「真の外国人特権を見るべき」宝島 ゆうじんさんの映画レビュー(感想・評価)
真の外国人特権を見るべき
数年前から外国人排斥の動きがだんだん大きくなり、今年の参院選ではそれが爆発した感じ。SNSには、普通に仕事をしている人、観光している人まで「外国人」というだけでさらし者にするような写真があふれている。具体的なデーターはあやふやなまま、外国人特権という概念が日本を飲み込もうとしているように見える。
しかしこの流れの中で、映画に描かれている在日米軍という「真の外国人特権」については、ほとんど触れられていないことに非常に疑問を感じる。沖縄の問題だから?他人ごとに思えるのか?沖縄もまた、日本の領土の一つなのに?
そして、基地は沖縄以外にもある。さらに日本に領空権はなく、集団的自衛権が認められてしまった今、地球の裏側のアメリカの戦闘に巻き込まれる可能性すら出てきている。これは沖縄ではなく、日本全体の問題なのだ。
さて、そんな中コロナによって延期が続き、結果的に戦後80年の年に公開となったこの作品は、本来日本の「反米」機運を高めても仕方ないような危険性すらはらんでいるように見えた。特にクライマックスのコザ騒動で、民衆の怒りが爆発するシーンは、ある種「ジョーカー」のクライマックスで感じたのと同じような一種のカタルシスがある。これは、実は結構危険な感情で、本映画ではグスクの自制心によって直後のシーンで「こんなことして何になる」と否定されているが、騒動の中にいた瞬間は、確かに彼自身も飲み込まれそうになっているように見えた。
ところが、公開数日の現在、本作の盛り上がりは、世間的にいまいちで、しかも、Xでの監督のコメントがどうとか、電通がらみだとか、変なノイズが多い。
勧善懲悪ものでも、すっきりしたエンディングがあるわけでもない。歴史的背景を知らないと難しいところもあるかもしれない。しかも、結末はバットエンドに限りなく近く、オンが守った「宝」は騒動の中で結局失われてしまった。「こんなことが続くわけがない」というグスクの言葉は、とてもむなしく聞こえる。
でも、これが沖縄と日本の現実で、しかも現在進行形。単なるエンタメで終われるはずがない。そういう意味でとても完成度は高い映画だし、ストーリーだと思う。私は原作を読んでいないが、ぜひ原作も、と思わせる出来だった。むしろこの映画の言いたいことが分からないといわれると、なんだか悲しくなってしまう。
満点とはいいがたいのは、確かに、方言に寄せたセリフは絶叫しているにもかかわらず聞き取りづらいところはいくつかあったし、展開的に分かりづらい部分もあったところ。完璧な映画とは言えないかもしれない。でも、3時間半見る価値はある映画だった。私は気に入った映画は応援の意味でパンフレットを買うが、この作品は「買い」。今年はパンフレットを買う映画が多くて嬉しい。
こんばんは。
コメント失礼しますm(__)m
素晴らしいレビューでした。
グスクの言った「こんな事が続くわけがない」
そう言わすしかなかったのでしょうが、でもあの結末。
そして現在進行形の重い重い問題がありますからね。
虚しくなりますよね。
沖縄の方々だけの問題にしてはダメですよね。
本土の人間も自分事として受け取るべき怒りだと思いました。
私は無知なので自分のレビューにはあまり気持ちを乗せられませんでした。
今からでも学びたい、知りたいです。
ゆうじんさま、初めまして🙂
映画の「中」だけでなく「外」への視点もある、ゆうじんさんのようなレビューに出会いたくて、このサイトをのぞいています。
>私は気に入った映画は応援の意味でパンフレットを買うが、この作品は「買い」。今年はパンフレットを買う映画が多くて嬉しい。
私も同じです🫡
本作のノイズは意図的なモノがありそう。泥酔事件で公開が危ぶまれるも大反響、興収トップのアチラ。
泥臭くニンゲンを描いたコチラのほうがはるかに面白かった。
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