「時代劇は死なない」十一人の賊軍 MAKOさんの映画レビュー(感想・評価)
時代劇は死なない
「侍タイムスリッパー」では侍の時代の終わりと時代劇の衰退を重ねた哀愁ある演出が光っていたが、鑑賞中自分が感じていたのは『いやいや時代劇は終わらんよ』という思いだった。
確かに現在テレビで時代劇を放映する事は全くと言っていい程無いが、映画だと今年だけでも10本近い時代劇が公開されている。
これは時代劇というコンテンツが海外でも売りやすいというのが有るとは思うが、なんだかんだ云っても日本人は時代劇が好きというのが根底に有ると思う。チャンバラってカッコイイもんな!
さてそんな「侍タイムスリッパー」と同じ戊辰戦争を背景にした本作。
幕府軍に協力要請されている新発田藩だが本音では勢いの有る倒幕軍に付きたい。で、やって来た幕府軍にそれなりに兵は出すが時を同じくやって来る倒幕軍に藩の上層部としては協力したい。
で、やって来る倒幕軍を敵軍の振りした罪人達に幕府軍が去る迄の間砦で時間稼ぎしてもらおう。
というのが物語の背景。合ってるかこれ。
時代劇では儘有る事だが、非常にややこしい。物語の前半でこの設定理解出来た人いる?
こういう分かり辛さが時代劇から観客の足を遠ざける一因にもなっていると思う。
初日の夕方に鑑賞したが自分入れて観客5人。少し心配になってくるが、映画の出来は悪く無い。
白石和彌監督の前作「碁盤斬り」ではホラー時代の癖なのか自然光を多用するあまり、クライマックスで主人公の顔が良く見えないというやらかしをしており、本作でも鑑賞前は心配していたのだが、その点は問題無かった。
だが映画としては主人公に殺陣の見せ場が全く無いというのは時代劇としてどうなのか。これ下っ端の博徒っていう設定に変えれば刀を持っても自然だし、物語の大スジ変えずに殺陣の見せ場を作れたと思うんだが。せっかく紋々背負ってるんだしさあ。
出番は多いのにほとんど見せ場の無い主人公なんて、山田孝之が可哀想だ。
そんな主人公に代わって見事な殺陣を披露したのは本山力氏と仲野太賀さん。
本山力氏は東映剣会所属であの伝説の斬られ役、福本清三氏の後継者と云われるお方。そんな氏に大きな見せ場を与えたのは、白石和彌監督のこの映画における英断でありましょう。
もっと掘り下げて欲しいキャラクターだったけど、福本清三氏と同じで大きなセリフは苦手なのかな?
仲野太賀さんは殺陣を初披露したと思うが、見事な腕前でしたね。
役者たるものチャンバラは出来てあたり前だ!なんて父上からの指導が有ったのだろうと勝手に想像しています。
この映画は予告編を観ただけで悲劇的なラストが予想出来て、そんな映画が大ヒットするとは製作側も考えてはいないだろう。
だが時代劇の火を消さない事は大ヒットと同等以上に、日本映画界にとっては大事な事だと作り手側も考えているだろうと、意外なベテランと若手の起用からも十分に伺えます。
これからも日本映画界には、愛を持って時代劇を作り続けて欲しい。
ちょっと物語は入り辛いけど、
オススメ。
おはようございます。
侍タイからの流れで福本清三さんと本山力さんの事を調べたばかりだったので、爺つぁんの殺陣のシーンは特に気持ちが入って見入ってしまいました。
チャンバラってカッコイイですね!私も時代劇ハマってきています。お付けになったタイトルに痺れました!
この間「陰陽師0」のページでtalismanさんとお話ししたのですが、MAKOさんのご存知ない所で申し訳ないのですが、私達MAKOさんの弟子になっておりますので、これからもよろしくお願いしますm(__)m