「ギリギリの最前線」助産師たちの夜が明ける La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
ギリギリの最前線
パリの病院で働く助産師の人々の業務を追った迫真の作品です。
オープニング早々から慌ただしく緊迫した場面が続き、カメラもどちらに向くべきが躊躇いを見せ、僕はてっきりドキュメンタリーなのかと思って初めの10~20分は観ていました。やがてカット割りした映像が現われて「あ、ドラマなのか」と気付いた次第で、それほど生々しいのです。
病院側はコストカットの為に人員を減らし、現場の医師や助産師たちへの負荷が高まり、それでも業務は安全に確実にこなさねばなりません。無事出産を迎えられる人ばかりではなく、帝王切開の判断を求められる人があれば、未熟児を心配する人もおり、死産の悲劇と向き合わねばならない人もいます。働く人々は、医療上だけでなくベッドの差配や人員配置の判断も即座に求められます。だから、現場のプレッシャーは高まり、生の感情が衝突したり、思わぬミスをしたり、場合によっては疲れ果てて職場を去る人も出て来るのです。
観ているこちらがどんどん息苦しくなります。これはパリの産婦人科だけの問題ではなく、日本でも、特にコロナ禍の期間はこれ以上の苛烈さだったのではないでしょうか。医療現場で命と向き合う人々が、給与も含めて正しく報われる労働条件であります様にと祈らずにいられません。
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