開なら逃げ出すね」ってところで逃げずに向かってく。「あこ子ならそうだよね」っていう納得感があってキャラ造形がすごい。
対する男性キャラは造形は浅いのね。
同年代からみた一つ上の男子の「なんでも知ってる万能感」がそのままキャラ化されたような。とくに成田くんはそうだね。
この話、客観的にみてると成田くんが一番もてそうで、あこ子も充希も気楽に成田くんと話してるけど、そこで反感買うだろ実際なら。
それで関係修復するときにあこ子と充希の想いが描かれるんだけど、単なる仲良しではないんだよね。少し嫉妬というか妬みというかちょっとした悪感情が二人の間にあるの。この「どんなに仲良くしても、相手に対する悪感情は消しきれない」っていう描き方が原作者いいなと思うの。
成田くん役の山中柔太朗が良かったな。かなりいい。
充希役の齊藤なぎさはもう鉄壁だね。《交換ウソ日記》《恋を知らない僕たちは》と観てきたけどハズさない。《推しの子》も今から楽しみ。
映像がかなり遊んでる感じがあって、面白いんだけど、ストーリーに合ってないからスベってるのね。どんな監督なのかなと思ったら横堀光範監督は映像作家なんだね。映像が面白いのもオープニングが絶望的につまらないのも、なんか納得。
話の大半は「なんだかなあ」というところもあったけど、深い人物描写を見ることもできて良かったよ。