「後半の転調が自分には合わず…」チャチャ おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
後半の転調が自分には合わず…
鑑賞予定の「室井慎次 敗れざる者」の前に時間があったので、何か観ようと本作をチョイス。上映時間の都合だけで選んだのですが、レビューサイトの評価は、公開2日目の朝の時点で2.9!むろん人柱覚悟で鑑賞してきました。
ストーリーは、人目を気にせず自由に生きていたイラストレーターのチャチャが、喫煙場所でたまたま出会った男性・樂に、周囲にいる男性とは異なる魅力を感じ、彼の家に転がりこんで生活するようになるが、彼には秘密があり、それを知ってしまったチャチャは事件に巻き込まれてしまうというもの。全く価値観の異なる二人が、互いに補い合って理解を深めていく感じのラブストーリーかと思いきや、そういう感じの作品ではなかったです。
子猫のような愛くるしさと気まぐれさで周囲の男性を翻弄していくようなチャチャ。同僚の女性の嫉妬や陰口もお構いなく、自由奔放に生きる彼女ですが、どうやら以前はそうでもなく、何かをきっかけに変わったように受け取れます。しかし、その経緯や生い立ちが描かれることはなく、彼女の本心はイマイチ見えません。それでも、そんな彼女だからこそ、自分にちやほやしてくれず、さほど興味を示さない男性に惹かれるのはわからないでもないです。
逆に、樂がそれほど惹かれてもいない彼女を受け入れるのですが、当初はこの心情が理解できませんでした。後々わかるのですが、樂には他に好意を寄せる女性がいて、これがチャチャとは似ても似つかず、共通点も見出せません。また、チャチャを迎え入れたのも「寂しかったから」というようなことを終盤で口にします。結局、樂にとってのチャチャは、心の寂しさを紛らわすためのペットのような存在で、不要になればいつでも捨てるつもりだったということでしょうか。
そんな二人を第三者視点で観察する、語り手のような立ち位置の凛。チャチャを尾行し、その陰にいる樂や謎の男性の存在を把握し、英会話講師との関係も察した彼女が、後半のキーマンになって、チャチャと樂の関係が変化してくるのではと期待させるものがあります。しかし、唐突に視点が外国人女性や樂に切り替わり、凛の存在意義が薄らいでしまったように感じます。
また、このあたりから物語が予想の斜め上の展開となり、何を見せられているのか、どこに着地するのかもわからず、カオスの一歩手前ぐらいの様相に戸惑うばかりとなります。ラストの締めかたもよくわからず、結局何が言いたかったのかと、もやもやしたものが残ります。チャチャの姿を通して、本当に誰か一人に強く大切に思われることの大切さを描きたかったのでしょうか。チャチャと凛が“悪”について語るシーンが印象的です。
ただ、終わってみれば、樂はチャチャの言葉に背中を押されて犯罪を犯したようにも見えますし、それが露見するような危険な自宅にチャチャを招き入れたことも理解できず、しかもなかなかバレることもなく、やはり腑に落ちない点が多かったです。
主演は伊藤万理華さんで、つかみどころのない奔放なチャチャを好演しています。脇を固めるのは、中川大志さん、藤間爽子さん、塩野瑛久さん、ステファニー・アリアンさん、落合モトキさん、藤井隆さんら。
たまに泊まりにきてた程度ならまだしも、同棲しててアレに気付かないは不自然ですよね。
後半の展開をやるなら、キャラ(特に樂)の背景がないと意味が分からないです。