「面白かった。」十一人の賊軍 ひろさんの映画レビュー(感想・評価)
面白かった。
孤狼の血の監督、あとはCMで見られる情報しか知らずに役者さん目当てで鑑賞。
他の方の感想がけっこう低評価なのが意外なほど、わたしは楽しめました。
孤狼の血は見てないんだけど、「彼女がその名を知らない鳥たち」「死刑にいたる病」などでわたしの最推し、サダヲを起用してくれてる監督でしたか。
今回もサダヲを堪能できました。ありがたや。
映画全体の感想としては前半がなかなかキャラクターをつかめず、画面も暗く、誰が誰やらわからないところから、キャラクターをつかんでからは物語にぐいぐい引き込まれました。
とはいえ、キャラクターがどこかでみたことあるようなステレオタイプの感じもあり。
芸人さんたちの起用は完全な悪手ですね。
芸人さんでもうまい人やコメディシーンなら納得できるけど、シリアスな展開に芸人さんがでてくると悪い意味で緊張が途切れてしまう。
うまい役者さんばかりだったので、目立ちますしね。
それから、ナレーション。
わたしのような無知な者にはありがたいけど、キングダムのような英雄譚ばりの壮大なナレーションは映画の雰囲気に合ってない。
たとえば出演者の誰かが役としてではなく、抑えめにナレーションするくらいでよかったと思う。
タイトルの出し方も大げさすぎる。
予想以上にグロかったのには驚きましたがわたしには許容範囲。グロいの苦手な夫と見なくてよかった。
印象に残った役者さんたち。
仲野太賀……殺陣も違和感なく、表情も気迫があっていつものお調子者のイメージとは違う一面が見れました。罪人たちと違って小綺麗なのもあるかもしれないけど、正義感のあるヒーローも似合うし、目を引く華があるなと思う。
クライマックスでは「この映画はこの人の映画だ!」と思わされました。
あと、初めてお父さんに似てるなと思う瞬間がありました。
山田孝之……仲野太賀の映画だ!と思った数分後、弟分に向かって微笑むシーンで、やっぱり山田孝之はすごいなぁと思いました。
役としては剣の腕が立ち、見せ場があって感情移入しやすい清廉潔白な仲野太賀の役と違って、妻に会うためとはいえ、周りを引っ掻き回してまで何度も逃げようとする役は自己中心的に思えて、感情移入しにくい。損な役だと思う。
それでも主役として成り立たせられるのは山田孝之だからこそかもしれない。
阿部サダヲ……裏主役ですね。視点を変えてこの人を主役にしても映画が出来ると思うくらい、多面的な役でした。最後までこの人は悪役なのかわからなかったし、悪役ではないんだと思う。
為政者として彼のやったことは間違っていないから。領民や若殿からの信頼を見れば彼が人々の幸せを守ってるのは間違いないと思う。
あくまでも主人公たちは罪人で、いずれ処刑される身だったわけだし。
とはいえ、最終的に一番の不幸が彼に降りかかるのはやはり、やっていたことが正義ではなかったからで。
それと、悔しいのは殺陣が見れなかったことですね。
登場人物として、仲野太賀に語る「政治家であっても剣の腕を磨くのも大切と指導されてきた」(意訳)と伏線張っといて、結局剣を抜かないという展開……。
うまいなぁ。まんまと「え〜!!」と思いましたもの。中の人としても運動神経抜群だから、殺陣見せてくれると思ったら、見せてくれないの〜!と思いました。
若手注目株の一ノ瀬颯くん、実力と人気を得てる岡山天音くん、歌舞伎界のプリンス右近さん、知名度ある野村周平くん、いろんなので見かける松尾諭氏……豪華なキャスティングなのにテンポよく(?)パタパタ死んじゃうのがもったいないと思うのと、贅沢な使い方だなと感心したり。一番贅沢なのはすぐ退場した音尾琢真さんかな。
支えの役者さんで印象に残ったのは駿河太郎さん。
悪役のイメージがなかったので、嫌味な役も上手いなと感心しました。役作りか、いつもより声が高かったような。
女性陣も若手2人は存じ上げない方たちだったけど、上手でしたし、西田尚美さんも切腹の時は気丈に耐えていたのに娘の死に直面した時の夫への拒絶の対比が見事でした。
侍タイムスリッパーもよかったけど、お金をかけた実力派俳優さんたちの時代劇もやはりよかったですよ。
わたしの好きな劇団☆新感線ぽい雰囲気でしたしね。
家老は切腹しようとしてましたからね。お国の為に戦っていたのだと思います。しかし、策が悪すぎた、、、。拳銃ではなく、剣で戦って欲しかったですね。