「言い尽くせぬ儚さとノスタルジーが込み上げる」ザ・バイクライダーズ 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
言い尽くせぬ儚さとノスタルジーが込み上げる
ジェフ・ニコルズが創り出す映画にはノスタルジーを感じさせる映像の美しさとアウトサイダーの心理模様が同居する。私はバイクへの憧れなど微塵も持たない人間だが、それでも本作が描く60年代、疎外感を抱えた個々がバイクに思いを重ね、繋がりあい、価値観や居場所を共有する生き方には共振を覚えるし、一方でそれが制御を失い道なき道を暴走し始めた時の恐怖や危うさもわかる気がする。そうした目で見た時、この映画には何かしらの普遍性と、もう二度とはそこに戻れない儚さや痛みがあふれているのを感じた。まるで古いアルバムをめくるような感覚というべきか。ニコルズ監督流の落ち着いた語り口と構成、ベニー、ジョニー、キャシーが織りなす両者一歩も引かない人間関係も親しみを抱かせる要因となろう。特にトム・ハーディの役柄にはマッチョな体の中の繊細なハートを感じた。過去を美化するのではなく、現在地も含めて人を包み込む視点がここにはある。
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