「この力作を世に送り出してくださったことに、心より感謝とエールを送りたい」宝島 yamadaikanさんの映画レビュー(感想・評価)
この力作を世に送り出してくださったことに、心より感謝とエールを送りたい
9月最後の土曜日、映画『宝島』を観た。
全国で観客の入りが芳しくないことをとても残念に思い、レビューを書き残しておきたい。
この映画が私たちにもたらしたものは、ただのエンターテインメントではない。それは、戦後沖縄が抱え続けてきた「魂の傷」と「真実の重さ」を、容赦なく、そして克明に描き出した映像の力ではないだろうか。
妻とともに観に行ったが、「本当にあったことか知りたくなった」「暗くて暴力が怖い」という率直な感想は、まさに『宝島』が成功している証だと感じた。観客が、通常の映画に求める「救い」や「答え」が不在であることに戸惑い、閉塞感を覚えたという事実こそが、この作品の真髄ではないだろうか。
なぜなら、この映画は、観客が目を背けがちな、あるいは知っているつもりでいた「簡単には解決しない現実」を突きつける、セミドキュメンタリーとしての役割を十全に果たしているからだ。
終始、観客を引っ張った「おんちゃん」という存在の謎と悲劇、そして、その絶望性が「命」の象徴であるウタの消滅とともに明らかになる終幕は、安易な希望を提供することを拒否している。それは、制作陣が「ヤマトの同情だけの責任逃れ」を排し、沖縄の現実と正面から向き合った、勇気ある姿勢の表れではないかと強く感じた。
観客は、救いのない暗さにダブルパンチを食らいながらも、この映画が「正しく、偽りなく、詳しく沖縄の抱える問題を描いている良い映画」であることを認めざるを得ない。大友啓史監督が見せた、史実に忠実なドキュメンタリー性と、飽きさせない演出、そして暴力表現の必要性とコントロールの妙は、この重い題材を3時間という長尺で見事に描き切っている。
『宝島』は、現代の戦争や世界の抱える問題の焦点として、沖縄の問題を人類全体の問題として捉え直すきっかけを与えてくれたのではないだろうか。
安易な「答え」がなくても、観客の心に火を灯し、「そんなに簡単なことではないが、生き続けなければならない」という言葉とともに、「そろそろ本当に生きる時がきた」と問いかける力。
この映画は、多くの議論と葛藤を呼び起こしながら、沖縄の過去と現在を未来へ語り継ぐ、かけがえのない「宝」となっている。この力作を世に送り出してくださったことに、心より感謝とエールを送りたい。
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