「歪んだ鏡像で観るヒッチコックっていうところかな。(ほめてはいない)」映画検閲 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
歪んだ鏡像で観るヒッチコックっていうところかな。(ほめてはいない)
制作者はどういった完成イメージを持っていたのかな?意図が分からない、あっちいったりこっちにきたり、ウロウロしている映画だなと思った。
まず「映画検閲」っていうタイトル。映画は言うまでもなく一国の文明を代表する表現物です。そして、人々がみたいものとオオヤケが抑制したいものは宿命的に対立する。つまり文化と権力の間の綱引きが検閲に表れるわけで、一つの国における検閲制度の分析は、文化論、政治論につながり実に興味深いところがあります。本作では80年代イギリスで「ビデオ・ナスティ」といわれた暴力表現の多い映画とその検閲が描かれている。検閲されるということはそれだけ需要もあるということ。イーニッドが貸ビデオ屋でフレデリック・ノース監督の作品を探すシーンがあるじゃないですか。ビデオは裏から出てくる。同じ頃の日本では裏ビデオがレジ下から出てきたのでした。検閲の主要ターゲットが暴力表現か性表現かという違いがあって面白い。
でも検閲制度に踏み込んだ部分は最初だけでそこを掘り下げるような話ではなかった。イーニッドは検閲官であったため、ある情報に接することとなる。検閲はストーリーのきっかけだけなのです。そしてイーニッドは身内の謎に迫りながらも彼女自身がどんどんおかしくなっていく訳でこれはサスペンスドラマの定番ですね。例えばヒッチコックみたいな。そう、この映画はスプラッター化したヒッチコック、歪んだヒッチコックみたいなところがある。ヒッチコックは本当はこういうことをやりたかったんだろうな。(彼の時代ではああいったスプラッター表現はできなかっただろうから。おそらく好きだっただろうけど)というとほめているように聞こえるかもしれないが、後半、森に入り込んでからの展開があまりにもつまらなすぎる。想像力をあまり感じられない。私はホラー映画はあまり観ないので間違ってるかもしれないけどホラー映画のファンの人からしてもこれは多分、ダメダメですよね。
全編通じて一番驚いたのは大声をだしている一箇所だけという有り様。小学生の肝試じゃないんだから。