十一人の賊軍のレビュー・感想・評価
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仲野大賀のポテンシャルに★5!!あと鞘師♪♪
仲野大賀君、これが初時代劇・初殺陣てマジか
朴訥で泥臭く、骨太で真っ直ぐな新発田藩士
主演の看板を背負い、それにふさわしい演技・後半殺陣の立ち回り
素晴らしい役者
幕末戊辰戦争の混乱や凄まじさ・凄惨さをこれでもかと見せつけられた
今年は『将軍』しかり、『侍タイムトリッパー』に『八犬伝』(未鑑賞)、そしてこの『十一人の賊軍』
日本の時代劇、なんだかいまむっちゃ熱くない??
バチクソ面白かったけど、自分の観た回は全然人が入ってなかった。何で??(苦笑)
群像時代劇、鉄板だけど、やはり嵌ると傑作が産まれるな
でも観終わった後に爽快感は無いなww(これが初期に映画化されなかった理由)
でももう2~3回は観たい。映画館で!
あと初めて知った鞘師。こちらも元AKBの子と知って驚き。すっごい新人女優さんが出て来たなと思ってました
両者とも、今後に要注目!!!
感情が入ってしまう
幕末の戊辰戦争。新発田藩が官軍と旧幕府軍に揺れる姿と犠牲になる人々を描く。幼い領主に振り回され、嘘で塗り固めて藩を護るが戦う人々の梯子外しが往々にして起き、感情が入り込み胸を締め付けられる。
撮影が実に素晴らしかった!
時代劇なので、とうぜん観ました。
劇場で何度か予告編を観る中で、大きな期待と"爆発効果"をお約束の如く、入れてくる東映時代劇の薄弱さに、「将軍家光の乱心 激突(1989年)」のイメージが重なり、ハードルを少し低めに構えていた事もあるが
第1シーンから、この映画の素晴らしい展開と考証力に、圧倒され、映画に飲み込まれていきました。
特に撮影の素晴らしさは圧巻で
池田直矢 撮影監督、そして照明を担当した 舘野秀樹さんは、無名なようで、なかなか調べても略歴が出てこないが、今後が大いに期待できる両氏でした。<撮影賞><照明賞>
出演者も全員のキャラクターが立ち、山田孝之さん、仲野太賀さん、佐久本宝さん、本山力さん、そして 阿部サダヲさん
名前を全員書ききれなかったが、どの方も素晴らしい存在感を示し、これだけの人数のキャラクターをみごとに成立させた
池上純哉さんの脚本力と演出をされた 白石和彌監督のレベルは相当高い。<脚本賞><監督賞><助演賞>
戊辰戦争で、官軍が使ったのは、かの有名な"アームストロング砲"で、
劇中にでてくる大砲は、いかにも"チープなハリボテ"なのが残念だったが、
アームストロング砲は、鋳造砲ではなく錬鉄製の 後装式ライフル砲 で、
尚かつ 球弾ではなく、現代にも通じる榴弾であった。
映画的には、砲撃シーンがとても迫力があったので、良かったが、その辺の細かい事を言うのは、つまらぬこと
逆に、足軽が使う長銃が、旧式火縄銃と最新式の前装式エンフィールド ライフル銃等で、外見は少しアレだが、混在して使われている考証点は素晴らしかった。
阿部さんが 演じた‘’家老‘’だけれど、
家老の重席は、失態の責任は他に振れるレベルなら、無理矢理にでも なすりつけ 自分は、踏み止まり、悪に徹しきれなければならないと、日頃から、考えています。
家老が、命を差し出すのは、主君の命の身代
に成れる場合だけに限ります。
この場合、代わるのは、命であって、名誉や責任等ではありません。その時は、主君の名誉を回復させる1点に全力を尽くす役目が存在するからです。
家老とは、そう言う 悪な役職です。
同じく 東映から2025年に公開される「室町無頼」は大いに期待しようと思う。
捨て駒
百五十年前の戊辰戦争を死刑囚・軍団の活躍をスペクタルに描く
大傑作時代劇。
白石和彌の時代劇の圧倒的なリアルと壮絶・面白さ‼
新発田藩の生き残りを賭けた家老・溝口(阿部サダヲ)の非情な演技。
いつものユーモラスな阿部サダヲと正反対の狡猾で情け容赦ない
裏の実質•藩主。
戊辰戦争で新潟の新発田藩が、家老のずる賢さと冷徹な目で
城と民を守りきった逸話を題材にした。
嫌々ながら恩赦を餌に戦うことになった罪人十人(賊軍)の、
目の覚めるような戦いぶりを、
血みどろ泥まみれ大爆発・爆音スペクタルで魅せる
池上純哉の脚本の力強さ、
脚本を絵にするリアルに輪をかけた剛腕監督・白石和彌。
ゆりやん以外は全て細腕の名もなき女優たち。
十人の賊軍は種々様々な男たち。
いやぁ非常に面白かったです。
橋向こうに攻めてきた官軍(新政府軍)。
【砦の死守】
家老(阿部サダヲ)は官軍への寝返りを画策する。
【砦を死守】
秘策としての捨て駒に、死刑囚(の十人を)恩赦と引き換えに、
働かせる。
その決死隊のリーダーに選ばれたのが、道場主で剣の達人・仲野太賀。
賊軍の中心人物は逃げ腰の捻くれ者の元籠屋・山田孝之。
おロシア・岡山天音は、橋を落として官軍を阻止しろ派。
これも一理ある。
隠し玉はノロと呼ばれる頭のトロイ花火師。
ノロの作る花火の火力は凄い威力で、十人は吹っ飛びます。
嘘が真か?重油の流れ出る山があって、そこを掘ると原油が
噴き出して来る。
それも利用して大々爆破をするくだり。
血が沸き肉踊った。
ドルビーシネマでも轟音シアターでもなかったけれど、
爆破シーンは3D以上に派手なスペクタルで怒涛の爆上がり。
丁度、長い縄で編み込んだ吊り橋。
嵐で大揺れの吊り橋の落ちる物凄さ。
その手前で官軍は大砲や火縄銃をバンバン撃って来る。
武士の生き様は死に様。
鷲尾(仲野太賀)と家老・溝口の対時。
溝口は相変わらず汚い奥の手を使う。
怒りを二乗するのは憤り。
仲野太賀の剣は冴え渡った。
歴史には死屍累々・数多の捨て駒がいる。
そんな捨て駒が吠えて散った。
十一人目の賊軍は俺だ‼️
「碁盤斬り」で黒澤明と較べたら、失笑されたけれど、
もう誰も笑わないよね。
時代劇だということを忘れて、スクリーンにすぐ没入できます。
首をはねるなどの残忍なシーンはありますが、物語がとても良いテンポで進むのであっという間に見終わり、しばらく余韻に浸ることができます。
仲野太賀さんの鬼気迫る演技が特に印象に残りました。
命の尊さや大切さについて実感できる映画です。
初日に見ましたが、観客が少なくて残念。
たくさんの方に観てもらいたい映画です。
映画三本分・血と生首・山田孝之
人足姿の山田孝之が疾走するオープニング、つかみは完璧。しかし中身は、少なくとも映画三本分のストーリーと登場人物を、人斬りと爆弾と血と生首で混ぜ合わせた150分。長い。
山田ら10人の「罪人」が、無罪放免の約束と引き換えに決死の戦いに身を投じる話かと思いきや、途中から、彼らと行動を共にする侍(仲野太賀)を主人公とする正義のヒーロー譚のようになっていく。さらにこの戦いをつくった張本人-戊辰戦争で苦悩する弱小藩のマキャベリスト家老(阿部サダヲ)-の話もほぼ同程度の重みをもって描かれる。ぐちゃぐちゃドロドロ血みどろ。
しかし個々のストーリーや登場人物は十分に魅力的だ。罪人たちの傭兵軍団にしぼって一段掘り下げれば、もう一つの(闇の?)『七人の侍』ができそう。この軍団、山田の演じるタフな一匹狼を筆頭に、インテリ、二枚目、ムードメーカー、老人、「バカ」、女、と分かりやすくキャラ設定され、それぞれの役者がいい味を出していて(特に、インテリ役の岡山天音、ムードメーカー役の尾上右近)、観客をぐいぐい引き込む。そして何といっても山田孝之。実際はそんなことはないのに、ド迫力のクローズアップを見続けたような印象が残る。巨大スクリーンを一人で支配してしまう。千両役者と、それを撮りきったカメラに喝采。
映像は凄い
プロットからして予想はしていましたが、想像以上に「七人の侍」でした。それも薄味の…。
作戦が上手くいったら無罪放免をエサに集められた罪人たちと、彼らを率いる侍で決死隊を結成し、激闘を繰り広げる。最初は牽制し合っていたけれど、次第に絆がうまれ…的な、テッパンで男臭く熱いストーリーのはずなのですが、イマイチ燃えてこない。決死隊が闘う動機がイマイチ弱かったり、全体像(城代側のあれこれ)が若干複雑で状況把握がし難かったり、登場人物が多いことで一人一人の掘り下げが弱く感情移入や愛着が湧いてこないのでクライマックスの盛り上がりも微妙だったり…。(やたら強い爺ちゃんはカッコ良かった)
と、結構不満も多かったけれど、戦闘シーンは迫力がありビジュアル面では満足度は高かったので、映画館で観て良かったです。
主役は完全に仲野太賀さんだったな〜。
結構エグい
白石監督の作品らしい描写でした。
虎狼の血、仁義なき…観てまして、冒頭の入り方とか闘いの様子とか迫力とリアルさがあって怖かったです。
時々クスッとなるような事もあり、面白いんですが戊辰戦争をよく知らないので説明が簡素でストーリーがよく分からないとこもありました。
仲野太賀さん…この人すごいですね!ほんとにどんな役もこなしてですね(笑)
山田孝之さん、玉木宏さん…目力ありすぎて目だけで心情とか表現されてさすがです。
芸人さんも出演されててお笑いの時とは180度違う人に見えました。
千原せいじさんがお坊さん役だったのですがお経が「南無阿弥陀」しか言わないのがちょっと気になりました(笑)
身分や立場で優先する物が違う時代があったと分かる作品です。
士の砦
幕末モノとゆーことで、なかなかふだん観ないのですが、今もっとも勢いのある仲野太賀がW主演とのことで。
戊辰戦争で新政府軍と旧幕府軍の間で板挟み状態となった新発田藩はどちらに就くかで揺れていた。御家老の溝口は家臣の鷲尾にとある提案を持ちかける。
2時間半の中で起きる罪人たちによる決死隊の孤立無援の戦が泥臭さと人間の性を見事に描いている。家老溝口の言葉に望みを託し、官軍(新政府軍)と同盟軍(旧幕府軍)の睨み合いの渦中に起きる謀。
希望があれば藁にも縋る。縋った先に待っていたものは…少しテンポが悪く感じるけど、その分丁寧に状況の変化が描かれてるのも良い。
要所、要所での見どころ、クライマックスにかけて鷲尾と砦の罪人たち、それぞれの生きる理由を胸に立ち向かう様が!残酷さも厭わず、ただただ生への執念と誠の士の姿を見れた気がする。
阿部サダヲの異次元さに気づけるかどうか
阿部サダヲさん、死刑にいたる病などはあまり好きではなかったのですがここまで次元が違う役者さんだとは私の見る目がありませんでした。
あまり考えずに見れば家老の結末がバッドエンドと勘違いしてしまいそうになりますが、サダヲさんの声質、表情筋などが全て家老のシナリオ通りの一人勝ちエンドだと気づいてしまいます。2回見てはっきり分かりましたがこの演技プランが登場〜ラストまで一貫してるんですよ、凄すぎませんか?
恐らく監督や台本には忠実に演じられていると思うのですが、その上で遊んでいるような狂気まで感じました。
日本の宝です。もっともっと評価されねばなりません。
やっぱ太賀くんは上手いわ。
話は複雑なんだけど、整理されていたので分かりやすかったですね。
今回太賀くんと山田孝之くんのダブル主演みたいだけど、役柄のせいもあるんだろうけど、圧倒的に太賀くんの見せ場が多かったですね。
というか、太賀くん、やっぱ上手いわ。
今回吉本の芸人さんも主要メンバーでキャスティングされてましたが、特に違和感なかったし、良かったと思います。
血の海と爆発と大音響がお好きならどうぞ‼️❓
千原せいじとナダルが主要な役回りであることで、この映画の品質をご理解ください。
やたら長くて、意味のない首切りや、ドタバタの連続、燃える、体の破片が、やたら多い、それに難聴になりそうなほどの大音響。
対して、それらしく見えるのは仲野太賀くらい、あゝ、名演技だ。
二時間半、体の破片と血と炎と爆発と怒号を延々と見せられて、ストレスが大変。
たけし監督の首や、侍タイムスリッパーの爪の垢でも飲んで欲しいです、とほほ。
背景がウェブの無料壁紙みたいで興醒め、ロケ無しの撮影所撮りなんでしょうか。
なんか、仲野太賀意外、ヤクザ映画の人たちみたいでした。
○○人のホニャララ
東京国際映画祭が開かれているこの時期、私がよく利用する中央区の映画館はその劇場としても使われているため、スケジュールやシアターの割り当てがいつもに比べるとややタイト。今週、私が注目していた作品第一候補は残念ながら観やすい条件ではなかったため、第二候補のこちらをTOHOシネマズ日本橋で鑑賞です。ファーストデイでしたがあまり客入りは良くありません。
本作、原案は笠原和夫さんということもあって、白石和彌監督による『仁義なき戦い』オマージュが確かに感じられる作品となっております。とは言え、ルックはしっかり時代劇感があって前作『碁盤斬り』(同監督の初の時代劇作品)からのアップデートも感じます。また、脚本も池上純哉さんの堅実な仕事で、史実を基に無理を感じないオリジナルストーリーは観ていて違和感を感じさせません。正直、予告編からはもう少しスペクタクルでエンタメに振っているのかと思いきや、案外硬派に作られており見応えがありました。
そして「○○人のホニャララ」と作品名が付けば、当然その人数に該当する者たちのキャラクターはしっかり立てなければなりません。今作はそれが「死罪を目前に待つ罪人たち」で構成されており、もれなく個性豊かな人格と特技で雑なキャラがいないところも秀逸です。特に思い入れ強めに観ていた3名から、まずは尾上右近さん。序盤こそ「ちょっとやり過ぎかな」と思える演技も、演じている「赤丹」という人となりが解るにつれて、右近さんの演技プランや白石監督のキャラクター演出に納得がいきます。やはり歌舞伎役者ということもあり所作も完璧で素晴らしいです。次に「爺っつぁん」こと本山力さん。刀を構えただけでもう強い雰囲気バリバリでおっかない。中野太賀さん等皆さん、殺陣を相当に練習されたようですが、本山さん一人、ずば抜けて格の違いを感じます。観終わって調べればそれもそのはずで、この方「〝5万回斬られた男〟福本清三の後継者」と知り激しく納得です。そしてもう一人は「なつ」を演じた鞘師里保さん。私、この方もお姿を存じ上げなかったため調べて「ああぁ」と。以前、ラジオ番組で(確か)松岡茉優さんが「サヤシが、サヤシが」と興奮しながら連呼していて記憶にありましたが、この方でしたか。とても雰囲気を感じる演技は、決してまだ「巧い」というレベルではないかもしれませんが、とてもポテンシャルを感じますし、何なら思いのほか魅了されました。特に最後のシーンは涙腺を刺激されるほど。今後、更に良い「俳優」になっていきそうで今後に注目です。
と言うことで、充分に楽しめた本作。ケチを付けるわけではありませんが、最後にどうしても気になったこと二点。一つは「生首の重み」が感じられないシーンが幾つか。恐らくは見た目のリアルさだけでなく、重さも実物に寄せているのではないかと想像するのですが、その扱い方によっては軽く見えてしまうような気がして若干ノイズです。まぁ、この作品に限ったことではありませんが、時代劇にとっては重要アイテムの一つなのでどうしても。。もう一つ、「これフリかな?」と思ってしまったシーン(結果、そうではなかったのだけど)。必死で同盟軍の疑心を躱そうと苦心する溝口内匠(阿部サダヲ)。家老自ら白洲に出て行う「アレ」に付き物の「とある演出」を見て「健康被害はないの?」と心配(w)になりました。
圧巻の殺陣。それ以外は非凡な白石作品
とび散る血しぶき。もぎ飛ぶ指、腕、首…
この残虐さは白石作品の真骨頂。
ラス前の特攻殺陣からラストの殺陣。
さすがとしか例えようがありません。
死に物狂いで剣を振る。
一太刀では人はなかなか死なないのだと表現してくれるのがありがたい。
それ故にドラマパートの描き方にイマイチ感が…
裏切り者は消え去るのみ(笑)のハードボイルドを期待しちゃうんだけどな。
罰があれだけじゃ物足りなさが残ります。
時代劇感は前作の『碁盤切り』の方が好き。
今作は火薬使い過ぎ(笑)
痺れるほどに格好いい泥臭さ
原作は未読で鑑賞。
白石監督のお得意とするであろう
泥臭さ、残酷さ、そして男の格好良さが詰まっていて最高の時代劇でした。
ネタバレなので誰とはいいませんが
特にとある人物が二対一で戦う際は
あまりの格好よさに口角が上がりまくるくらい
その貫禄と鬼気迫る演技が素晴らしかったです。
時代劇でここまで口角が上がったのは初めてかもしれない、
というくらいには未知の体験でした。
犯罪者たちのバックボーンがなかったことが残念。
十人の犯罪者と一人の剣術家で砦で足止めするのだが、犯罪者らしい?粗野で無頼な振る舞いがなどがあまりなく、とても無法者集団に見えなかったため迫力が今一つ感じられなかった。
それぞれの罪状をよく見ると強盗殺人と辻斬り以外は密航、姦通、賭博、一家心中、脱獄幇助などとても極悪人とは言えない連中が大半の集まりだったので、それぞれの得意技(ノロの花火など)をもっと活かしながら立ち向かうというストーリーにすれば、より個々が掘り下げられ感情移入でき、尺も長く感じることもなかったのに・・・。
ノロ役の佐久本宝くんは難しい役を上手に演じ達者さを感じたが、白く綺麗な歯並びを見るたびに残念さの方が上回った。
阿部サダヲさんの内に秘めた狂気の表現が怖く、途中から目がイっちゃっておりなかなかの見応えだった。
グロく暴力的な描写が得意な白石監督だが、本作も腕が切り落とされたり肉片が飛び散ったりと、救いようのない物語を言いようのない無情さと残酷さでエンタメ感を後押しした面白い映画でした。
戦いと裏切り。
守りきったら無罪放免?どうせ騙されてんだよ。ほら案の定。10人しかいないぞ、11人目はなるほど彼か、納得。大スペクタクルでは無かったが合戦シーンは見ごたえあり。
一見ひ弱そうな花火師のノロがなかなかの活躍でした。
仲野太賀の目がヤバい!
前作「碁盤斬り」のレビューで「白石和彌史上最もマイルドな映画」と書いた。が、最新作でもある本作「十一人の賊軍」は白石作品のイメージ通りとでも言いますか、エグみとグロさ全開バイオレンスのアクション時代劇。苦手な人はとことん苦手だろう。振り幅がヤバい。
ただバイオレンスなだけではなく、立場や考え方を異にする者たちが「やむを得ず」共闘し、必死になってわずかな希望を求める物語でもある。
誰のどんな立場に思いを馳せるかで、見えてくるものが変わる。新発田藩の侍3人は、家老・溝口(阿部サダヲ)の考える足止め作戦を成功させたい。道場を構える鷲尾(仲野太賀)は旧幕府軍として官軍を迎え討つ任務を全うしたい。罪人たちは「勝てば無罪」の約束を信じ生き延びたい。新発田藩士に女房を襲われた駕籠屋の政(山田孝之)は死んでも作戦に協力したくない。
砦の攻防に参加する面々だけでも、大まかに分けてこれだけ差があるのだ。さらに外側では進撃してくる官軍、新発田藩に出陣を迫る旧幕府軍、まだ若年の藩主などの思惑も錯綜する。
それが映画の中であらわになっていき、それぞれの感情や考えが絡み合って物語を推し進めていく。
その視点の切り替えは登場人物の目線で捉えた映像によって、スムーズに行われているのだ。
例えば、火付けで捉えられた女のなつ(鞘師里保)が、脱走しようとして手枷を嵌められた政に握り飯を渡すシーン。なつが政を見下ろす目線で、歩くリズムにあわせてカメラも揺れる。我々の視点がなつの視点になり、その後のシーンは彼女の気持ちの方に引っ張られるのだ。
ただでさえ苦しい生活の上、亭主はお縄。女郎か乞食しか選択肢のない人生。復讐なんてしなくて良い、ただ二人で支え合って生きていけたなら…、そんな政の女房の気持ちを彼女が代弁する。
だから「残してきた女房を助けられるのはお前さんだけ」というセリフが、上っ面ではない説得力を生む。
興味深いと思ったのはノロ(佐久本宝)の存在である。
ノロは白痴でそれが故に巡り巡って賊軍の一人となるのだが、罪人の間でも、罪人を率いる侍の間でも、いわゆる「おまめ」のような扱いをされている。「ノロはノロだから仕方ない」というような。
かと言って、「足手まといだから早々に始末しよう」ともならず、ふらふらしていても必ず誰かが面倒をみてくれているのだ。
ラスト近くでは政に「オメェは呆けだから大丈夫だ、殺されたりなんかしねえ」とも言われている。
無害だから狙われない、と。
罪人だから使い捨てにしても構わんだろう、からスタートする物語の中で、ノロは見捨てられない。
対比のように、少数の「役立たず」を見捨てることで藩と領民を守ろうとした溝口は、最も守りたかったものを失うことになる。それはむしろ溝口自身が彼の大切なものから「見捨てられた」結果であるとも言えるだろう。
勝ち負けだけが「正義」を決める時代の中で、官軍も旧幕府軍も罪人も、全員が「勝利」という名の希望をもぎ取ろうとしていた。手段を選ばずに邁進するもの、勢いと人数に任せるもの、理想と忠義に身命を賭すもの、目先の条件に釣られるもの。
だが、最後の最後に、勝利することよりもっと大事なものが出来てしまったのが政と鷲尾だったのかもしれない。
二人が最後に選択した行動だけは勝利とは程遠く、勝てないのであればそれは「賊軍」と見做されるものだからだ。そして二人とも「それで構わない」という覚悟だった。
「孤狼の血」のレビューにも書いたが、相変わらずアップの迫力が凄い。ゴア表現やバイオレンスを特徴のように言われる白石作品だが、本当に特徴的なのは毛穴まで見えそうなアップの使い方だ。感情にフォーカスする時、そのキャラクターの息遣いや鼓動が聞こえそうな気さえしてくる。
今回は山田孝之と仲野太賀のW主演で、当然二人のアップはかなり多かったのだが、物語の中で最も翻弄された鷲尾を演じた仲野太賀の目や表情には、鬼気迫るものを感じた。
実直で、一本気な鷲尾のキャラクターを支えたのは間違いなく仲野太賀の演技力だろう。
バイオレンス表現が炸裂する今作だが、キャラクターの心情が入り乱れる人情味あふれるヒューマンドラマでもあり、胸が締め付けられて思わず落涙してしまったシーンもある。
個人的に白石和彌のファンでもあり、今最も新作を心待ちにしている監督がコンスタントに重厚な映画を撮ってくれるのは嬉しい限り。
次回作も超超期待してます!
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