劇場公開日 2024年7月20日

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「切実さの中で巻き起こるパワフルな生命讃歌」村と爆弾 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0切実さの中で巻き起こるパワフルな生命讃歌

2025年7月24日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

台湾ニューウェーブを牽引したワン・トン監督が、日本統治時代の台湾を舞台に珠玉の人間模様を織りなした名作である。農村の男たちが次々と戦争に駆り出される中、残された人々は農作業に汗し、それでもなお貧困と食糧事情は深刻さを増すばかり。しかしそんな不条理な過酷さの中でも決して絶望することなく、逞しい生命力とユーモラスな視点で活き活きとした家族のドラマが描かれゆく。語り部となる案山子が立つ畑は、言うなれば最大の舞台的空間だ。端には先祖の墓がちょこんと位置し、鳥たちは作物をつつき、精神に異常をきたした妹は緑の中で舞い踊る。さらにひとつの爆弾が飛来してからは、村人全員が固唾を呑んで見守る「世界の中心」と化す。まさに日常と非日常、破壊と平穏の境目。そこからの思いがけない顛末もパワフルで魅力的だ。あと、ちびっこ達の無邪気な躍動が可愛らしい。先行きの見えない中でも言動の一つ一つがとびきりの笑顔を届けてくれる。

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牛津厚信