「和製オーシャンズ11とも言うべき、最高のエンタメクライム映画」アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師 といぼ:レビューが長い人さんの映画レビュー(感想・評価)
和製オーシャンズ11とも言うべき、最高のエンタメクライム映画
内容については全く知りませんでしたが、評価が高かったので期待しての鑑賞です。
結論としては、期待通りの作品でした。冴えないオジサンがひょんなことから詐欺グループの仲間となり、悪逆の限りを尽くす会社社長に復讐するというジャイアントキリング。登場人物の会話劇も面白く、ストーリーも巧みで、伏線回収も見事な傑作クライム映画でした。雰囲気としてはオーシャンズ11が近い気がします。老若男女問わず楽しめる映画だと思いますので、家族や友人同士で観に行く映画としては最高です。
ただし、不満点が無かったかと言えばウソになります。見え見えの伏線で先の展開が読めてしまう場面も多かったし、前日譚のドラマを聞いたこともないようなマイナーな動画配信サイトで有料公開していたりするのは個人的には不満です。
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真面目な税務署員である熊沢二郎(内野聖陽)は、優秀な部下の望月さくら(川栄李奈)とともに、巨額脱税の疑惑がある大企業社長の橘大和(小沢征悦)の開くパーティーに潜入する。熱血な望月は熊沢が静止するのも聞かず橘に詰め寄ったのだが、それによって二人は橘に目を付けられてしまい、税務署の上層部に根回しされて様々な冷遇を受けることになる。同時期、熊沢は詐欺の被害に遭い大金を騙し取られる事態になった。刑事の友人の協力によって犯人である天才詐欺師の氷室マコト(岡田将生)を捕まえる一歩手前まで迫ったとき、氷室から「見逃してくれたら、橘から金を奪い取る手伝いをしてあげる」と言われ、心が揺れる熊沢だった…。
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冴えないオッサンが様々な悪事を働く巨悪に対して行うジャイアントキリング。オッサンが詐欺師たちとチームを結成し、難易度の高いミッションを遂行していく。他の映画に例えるのは失礼かもしれませんが、『オーシャンズ11』や『キングスマン』のような爽快さやカッコ良さを味わえる映画だったと思います。軽妙な会話劇も面白い作品で、伊坂幸太郎の小説『陽気なギャングが地球を回す』のようなキャラクター同士の掛け合いが楽しいクライムエンタメになっていました。ストーリーも私は結構好みでしたね。物語がどこに進行しているのかが分かりやすく、様々なトラブルが起こってそれを解決する展開が続くため飽きずに最後まで鑑賞することができました。
ただし不満点が無いかと言えばそうではなく、物語の伏線が見え見えで先の展開が予想できてしまうところはちょっと不満でしたね。
例えば、氷室が刑務所にいる父親との面会から帰るシーン。刑務所から出ると、外にはバイクに乗った女性が待っていました。バイクに詳しくない人からすると「白石(森川葵)が迎えに来たのか」と思うかもしれませんが、バイクもヘルメットも序盤に登場した白石のものとは違ったため、私は登場していない詐欺グループのメンバーだということが分かってしまいました。ついでに言えば『7人の詐欺師』というタイトルなのに終盤まで詐欺師が6人しか出てこないことも、未知の1人がいるという論の補強になっていました。
また、詐欺を実行している時、外で待っていた熊沢が望月を連れて橘の手下から逃げるシーン。たまたま通りかかった宅配業者が道を塞いだことで熊沢たちは逃げ切ることができましたが、この宅配業者が明らかに橘の手下たちの行く手を阻む動きをしていたので、「こいつ詐欺師グループの誰かだろ」「体格良いから多分村井(後藤剛範)だろ」と気付くことができました。
上記以外にも分かりやすい伏線が結構多くて、先の展開が読めてしまう場面が結構ありました。「伏線をどれだけ分かりやすく(分かりにくく)するか」っていうのは匙加減が難しいところだと思うので、あくまで伏線回収モノ映画が大好きな私個人の意見にはなりますが、もう少し分かりづらい伏線の方が好みでした。
「伏線が見え見え」という不満点はありましたが、正直本作の面白さと比べればこんな不満点は吹けば飛ぶほど些細なもので、全体的に見れば満足度100点の良作映画だったと思います。上田監督の次回作にも期待しています。