「脱税者が蔓延る世の中、詐欺者たちに脱税王と共に私自身も騙され、大いなる爽快感を感じた」アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師 Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
脱税者が蔓延る世の中、詐欺者たちに脱税王と共に私自身も騙され、大いなる爽快感を感じた
上田慎一郎監督による2024年製作(120分/G)日本映画。配給:ナカチカピクチャーズ、JR西日本コミュニケーションズ、劇場公開日:2024年11月22日。
「カメラを止めるな!」は抜群に面白かったが、劇団「PEACE」を主催していた和田亮一氏による原作アイデアが凄く秀逸で上田慎一郎監督の演出力はあまり感じられなかったが、本映画では、岩下悠子との共同脚本も含めて上田監督めちゃ力量あるじゃんと唸らされた。
勿論、痛快な逆転劇である韓国ハン・ジョンフン原作のアイデアがベースとしてとても秀逸である(観客である自分も、詐欺を警察に通報されてしまうことが計画だと気付かず綺麗に騙された)とは思うが、最初の詐欺や謎のオートバイ運転手等、伏線が気持ち良く回収され、俳優たちの演技もお見事と思わされた。
特に次第に標的を騙す演技に開眼していく生真面目な公務員をコミカルさも入れ込んで演じた内野聖陽には、笑わされ感心し驚かされて、拍手喝采。「八犬伝」で演じた偏屈ジジイ北斎もとても良い味を出していたが、コチラの演技は別人の様で、その演技の幅に圧倒された。
熱さをひめた天才的詐欺師を演じた岡田将生も、役柄にピタッリはまっていた印象。「ラストマイル」の平凡なサラリーマン役も含めて、今年は彼の年であった印象さえも。
税務署所長もお金の力でお仲間で大金を脱税していた小澤征悦から、岡田や内野たちが協力して大金をせしめたラストはとてもすっきりとした。ただ、不動産界隈で有名らしい西園寺家の屋敷を岡田ら詐欺師たちがどういう手続きで小澤らに案内できたかは分からずじまい。言わば、脚本の欠陥の様で、その点は残念だった。
加えて、内野と部下の川栄李奈の関係性もとても良かったし、本店栄転を犠牲にした正義感からの彼女の逆転的な対応も、お見事と思わされた。元アイドルらしが、また是非見たい女優さんと思わされた。なお皆川猿時演ずる刑事も悪くなかったが、少し良い奴すぎて、川栄とのバランスも有り、キャラクター設定に少し物足りなさも感じた。
監督上田慎一郎、原作ハン・ジョンフン、脚本上田慎一郎 、岩下悠子、企画プロデュース
伊藤主税エグゼクティブプロデューサー、前野展啓ゼネラルプロデューサー西山剛史、プロデューサー内部健太郎 、門馬直人 、川端基夫ラインプロデューサー坂上也寸志、キャスティング伊藤尚哉、撮影山本周平、照明鳥内宏二、録音西條博介、特機佐川敬一、装飾前屋敷恵介、衣装松本人美、ヘアメイク菅原美和子、VFXスーパーバイザーエドリントン・バナード、カラリスト大西悠斗、編集上田慎一郎、 江橋佑太、音響効果柴崎憲治、音楽鈴木伸宏 伊藤翔磨、主題歌KERENMI 峯田和伸、監督補佐ふくだみゆき、助監督上野貴弘、制作担当石井修之、スクリプター中村愛由美。
出演
熊沢二郎内野聖陽、氷室マコト岡田将生、望月さくら川栄李奈、白石美麗森川葵、村井竜也後藤剛範、丸健太郎上川周作、五十嵐薫鈴木聖奈、五十嵐ルリ子真矢ミキ、八木晋平皆川猿時、酒井恵美子神野三鈴、安西元義吹越満、橘小澤征悦。