「10人だった賊軍が、11人になるまで…」十一人の賊軍 bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
10人だった賊軍が、11人になるまで…
昨日、遅ればせながら『侍タイム・スリッパ―』を鑑賞し、今日また本作を鑑賞。シチュエーションこそ全く違う2作品だか、この週末は、幕末を生きた侍の魂にどっぷりと漬かった作品を堪能した。『侍タイム・スリッパ―』は、人情劇フィクションであるが、本作は、江戸から明治へと激動の時代に起きた官軍と幕府軍との間で起きた『戊辰戦争』を基にしながらの史実物語。
命を捨てても尚、幕府を擁護する同盟軍として立ち上がった最後の武士と共に、10人の死刑囚の賊人が加わって官軍との激しい肉弾戦が展開される本作。『孤老の血』や『凶悪』、最近では『碁盤切り』で、時代劇にもその手腕が光る白石和彌監督がメガホンを撮り、期待通りの血しぶき上げて、体ごと吹っ飛ぶような戦闘シーンを描いていた。テレビ時代劇で観るような殺陣ではなく、戦場の痛みまでもがリアルに伝わって来るような、泥臭く、血生臭い壮絶な戦闘シーンだった。
物語は、新政府の官軍が幕府を倒そうと起こした戊辰戦争が背景となっている。次第に官軍が幕府軍を討ち負かす中、官軍に敵対する奥羽越列同盟に加わっていた新発田藩が、我が身可愛さのあまりに同盟軍を裏切り、官軍への寝返りを企てる。その企てを成功に導く為のカギとなる、新発田藩のある砦を死守する命がくだる。
そして、その命に選ばれし者が、明日にも死罪が執行される10人賊人と気丈なる3人の武士。そこで、最後の武士としてのプライドと賊人達なりに人としてのプライドがぶつかり合いながらも、10人だった賊軍が11人となって官軍と対峙ていく。しかし、最後に彼らに待っていたのが、思わぬ裏切りと決して臨んでいた結末ではなかった。
本作では、山田孝之と仲野大賀のW主演を務め、山田は妻を手籠めにした新発田藩士を切り殺した賊人・政を演じ、仲野は新発田藩に忠誠を誓う道場主・鷲尾兵士郎を演じた。全く違う2人のキャラが、次第に分かち合い、その中で共闘していくクライマックスの姿には、胸を打たれた。特に仲野の壮絶なラストシーンは、来年のアカデミー賞候補もみえる程の奮闘振りだったと思う。
また、2人の間に入って、新発田藩の裏切りを企てた藩士・溝口内匠を務めた阿部サダヲは、山田と仲野の熱い演技に対して、『死刑に至る病』で見せたような、異様な冷徹さの中に腹黒さが見え隠れする演技が際立っていた。