「ブラピ&クルーニーファンは必見、イケオジツンデレバディの始まりの話」ウルフズ ニコさんの映画レビュー(感想・評価)
ブラピ&クルーニーファンは必見、イケオジツンデレバディの始まりの話
女性検事長がチェックインしたホテルの一室に倒れた若い男性に、既に脈はない。検事長は慌てて、信頼できるツテから聞いていた「片付け屋」を呼ぶ。颯爽と現れたベテランフィクサー。ところがそこにもう1人、同じ「仕事」をしにきた男が現れて……
ブラピとクルーニーが一匹狼的片付け屋を演じるというだけで、ビジュアルつよつよなのはもう折り紙付き。闇稼業らしく黒ずくめのファッションに身を包んだ2人が並ぶだけで、もう映画だ。一方物語の展開はハードボイルド系ではなく、小洒落たコメディと言った方が近いかもしれない。
のっけから死体になったかと思われたオースティン・エイブラムスが息を吹き返し、想像以上に走ってしゃべる。彼の逃走シーンと、片付け屋コンビに捕まったあとの要領を得ないしゃべりが長いのはブラピたち同様こちらまで辟易したが、そんな彼が友人から頼まれた荷物(おクスリ)の受け渡しを完遂させようと、2人は反発し合いながらも行動を共にすることになる。
互いの名前も知らない2人だが、会話はよくハモるし、危機的シチュエーションでの状況確認はツーカー。長年組んだバディのようなコンビネーションだ。
色々と設定のユルさを感じる部分もあるし、敵役も正直インパクトは薄いが、本作は言ってしまえば、2人のイケオジの微笑ましいマウントの取り合いや、相手に反感を持つのに気が合っちゃうツンデレ的尊さを愛でる映画。
2人がパーティー会場でとっさに銃を向け合うシーンなんか、あの絵面を見せるための脚本だろう。でもいいんです、カッコいいから。
しかしまあブラピとクルーニー、60歳と63歳とはとても思えない。若く見えると言うより年齢不詳。加齢による寂しい衰えではなく、長期熟成のウイスキーのような深みのあるいい男っぷりだけが増していて、またこの2人の個性の組み合わせの妙というものもあり、大変眼福でございます。老眼鏡をかける姿まで様になる。
ストーリーは軽めで、続編が決まっているということを念頭に観ていると何だかシリーズの導入部というか、前日譚のようでもある。それでも、ブラピとクルーニーに好感を持っていれば十分に楽しめる娯楽作。
それにしても返す返す、劇場公開が中止になったのは残念だ。
その理由について公式からの説明はないが、ネットニュースなどではApple Original Filmsの直近の作品の興行収入が国内外で振るわなかったからだとか、Apple TV +の加入者数が伸び悩んでいるので(1ヶ月の視聴者数がNetflixの1日分にさえ及んでいないというデータもあるそうだ)、投資効率の悪い(Apple的には)映画館での上映よりApple TV +に観客を直接誘導する方がコスパがいいという経営判断があったからとか言われている。
それでも、一度は劇場公開を予告し、前売券を売って劇場でも予告をがんがん流しておいてからの方針変更は正直、映画ファンにとっての印象は最悪。この流れで加入者を大幅に増やせるかというと、ちょっと疑問だ。
業界の覇者Netflixはオリジナル作品をぽつぽつ劇場公開して、映画館好きにも目配せをしているのだし、Apple Original Filmsも劇場公開を諦めないでほしい。ブラピとクルーニーがわちゃわちゃする話はいくらあっても困らないので、続編に期待している。