劇場公開日 2024年8月9日

ボレロ 永遠の旋律のレビュー・感想・評価

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3.5【”近代への賛歌”今作は、クラシックの名曲ボレロが誕生した経緯を、作曲家モーリス・ラベルが経験した社会の変化、影響された女性達との関係性を軸に描き出した知的好奇心をくすぐられる作品である。】

2024年8月10日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

知的

幸せ

ー クラシックの名曲「ボレロ」を聞いた事がない人はいないだろう。曲名は知らなくても、同じリズムが繰り返される中、2種類の旋律が相乗して乗って来るという一度聞いたら忘れられない斬新なメロディであるからである。
  冒頭に、様々なジャンルで「ボレロ」が演奏されるシーンが映し出されるが、クラシックと言うジャンルの垣根を飛び越えうる曲という事だと思う。
  私は、作曲家モーリス・ラベルがこの曲を生み出した過程に興味があり、劇場に足を運んだのである。ー

◆感想

・ラヴェル(ラファエル・ペルソナ)が、著名なダンサーであるイダ(ジャンヌ・バリバール)の依頼で、新たなバレエ音楽作曲を依頼されるも、曲が書けずに悩む姿。”どんなに優秀な作曲家でもスランプがあるんだな。”と思うが、彼が生涯想いを持っていたミリア(ドリア・ティリエ)や、彼を精神的に支えるマルグリッド(エマニュエル・ドゥヴォス)達からの影響で、意欲を何とかキープする姿。

■ラヴェルが、近代化が進む工場の機械の反復音を聞くシーンは特に印象的である。「ボレロ」の同じリズムが反復する着想を、ここから得た彼は、”近代への賛歌”として、当時としては実験的な曲作りにのめり込んで行くのである。
 そして、彼は更に米国旅行で聴いたジャズなども参考に、曲を作り上げていく過程は面白い。

・だが、完成した「ボレロ」を、イダが自分のバレエの舞台でエロティックな衣装で使用する光景を見てラヴェルが、嫌悪感を露わにするシーン。
 彼の中の理想のクラシックとは、実験的で独創的なバレエに使われるものではないという彼の思いが伝わるシーンである。

・そして、ラヴェルはミリアとの交友は続けながら、生涯独身を貫き、最後は難病に侵されて行く様は、悲哀を感じるが、彼がアセクシャルだったかのように描いたアンヌ・フォンテーヌ監督の解釈も面白い。

<今作は、クラシックの名曲ボレロが誕生した経緯を、作曲家モーリス・ラベルが経験した社会の変化、影響された女性達との関係性を軸に描き出した知的好奇心をくすぐられる作品なのである。>

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NOBU

3.0自分には高尚すぎました…

2024年8月10日
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知的

難しい

寝られる

名曲「ボレロ」は知っていても、作曲家ラヴェルについては何も知らず、勉強のつもりで公開初日に鑑賞してきました。

ストーリーは、ピアニストとしては評価されなかったが、作曲家としては名を馳せていたラヴェルが、ダンサーのイダから頼まれたバレエ用の新曲がなかなか書けずに苦しみ、リズムの繰り返しにヒントを見出し、試行錯誤の末に「ボレロ」を完成するまでの姿を通して、彼の人柄や性癖、その後の姿を描くというもの。

音楽は圧巻です。正直言って演奏の良し悪しを聴き分けられるような耳はないですが、それでも劇場で流れる「ボレロ」に心地よく浸れます。そんな名曲「ボレロ」を生み出すまでのラヴェルの苦悩、作曲後の環境の変化がよく描かれ、とても勉強になります。有名な作曲家でも、簡単にひらめいてさらさらと作曲できるわけではなく、日常のさまざまなものに注意を払い、時には挫折を経験しながら、産みの苦しみを味わっているのだと共感できます。

その一方で、リズムへの強いこだわりや曲の解釈をめぐる苛立ちなど、音楽家としての矜持を感じさせるものがあります。また、ミシアへの思いや他の女性への接し方には、フェティシズムのような性癖が感じられるのも興味深いです。単なる「ボレロ」誕生秘話としてではなく、本作を通して、偉大な作曲家として、一人の男としてラヴェルの実像を浮き彫りにしようとしているように感じます。

とはいえ、全体的に淡々と描かれ、大きな起伏がないため、やや退屈に映るのは否めません。登場人物についての説明が少なく相関を捉えにくいことや、時系列をいじっていることも、没入感を妨げているように感じます。あと、これは自分が悪いのですが、“今日は芸術鑑賞デーだ”とばかりに「ブルーピリオド」に続けてハシゴ鑑賞したため、集中力が落ちており、なかなか作品世界に浸れませんでした。というわけで、期待していたほどおもしろくなく、ちょっと残念な作品という印象になってしまいました。配信が始まったら、しっかり覚醒している時に改めて観てみようと思います。

主演はラファエル・ペルソナで、神経質そうなラヴェルを好演しています。脇を固めるのは、ドリア・ティリエ、ジャンヌ・バリバール、エマニュエル・ドゥボス、バンサン・ペレーズら。

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おじゃる

4.5官能的な曲だったとは知らなかった

2024年8月10日
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『ボレロ』は知っているけれど、同じメロディを17回繰り返すというのは予告編で知った。
タンタタタタンから徐々に肉付けされてあの曲になっていくのは観ていて胸熱な展開。
それに振り付けされたダンスを初見後のいざこざは分からんでもない。正直なところ自分もあのダンスはちょっと嫌い。
まあオープニングの世界のボレロシリーズの中にもコレジャナイ感なのが混ざってたけど。

めまぐるしくピントが変わったり、アップを多用したり、見せ方がとても好み。
直接的な描写はないけれど、そこはかとなく漂う官能的な雰囲気はカメラワークによるものが大きいかな。
ラヴェルも何をするわけでもないのに色っぽい。常に女性に囲まれているのも頷ける。
オーケストラ演奏とダイナミックなダンスのシーンは非常に贅沢な時間の使い方で良い。
また音楽の映画なだけにひとつひとつの音が印象的。
ラヴェルのその後は、今でいう燃え尽き症候群的なものだろうか?

マルグリット役の女優さん絶対知ってると思っていたら『パリの調香師』の人だったか。
それよりなによりヴァンサン・ペレーズになにがあった?

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コビトカバ

4.0奥底に燃えるバスクの熱情

2024年8月9日
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知的

 人口に膾炙した現代のボレロの快調な出だしを経て、産みの苦しさというかこの稀代の名作がどういう経緯で生まれたか、それによりラヴェルの人生がどうなったかが描かれています。春祭と違って初演から大成功だったのは、ラヴェルが既に名声を確立しており、繰り返しという革新以外は不協和音等も使用せずメロディーがわかりやすいことも効いていたのだと思います。晩年は、メンタル、フィジカル共にかなり病んでいて、自作すら認知できなくなっていたことは知りませんでした。

 スイスの時計職人と称される緻密な書法で珠玉の作品群を残していますが、その奥底にはバスクの燃えるような熱情を秘めていて、後期の苦しみの中からボレロや2つのピアノ協奏曲となって噴出します。映画では、行き来する時制が事情通以外の人にはかなり難解かもしれません。彼の謎めいたセクシュアリティ(アセックスというのか?)が、パリの娼館で示唆され、彼を取り巻くマダム達の優雅な色香が典雅な時代の息吹きを伝えていました。また、ローマ賞落選からの自殺未遂も初見で、必要悪の評論家との応酬など、芸術家と社会の一筋縄でいかない関係性もきちんと描かれていました。
 ラストが、群舞でなくパリオペラ座エトワールによるソロだったのが、後半のもやもやとした鬱屈した空気を一転させて、カタルシスを得ることが出来ました。

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marcomK

3.5クレッシェンド

2024年8月9日
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ゆう

4.5ボレロの初演

2024年8月9日
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知的

幸せ

ラヴェルの人となりや生涯について、予習してから見たほうがわかりやすかったかもしれません。
女性達とのプラトニックかつ親密な関係が「ボレロ」の誕生に深く関わっていたのは興味深かったです。
(てっきりラヴェルはゲイなのかと思いましたが、後で調べたらそうではなかったようで)
パーティのBGM、生活音、機械音がわざと大きく聞こえる演出、作曲家ラヴェルの耳を疑似体験できました。
ラファエル・ペルソナは黙ってタバコを吸ってるだけで絵になりすぎてしまう美男子ですが、ラヴェル役になりきるために減量したそうで、神経質そうな雰囲気がぴったり。
ピアノ演奏シーン、指揮もご本人がやってましたね。芸達者。
「ボレロ」ってモーリス・ベジャールの前衛バレエのイメージがあまりにも強すぎますが、初演はこんなにシンプルというか、普通?だったんですね。
1928年の狂乱のパリにおいては少々地味だったかもしれないと思うくらい…
舞台シーンや演奏シーンはもれなく良かったです。
劇場の大スピーカーで鳴り響く音楽で、カタルシスが味わえました。

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すーちゃん

5.0文句なし!これぞ伝記映画の最高峰!

2024年8月9日
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興奮

幸せ

寝られる

素晴らしかった。文句なし!
伝記映画だが、ラヴェルの音楽家人生、名曲ボレロの制作秘話を
この映画で知ることができ音楽映画を堪能できた。
ラヴェル役のラファエル・ペルソナの演技も素晴らしかったし、
ラヴェルとその周りを支えた人物との関係性も分かりやすかった。
音楽家は名曲が誕生しても満足することがない。この作品で改めて
痛感した。
オープニングの各国のボレロの映像も良かったし、ラストのボレロの
フルバージョンも素晴らしかった。クラシックの素晴らしさも体感できた。クラシックファン、フランス映画ファンはおすすめします。

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ナベウーロンティー

5.0混沌と崩壊のカタルシス

2024年8月2日
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すぐれた芸術作品は、作家のものである以上に観客のものなのだと感じました。
よく創作の過程を“産みの苦しみ”なんて言いますが、産んだ後も含めて本当にピッタリの表現だと思います。
産みの苦しみを経てこの世に生を受けた作品は、作家の手を離れ観客のもとで成長していく。
まるで子育てと一緒。
自分が生み出したものではあるけれど、自分のものではない。
先天的に生まれ持った個性や素質があり、後天的に環境や出会いによって形成されていく。
自分の意図しなかったものへ成長して
観客のものになっていく。

それでいて、全く作家と別物かと言うとそうでもなく…
生みの親が無自覚に内包していたエロティシズムまで観客によって暴かれ、作家は丸裸にされてしまう。

そう考えると作家って踏んだり蹴ったりだなぁ。
でも…それでも生み出さずにはいられない。

序盤で、実際に聴こえている音楽なのかBGMなのかわからないシーンがあるのですが、これこそ彼の感覚だったのだと思います。
作曲家の頭の中には、次にスコアに書き写すべき音楽が奏でられている。
映画『アマデウス』では、一番の理解者であるサリエリによって書き留められましたが、ラヴェルの場合は…

素晴らしい芸術には人生の全ての要素が含まれている。
クライマックスの、混沌から崩壊へのカタルシス!
『ボレロ』はラヴェルの過去であり、未来だったのだ。
決して曲に引きずられたのではなく、誰もが迎える未来が含まれているから、こんなにも惹きつけられるのか。
崩壊の後には再生が待っていると信じられる画面作りが素晴らしい。

柔らかい光を帯びたドアップの美しさ!
背中に回した指先。首すじ。手袋。
プラトニックだから余計に官能的。
どうやら私は、監督アンヌ・フォンテーヌ×撮影クリストフ・ボーカルヌの映画が好きみたいです。
しかし、それにしてもラヴェルの頑ななことよ。ものすごい自制心。
むしろそうなる事を恐れていた気配すら感じます。
ともかく、その思いの全てが創作へ注がれたお陰で、名曲の数々が生まれたのだと思える説得力がありました。

環境音として随所に入れられた小鳥の囀りも印象的。

時代が前後するので、ザックリとしたラベルの生涯を知っていた方が良いかも?

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shiron

4.0素晴らしい音楽

2024年7月31日
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作曲のインスピレーションが降りてくる表現が神秘的で良かったです。そして、当然、音楽が素晴らしい!冒頭のジャスやロック調、古典バレエや、フィナーレの圧巻コンテンポラリーダンスなど色々なバージョンのボレロにどっぷり浸かれます。ボレロ好きの人は必見!アメリカツアーでの「亡き王女のためのパヴァーヌ」のピアノ演奏シーンも素敵でした。

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tomoboop

3.5工場の機械音から生まれたとは!

2024年7月29日
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鑑賞方法:試写会、映画館

目も耳も美しくて釘付けの2時間だったよ。
あらゆる音が音楽に聞こえている、ラヴェルの耳で今この世界を聞いてみたらどんな音がするんだろう。聞いてみたい!
過敏で神経質そうだけど、誠実な人柄なので、周りに女子を侍らせててもなんかクソ真面目で不安感がない。そのくせ仕事で作った『ボレロ』は史上最もエロティック?
何それすごい矛盾!!
美しきミューズとの友情から恋心の狭間みたいな関係もとても良かった。

ボレロが工場の機械音に影響を受けて作られた曲だと知らなかったので、とても意外だったのだけど。
色んな曲で繰り返し繰り返しする人だなと思ってたけど、家族にエンジニアがいて機械音に馴染みがあったのも影響があったらしい。
確かに機械の音って止めるまで規則的にずっと続くものね。

ボレロその後に影響を与えたのは音楽だけでなく、その同じ旋律を違う楽器を使って音色を変えていくという構造は、違うジャンルの創作にも影響を与えているそう。
例えば『羅生門』は一つの事件を色んな視点で出てくるという風に、ボレロにインスパイアをされて作られた映画だそう。
面白いなぁと思った。

音楽の作品は劇場で聞いた方が絶対音が良くていいと思うけど、今回はなんか拍手がやたら耳にも胸にも響いた。
いい音してたのでぜひともご体験ください。

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icco