「わしは賊軍だ、十一人目のな。」十一人の賊軍 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
わしは賊軍だ、十一人目のな。
まず、幕末、そして官軍と奥羽越列藩同盟の対立の経緯を予備知識として知っているかどうか、そして越後の地理と各藩の力関係がわかっているかどうかで、この映画の楽しめ度が違うだろうなと思う。だからと言って、その説明をしていては凡長になるし。そして、観ている個人個人が、どの勢力に肩入れして観るかでまた大きく見方が異なる。
で、自分はというと会津びいきなので、当然、長岡も新発田も嫌いである。冒頭、「そこから長岡を中心とする奥羽越列藩同盟、云々」とナレーションが入るが、新発田も日和見だけど長岡こそ天秤外交のような日和見交渉の末に城下を焼野原にしたんだろうが、という反発しかない。むしろ、最後まで城下を守った新発田は、憎いながらも褒めてやりたい気分。だから、阿部サダヲ演じる内匠を悪人だとは思いきれない。むしろ潔く悪役を買って出ている覚悟が見えて、組織人としての矜持を感じた。
さておき、白石監督なので、おそらく必要以上にドッカンドッカンとやってくると思ったら案の定だった。しかも城下に入るのにそんな谷底の深い川に架けた橋しかないんかよ、と突っ込みも入れたくなる。べつに、ひと山向こうに迂回すればいいだけの話だがそれを言っちゃ野暮。
エンタメとしては、殺陣が存分に楽しめた。当然、この監督なので首は転がすわ、腕もぶった切るわ、指も飛び散る。仲野太賀の迫真の演技には目を見張った。が、それにも増して、おや?このおっさんいい声してるな?と気にかけた白髪頭が、見事な太刀裁きを見せた。あとで調べると、なるほど時代劇でさんざん切られ役をしてきた東映剣会の凄腕のようだ。伏せてきた正体(名乗ったときに、ああそれなら!と膝を打った)さえも存分に納得できる腕前。
史実にのっとったとはいえ、エンタメ寄りだと思えばいいかな。