劇場公開日 2024年11月1日

「熱い生きざまをしかと見届けよ!」十一人の賊軍 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0熱い生きざまをしかと見届けよ!

2024年11月4日
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鑑賞方法:映画館

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時代劇アクション作品として期待していた本作。公開初日のレビュー評価も好調で、さらに期待を高めて公開2日目に鑑賞してきました。その期待を裏切らない、見応えのある作品でした。

ストーリーは、戊辰戦争のさなか、奥羽越列藩同盟にありながらも、藩の存続のために新政府軍に寝返ることを画策する新発田藩から、出兵を迫って城に現れた同盟軍の先遣隊をやり過ごすまで新政府軍を足止めするために、無罪放免と引き換えに進軍ルート上にある砦を死守することを命じられた11人の罪人たちの壮絶な戦いを描くというもの。

本作は史実に着想を得たプロットとのことらしいですが、どこまでが史実かはわかりません。そもそも新発田藩の裏切りも、全く知りませんでした。それでも、冒頭で戊辰戦争の概要、新発田藩と長岡藩の関係性、官軍侵攻ルートなどが端的に描かれていて、作品背景がよく理解できました。おかげで、砦の重要性、長岡藩の旗印を掲げる意味、入江たちの役割などが飲み込みやすかったです。

本作は155分という長い作品でありながら、その舞台は砦と新発田城内がほとんどです。それでも、決して見劣りすることはなく、むしろ余計なものを排除し、必要な要素を絞り込んでいるおかげで集中して観られます。そして、そのどちらにも激しい攻防があり、常に緊張感が持続しています。

賊軍として己の命をかけて放免を勝ち取ろうとする者、藩や大義のために身を投じる者、役目として粛々と任に就く者など、砦に集う者たちの心はさまざまです。実際に砦の攻防があったかどうかは別として、歴史の陰で捨て駒のように扱われた者たちは数えきれないほどいたことでしょう。そのような者たちにスポットを当て、その生きざまと命の叫びを描き切ったことがすばらしいです。

その一方で、城内の家臣たちの苦悩と覚悟もしっかり伝わってきます。たとえ後世に残る汚名を受けようとも、人としての道理に反しようとも、藩と領民のために命を賭して役目を全うしようとする家臣たちの思いも察するに余りあります。誰がいいとか悪いとかではなく、ただ必死な姿がそこにあるだけだったように思います。

それにしても砦での攻防が激しすぎます。当時の大砲の実力は知りませんが、本作で描かれる大砲の威力はまさに死の恐怖を感じるレベルです。そんな強力な官軍を相手に、たったの11人で立ち向かう姿が熱いです。なんのつながりもなかった11人が、ともに死線をくぐり抜けるなかでしだいに強く結ばれていく関係性に重い説得力を感じます。槍術師範の爺っつぁんの決死の立ち回りに熱いものこみ上げ、兵士郎の怒りの猛攻と政の壮絶な最期には涙がこぼれます。無難なハッピーエンドに落とさない、見事な締めくくりです。

主演は、山田孝之さんと仲野太賀さんで、その生きざまがひしひしと伝わる演技が秀逸です。脇を固めるのは、尾上右近さん、鞘師里保さん、佐久本宝さん、千原せいじさん、岡山天音さん、松浦祐也さん、一ノ瀬颯さん、小柳亮太さん、本山力さん、野村周平さん、音尾琢真さん、玉木宏さん、阿部サダヲさんら豪華な顔ぶれ。中でも、めんつゆ鞘師さんが、なかなかの好演で、うまく役にハマっていると感じます。

おじゃる