「支離滅裂の馬鹿馬鹿しさ、トム・ハーディが勿体ない」ヴェノム ザ・ラストダンス クニオさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0支離滅裂の馬鹿馬鹿しさ、トム・ハーディが勿体ない

2024年11月4日
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鑑賞方法:映画館

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 確かに一作目はルーベン・フレッシャー監督で、名女優ミッシェル・ウィリアムズとの恋模様もあり、まだまともであった。続く二作目は監督を「ロード・オブ・ザ・リング」のアンディー・サーキスとなり、仔細はすっとびウッディ・ハレルソン扮するヒールとの対決中心となった。そして本作はまさにトム・ハーディの一枚看板で、訳分からないエイリアンどもが襲い掛かり・・でも本当にそれだけの安っぽさ。監督はこれまでの脚本に携わった女性監督だそうで、到底監督の技量はほとんどゼロとしか言いようがない。こんなレベルをスタジオが制作最中にも放置する方がオカシイですよ。

 もとより二重人格と言うべき、宿主エディ(トム・ハーディ)と寄生したヴェノムとの掛け合いに一定の定義もいい加減で、変幻自在と言えば言葉が高級すぎますが、出鱈目の無茶苦茶の出現率。その喋りも第三者に聞こえているのかいないのか定かじゃない。この一人二役の凸凹コンビの面白さを追求すればいいものを、やってることは真逆の観客を苛つかせることばかり。演技派キウェテル・イジョフォーが脇で出ているものの殆ど無意味。

 マーベルが財政危機の昔、スパイダーマンの映画化権をソニー(コロンビア)が買い取った経緯から、ディズニー傘下となったマーベルのキャラでありながらソニーから映画化されるのは、そのため。そのスパイダ―マンの中にも当然に諸々の敵役がいるわけで、ヒール達を独り立ちさせ映画を作ってしまえって訳で誕生したのが「ヴェノム」。しかしソニーの指導・審査が甘いのか、マーベルサイドもサポートしているはずなのに「モービウス」「マダムウッブ」も作品的にダメダメで、当然に評価も興行もダメダメ。かろうじて1作目の「ヴェノム」はヒットしたものの、3作目にして失敗を繰り返す始末。

 前作のメキシコの酒場のテレビでスパイダーマンのニュースを見て、俄然闘志を燃やすヴェノムが本作のスタートなのに、以降スパイダーマンの欠片もない。メキシコから今時ヒッピー一家の親切に甘んじラスベガスへ。今話題のスフィア(超巨大球状シアター)の外観がしっかり画面に入り、最新作をアピール。しかしアジア系おばちゃんとのダンスにタキシードでキメたはいいけれど、早々に郊外の軍事施設での戦闘となる。黒いスライム状が瞬時に姿を変え、心底訳がわからない。ビデオゲームの今時のスピードもこんなでしょうけれど、私には到底ついていけない速さ。ここで宿主との別れとなり、念願のニューヨークでバディの存在の大きさを思い知るセンチメンタルで締めくくる。

 トム・ハーディは製作にも加わり、本作ではストーリーにも加担している。もとより若い頃はイケメン役者の範疇でしたが、好んでワイルドな役に挑戦。本来もイングランド出身の悪ガキの雰囲気を持っており、その独特の唇からセクシー男優の称号とても与えられていた。けれど本作でのエディは徹底して汚らしく、故意に猫背で押し通し、酒太りのような醜態を晒す。まるでイケメン演技派の面影を全く味わえない。「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」2013年の繊細な演技も、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」2015年の激烈な熱量もここにはない。ひたすら二日酔いを連発するのみ。

 例によってスーパーヒーロー映画はエンドタイトルが長い。それだけVFX等に力点をおくものだからスタッフが多数必要。それにしてもざっとタイトルの人数数えてもスタッフだけで軽く1,000人は超えて2,000人とは行かないでしょうが、それだけ金がかかっているわけで。飛行機につかまって「俺はトム・クルーズじぁねぇ」と言うが、所詮VFXなのは当然でトム・クルーズの本人によるスタントの凄さとはまるで次元が異なり、全然怖くもスリルも伝わらない。本人が演じていると思わせ、実はVFXをフル活用ってのが正しい使い方なのであって、マーベルの荒唐無稽も本当に飽き飽きです。

クニオ