「自分には高尚すぎました…」ボレロ 永遠の旋律 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
自分には高尚すぎました…
名曲「ボレロ」は知っていても、作曲家ラヴェルについては何も知らず、勉強のつもりで公開初日に鑑賞してきました。
ストーリーは、ピアニストとしては評価されなかったが、作曲家としては名を馳せていたラヴェルが、ダンサーのイダから頼まれたバレエ用の新曲がなかなか書けずに苦しみ、リズムの繰り返しにヒントを見出し、試行錯誤の末に「ボレロ」を完成するまでの姿を通して、彼の人柄や性癖、その後の姿を描くというもの。
音楽は圧巻です。正直言って演奏の良し悪しを聴き分けられるような耳はないですが、それでも劇場で流れる「ボレロ」に心地よく浸れます。そんな名曲「ボレロ」を生み出すまでのラヴェルの苦悩、作曲後の環境の変化がよく描かれ、とても勉強になります。有名な作曲家でも、簡単にひらめいてさらさらと作曲できるわけではなく、日常のさまざまなものに注意を払い、時には挫折を経験しながら、産みの苦しみを味わっているのだと共感できます。
その一方で、リズムへの強いこだわりや曲の解釈をめぐる苛立ちなど、音楽家としての矜持を感じさせるものがあります。また、ミシアへの思いや他の女性への接し方には、フェティシズムのような性癖が感じられるのも興味深いです。単なる「ボレロ」誕生秘話としてではなく、本作を通して、偉大な作曲家として、一人の男としてラヴェルの実像を浮き彫りにしようとしているように感じます。
とはいえ、全体的に淡々と描かれ、大きな起伏がないため、やや退屈に映るのは否めません。登場人物についての説明が少なく相関を捉えにくいことや、時系列をいじっていることも、没入感を妨げているように感じます。あと、これは自分が悪いのですが、“今日は芸術鑑賞デーだ”とばかりに「ブルーピリオド」に続けてハシゴ鑑賞したため、集中力が落ちており、なかなか作品世界に浸れませんでした。というわけで、期待していたほどおもしろくなく、ちょっと残念な作品という印象になってしまいました。配信が始まったら、しっかり覚醒している時に改めて観てみようと思います。
主演はラファエル・ペルソナで、神経質そうなラヴェルを好演しています。脇を固めるのは、ドリア・ティリエ、ジャンヌ・バリバール、エマニュエル・ドゥボス、バンサン・ペレーズら。