マミーのレビュー・感想・評価
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「空気」の支配とドキュメンタリーの臨界点
ポン・ジュノ監督『殺人の追憶』は、犯人と思われた男のDNA鑑定が「不一致」で、逮捕にいたらないという結末だった。しかし、80年代のDNA鑑定は「DNA型鑑定」とも呼ぶべきもので、正確性に問題があった。本作では、当時の亜ヒ酸の分析が「パターン分析」であり、分析者の「主観」による断定だったとの検証がなされる。再分析では、林眞須美家にあったヒ素と、カレー鍋に混入されたヒ素は同一ではない、との結果だったそうだ。
和歌山毒物カレー事件は、マスメディアの取材が過熱していた。取材陣にホースで水をかける眞須美の姿は、見る者に特定の印象を植えつけた。
また、ある共同体で起こった惨事について、誰かに帰責して平穏を取り戻したい、との力学が働き、眞須美をスケープゴートとして差し出した、という背景があったかもしれない。
雑駁な印象だが、林眞須美という人は「自分にメリットのないリスクはとらない」というポリシーを徹底しているように見える。つまり、夏祭り参加者を無差別に狙うような事件を起こす動機が想像し難い。怨恨なら、怨みを抱く対象を確実に殺害できる方法を選ぶように思われる。奇妙な言い方だが、林死刑囚の人格を考えると、カレー鍋に毒物を入れる、などという行為は、不合理きわまりない。この事件の最大の謎は、動機だ。
原一男監督『ゆきゆきて、神軍』で、かつての上官を殴る奥崎謙三を淡々と撮っているカメラに向かって、上官の妻が助けを求めて声を荒げる場面がある。本作で、二村監督は、事件関係者車両にGPS装置をしかけ、不法侵入で送検、示談となっている。
この時代にドキュメンタリーを撮ることの意味と意義を考えさせられる。監督は「何か成果があるまで退けないと思った」と語っていた。「大義」ある行いに、法的制裁はなされるが、社会的には擁護される、という状況は、益々成立し難くなっている。ドキュメンタリストの今後も問われる映画だ。
検察がアレだけに、冤罪説が有力に思える
一時期、マスコミを騒がせた和歌山毒物カレー事件も25年以上前のことなのかと、まずビックリ。
有罪の決め手は状況証拠しかなく、そのカレー見張り番中の林眞須美被告の様子を見た高校生の証言も、角度や網戸で見えづらい1階から、裁判では2階から見たことに変わっていたり、ヒ素の同定も韓国製というだけで、当時はよく流通していた物で、団地内の他の所有者の調査はしていなかったりと、う~んと思わせるものが多い。
林夫妻は数々の保険金詐欺で数億円をせしめており、その手口を夫の林健治(元シロアリ駆除業者でヒ素を所有)が嬉々とカメラの前で語るのには違和感(思わず失笑)を覚えるが、金には困っていないのに、すぐ疑われるような事件を起こすとは思えないし…
被告の子供たちは事件後、養護施設に行くなど大変な人生を送っており自殺者が出ているのも、子供は関係ないのに…と思って不憫に感じてしまう。
とにかく、必見の映画である。
子どもと旦那が明るい
事件当時、保険金狙いで麻雀仲間を二人くらいヒ素カレーを食べさせて殺害していると報道されていたような気がしたが死んではいなかったようだ。泉という被害者も、高度障害での保険金狙いで自らヒ素カレーを食べたり、原付で事故を起こそうとしていたりしたようだ。てっきりそんな極悪人が林ますみであると思っていた。確かに保険金詐欺の常習犯は悪人だが、無差別テロとは様子が違う。ヒ素をカレーに入れても利益が発生しない。町内全体に対する憎しみでもあったのだろうか。そうでなければ確かに動機がない。
それにヒ素が林家にあったものと明確に違うようだ。冤罪なのかもしれない。
林ますみが長女とお風呂に入っていたら溺死する夢を見たら、本当に娘が瀬戸大橋から身投げして子どもと心中していた。後付けの嘘でなければスーパーナチュラルの存在をさりげなく示す。長女はいったいどんな人生を送っていたのだろう。
息子と健司が泉を訪ねるシーンがある。二人ともすごく明るい。長男は自分は幸福にならない方がいいと、結婚もせず家庭も持たない人生を選択している。相手次第だけどそんなふうに決めつけず人生の可能性を探って欲しいと思うのだけど、長女の末路を思うと、選択が正しいのかもしれない。
冤罪であると訴える団体の皆さんがすごく熱心だ。彼らに何一つ利益があるとも思えず、単なる善意でやっているように見える。すごい人たちだ。選挙に出て世の中を正してほしい。
監督ががんがん行くタイプの人だと思ったら、取材相手にGPSをつけようとして被害届をだされていて、そんな様子も作品の一部にしている。偉そうでなくていい。
後ろの席のおじさんが豪快にいびきをかいていたし、斜め後ろの人もずっとビニールをパリパリさせていた。
いろいろ複雑だが見に行ってよかった
たまたま劇場の予告編で見て、これは見てみたいと思い見にいきました。
ちょうどこの事件当時は私は小学生でしたが連日報道されてもちろん知っていました。
劇中で息子さんが事件当時の話でグランダー武蔵のことを話していたのでおそらく息子さんと私は同世代だなと思いました。
さて、肝心のこの作品に関してですが私はとても興味深い内容で見入ってしまいとてもあっという間でした。不謹慎かもしれませんが面白かったです。
何の事件でもそうですがマスコミは騒ぐだけ騒いで逮捕されたりある程度のその事件のピークを迎えるともう報道しなくなります。
この件も林真須美が逮捕されてからその後は連日報道されなくなったのでその後のことは私は何も知りませんでした。
地域柄ヒ素が日常的に常備されてることや、分析の仕方が専門家によって見解が違う点、科学的根拠が不足してる点、近所の方の目撃証言の信ぴょう性、娘が自殺していることなどなかなか盛りだくさんの内容でした。
本当に林真須美は冤罪なのかどうなのかはわかりませんが、一つだけ本人たちも認めている話として保険金詐欺の話がありました。
夫である林健治がその話を自慢気に語るシーン、さらにはその詐欺に加担した元同僚?舎弟のような人に息子と健治が会いに行くシーンにこの家族の人間性が見えました。
詐欺に加担した元同僚は真須美に惚れていたためそれを利用して詐欺に加担させたり、真須美は10回以上もヒ素を入れた食べ物や飲み物を食べさせ飲ませています。
そんなことをした人に何十年ぶりに会いにいき悪びれる様子もない健治、息子も子供の頃、下に見ていたと話していたので会いに行った時も気遣ってはいるものの両親のやったことに対する申し訳ない気持ちなどはないような対応に見えました。
だからといって、真須美がカレー事件の犯人とは決めつけてはいけないのですが、明らかにこの保険金詐欺事件のことやこの舎弟のような人物への毒盛りの件があったので犯人として確定され、科学的な分析の調査も雑に行われているにも関わらず死刑確定したのではないかなと思います。
ま、でもそんな健治のメンタルおばけというか人間性も含めてこの作品の良さだとは思いました。
あと気になったのは駅前での林真須美の無罪を主張する団体の演説に対して「和歌山の人らはみんな真須美が犯人だと思ってる」と面と向かって発言していた方。
パッと見アンチの方に見えるがちゃんとその主張に向き合っていて、俺は犯人だと思っているがあんたらの気持ちもわからなくないと頑張ってくれと言って立ち去るのだがこうやって向き合うことが大事だと思った。
一番ダメなのは無関心なこと。
本当に林真須美が犯人なのか、真実はわからないが大事なことはちゃんと問題に向き合うことなんだと思う。
それと最後の最後で監督が捕まりそうになる?取り調べ受けてて、本当にこの方も体張って取材してて結果的にすごく興味深い作品を作り上げてくれたので。
題材が題材なだけにあまり公開期間が短く回数も少ないですがぜひ見てほしい。
なんなら劇場公開後は配信とかもした方がいい、この事件について知らなかったたくさんのことを知れたので私としては本当に見に行って良かったです。
興味ある方はぜひ見に行ってください!
印象操作の方向性によって、事件は思わぬ方向へと逸れていくもの
2024.9.11 京都シネマ
2024年の日本映画(119分、G)
1998年に実際に起こった「和歌山毒物カレー事件」を「冤罪ではないか?」という視点で描いていくドキュメンタリー映画
監督は二村真弘
物語は、事件が起きて27年が経ち、死刑判決も出ている事件について、「冤罪の可能性」を追求するというテイストで作られている
監督の二村真弘は、ある日、林眞須美の息子・浩次(仮名)の講演を傍聴し、その内容に衝撃を受けたと言う
それによって、この事件には深い闇があるのではと考え、取材を行うようになった
裁判の判決文もなかなか入手できず、そんな中で、眞須美が誹謗中傷などに対する裁判を起こしていたことを知り、その裁判を調べていく中で、いくつかの事実に辿りついていく
それは、判決そのものの正当性と信憑性に真っ向から挑むもので、冤罪を訴える団体の検証なども含まれていた
判決では「目撃情報」「使用されたヒ素と同じものが眞須美の家と本人から検出」「これまでの余罪」などを含めて、状況証拠で死刑を確定させていることがわかり、事件の動機は「未解明」で、冤罪の可能性がずっと指摘されている案件だった
これまでにも何度も再審請求が行われてきたが全て却下されてきていて、2024年2月になってようやく和歌山地裁に受理されるに至っている
映画は、ジャーナリスト片岡健の視点、浩次から見た母親像、健治による余罪の告白などで構成され、死刑判決が妥当なのかどうかを真正面から訴えている内容だった
あまり知られていない知人男性I氏のことも詳細に登場し、彼が共謀した10件近い保険金詐欺事件の内幕まで登場する
そして、彼の背景となる家庭環境、林家へとつながりを持つことになった経緯、その印象などが語られてくる
その方が今どうしているのかはわからないが、裏読みすれば、いろんな思考が読み解けてくると言う感覚もあった
この映画は「冤罪である」という目線で描かれているので、少々のバイアスがかかっているとは思うものの、この内容が本当ならば、死刑を確定させるのは難しいのではと言う印象を持ってしまう
メディアスクラムで露出した眞須美の印象と、それを利用した世論誘導による判決が行われていたのは事実で、証言の信憑性なども不透明な部分は多い
一般人が知り得る情報は少ないのだが、パンフレットに掲載されている「判決文」を読めば、それだけで想像以上に異常な判決が出ていることがわかる
それゆえに、興味のある人はパンフレットを購入して、いろんな情報をあたってみるのも良いのかもしれない
語られていない動機を想像して嵌め込むと言うのは裁判の根底を揺るがすものであり、自白や決定的な証拠がなければ基礎すらできない案件だと思う
これまでに「自分の利益のために死者を出さない程度の詐欺事件を起こしてきた眞須美」が、いきなり「無差別テロ」のような事件を起こすのは不自然だと言う声も納得できる
実際に、彼女の周りで何が行われていて、どのような人間関係が構築されていたのかは当事者以外知り得ないのだが、亡くなった方が自治会長と自治副会長と二人の子どもというところも違和感があると思う
この事件は本当に無差別だったのか?という疑念もあって、色々と考えさせる事件だなあと感じた
いずれにせよ、かなり扱いの難しい作品であり、よく世に出たなあと思う
普通に生きていれば犯人扱いされることは稀に思うが、司法が狂っているのは国民も承知の事実で、メディアがおかしいのも誰もが知るところだろう
そう言った国に生きているという実感を持ち、いつ何時当事者として巻き込まれるかわからないということを念頭において生きていくしかないのかもしれません
1998年7月に起きた「和歌山カレー毒物混入事件」。 地域の夏祭り...
1998年7月に起きた「和歌山カレー毒物混入事件」。
地域の夏祭りで提供されたカレーにヒ素が混入し、4人が死亡、数十人が重軽傷を負った事件だ。
犯人と目され、逮捕、最高裁で死刑判決がでた主婦・林眞須美は無罪を訴え続けた。
裁判で提出された「目撃証言」「科学鑑定」を再度検証し、判決は適切であったかどうか、当時の過熱したマスコミ報道の在り方に誤りはなかったのか・・・
といったところから取材がはじまるドキュメンタリー映画。
証言・証拠の再検証から「冤罪事件」とその原因を追うつもりだったはずだが、林死刑囚の夫・健治の口から、当時、事件の背景として世間から強力に非難された原因である保険金詐欺事件の全貌がアッケラカンと飛び出す。
健治が行っていた保険金詐欺事件・・・って、まんま『黒い家』やん。
『黒い家』では妻が主犯だったけれど、健治の保険金詐欺事件の主体は健治。
「楽勝やで~」などとの発言もあり、あまりの不謹慎さに取材する監督も魅了されてしまう。
結果、製作意図からドンドントとズレていき、良識とか常識の範疇からはみ出して行くという不謹慎な面白さに満ち満ちている。
良作とかからは遠いが、ケッサクといえるかも。
最新鋭・専門家の罠
1998年7月、和歌山市園部で起きたいわゆる「和歌山毒物カレー事件」は連日ワイドショーを賑わし、怪しいと見られた林眞須美氏がカメラマンに向けてホースの水を撒く映像は繰り返しテレビで流されました。そして、ふてぶてしそうに映るそのイメージから「こいつが犯人に違いない」の決めつけが国民の間に定着して行き、やがて逮捕・裁判の結果、2009年に最高裁で彼女の死刑が確定しました。本作は、彼女が本当に犯人だったのかを一から再検証したドキュメンタリーです。一部の関係者の間では「彼女は冤罪なのではないか」という議論がかねてからあったのだそうですが、僕は全く知りませんでした。
当時の目撃証言の矛盾点・曖昧さ、物的証拠の弱さが一つ一つ指摘され、「へぇ~、そうなのかぁ」と驚かされる一方で、作中に登場する林家の家族の証言、特に、妻の眞須美氏にヒ素化合物で殺されかけたとされる夫の健治氏の語りには「なんじゃこの人?」と度肝を抜かれ、真実が一体どこにあるのか分からなくなってしまいます。そういう意味では非常によく出来た推理劇・法廷ドラマの様に「楽しめてしまう」のでした。
その様に、本作は非常に多層的な構造を有しているので一言で語り辛いのですが、僕が一番驚いた点を一つだけ挙げておきます。林眞須美氏の有罪を決定付けた物証として、林家の台所にあったシロアリ駆除用容器の亜ヒ酸と、カレー鍋の傍に捨てられていた紙コップに付いていた亜ヒ酸が同一物だという分析結果が挙げられていました。それには当時最新鋭のspring8 と呼ばれる大型の分析器が用いられ、新聞・ニュースでも大きく取り上げられました。僕もよく覚えているのですが、
「ええ?両者が同一物と証明できたと言う事は、台所にあった容器に含まれる微量添加物や配合物が亜ヒ酸に僅かに混入し、それが鍋の傍の紙コップからも検出できたと言う事なんだろうな。そんな物まで分析できるなんて、さすが最新鋭機はすごいな」
と驚いたものでした。ところが、それは全く違っていたのです。あの分析で判明したのは、「どちらも中国産亜ヒ酸である」と言う事だけだったのです。この映画を観てから改めて調べると、日本で用いられる亜ヒ酸の多くは輸入品で中国産が最も多いのです。だから、この分析結果は「どちらからも、最も一般的なヒ素化合物が検出されました」というだけで、これだけでは何ら決定的証拠になり得ないのは明らかです。せめて、林家の台所以外に和歌山県内には中国製亜ヒ酸はないと言う程度の検証は必要でしょうが、そんな調査は一切行われていません。
本作を観ても「彼女は冤罪である」とまでは言えないかも知れませんが、何人も疑う余地のないほど明らかに彼女の犯行であるとはとても思えませんでした。「疑わしきは被告人の利益に」は現在の裁判の大原則でしょうから、再審が認められるべきだと思います。
わかったことと新たな疑念
事件が起きた当初から、夏祭りで出すカレーにわざと毒を入れる人なんているのかしら、という疑問があった。ある時期に、様々な冤罪事件を取り上げた小さな映画会で、林死刑囚のことも含まれていることを知り、まだ冤罪の可能性が消え去ったわけではないと知った。本作で、どのような事実経過が明らかになっているのかを確認してみたかった。しかし、亜砒酸の最初の検査傾向は明らかにされているが、異議を唱えた研究者の調査結果が不明瞭に感じられた。夫の保険金詐欺事件の実態を知って呆れた。そこはそこで罪を償うべきだと思った。娘の心中事件には、配慮が必要だと思った。監督の取材での対象者とのトラブルの顛末を描いたのは、正直ではあるけれども、不安を感じる要素ともなった。
脆弱な基盤
林死刑囚が犯人という証拠は存在せず、あくまで状況証拠の積み重ねで死刑判決が確定しているが、その状況証拠もかなり危うい土台の上に乗っているというのが趣旨でしょうか。
・目撃証言は毒を入れたことまでを示すものではない。
・カレーに混入されたヒ素が林家にあったヒ素であるという同定は単に「組成が同じ」であるという理由でなされたに過ぎず、広く同一商品が出回っていたことを考えるとほぼ証拠能力はない。
検査をした某教授も同一組成のものであると指摘したに過ぎず、さらには、その同定の仕方そのものへの学問的批判も他の研究者から出ている。
真須美死刑囚の夫の健治氏は恐らく生い立ちのせいもあって生きることに自暴自棄な側面があり、それが保険金詐取につながり、「証拠はないけど怪しい」とマスコミだけでなくそれに影響された警察・検察までを動かしているという印象。
人間としてクズだから冤罪で死刑になっていいなんてことはない。このドキュメンタリーの意義は人物を美化せず、そこを訴えたことにあると思いますよ。
それが分からず、「こいつらクズじゃねーか」で思考が止まっている書き込みがチラホラありますけど、これは事件当時にマスコミがやったこととそっくり同じですね。
保険金詐欺の件ではモヤモヤするところも
ドキュメンタリーということで想像していたよりテンポよく、先が気になるような構成の仕方で見やすかったです。
挿しはさまれる花や風景の映像も印象的でした。
この事件に関する報道をリアルタイムでテレビで見ていた世代です。
冤罪を訴えていることについてはなんとなく聞いたことがあるという程度で、鑑定内容についての見解など具体的な主張はこの作品で知りました。
カレー事件の判決について疑問が生じるのも納得で、再審すべきではと思いますが。
過ちを認めようとしない検察などの権力や、マスコミ(現代ならSNSでしょうか)が煽る空気の怖さを感じます。
保険金詐欺の件については、あくまで夫側からの見方なので、被害者が本当に納得ずくだったのか、借金などで断りにくい力関係があった可能性も否定できないのでは、とも考えてしまいました。
夫の言う通り仲間として共謀していたのかも知れませんし、他に居場所がなく寡黙で下に見られていたらしい被害者は逆らえなかっただけかも知れませんし、これを見ただけではなんとも。
なので、被害者宅を訪問する場面はなんだかモヤモヤしてしまいました。
作品としては、ジャーナリストの見解からも、仲間だったけれど検察の誘導により加害者被害者ということにした、という主張のように見受けられます。
印象操作のために検察が誘導したというのはあるとは思いますが、被害者の本心がどうだったのかが分からないので、この部分はなんとも…
これは司法に対する訴え?
この映画を語るうえで、まず有罪か無罪かは別問題にしよう。公平な視線で語りたいと思う。
同じ劇物を使った無差別殺傷事件としてニュースにも取り上げられた名張毒ぶどう酒事件が、和歌山の毒物カレー事件に発生していて、これは女性が飲むぶどう酒に農薬として使われるニッカリンが含まれていたことで、犯人はぶどう酒を飲まない男性だと特定され、比較的被害が少なかった会に当時愛人がいたo氏に疑いの目が向けられると犯人として逮捕されてしまう。
同じ事が言えると思う。
保険金詐欺ばかりを繰り返し夫の犯罪の片棒を担ぐ形で悪徳に金を巻き上げていたことを当然ながら警察は知っているし、犯罪のやり方が同様だと気づけば怪しまれるのは致し方ない。
しかし、海外の女性のシリアルキラーに目を向けてみたら、女性のシリアルキラーの特徴としてあげられるのが、犯行を犯した理由の殆どが金銭目的だ。また同時にカップルキラーというように、夫またパートナーの犯罪の片棒を担ぎ犯罪の道に手を染めてしまう。
林被告は典型的なカップルキラーの事例の一つであろう。夫と結婚するまでは何不自由なく生活をしていたのだろうけど、無知すぎるがゆえに悪の道に染まるのはあっという間だったのだろう。
だからこそ、金銭目的ならば無差別的に鍋にヒ素を盛ったとは考えられない。そのうえ、動機が見えてこない。事件の内容は、地域会における狭いコミューンにおいての怨恨とみるのが妥当だが、林被告に果たして恨み節などあったのか?
映画を通し確かに動機が見えてこないのは不審に思った。しかし、疑問に思ったのがその当時はどこでもヒ素購入の規制がゆるいために買えた、どこの家庭にも白アリ駆除のためのヒ素を持っていたという証言があるが、誰の証言?
犯人は逮捕され、事件は解決した。
疑わしきは罰せよ。
それが地元の考えならば、事件のことはもう思い出したくないということであって、部外者が了解得ずズカズカと強硬的な取材は通報される原因に繋がるのは分かるはずでは?熱意は伝わるが余りにも取材対応が大人じゃない印象を受けた。
登場人物が全員クズ
心からかわいそうと思ったのは無理心中をした長女とそのお子さんたちのみ。
あとは監督含めて登場人物全員クズぞろい。
私の中には相反する考えがあって
・法治国家なんだから「疑わしきは罰せず」、証拠がないなら疑わしいだけで罰してはならない
・胡散臭い、ほかに犯人はいない。だったら罰しろ
映画を見るまでは前者の方が意が強かったが、映画を見た後では後者寄りになってきた。
笑いながら「ヒ素のんだだけで簡単に1億5000万も手に入った」と保険金詐欺を井戸端話のように飄々と話をする父親。平凡な人間には及びもつかないネジの外れた家庭が林家だったということは間違いない。「それとこれとは別、どんな倫理的に劣っていた家庭であっても、証拠がないなら死刑にしてはいけない」と頭の中の理想ではわかっているが、映画を観終わって「こんな狂った人たちなら死刑でもしょうがないわ」って思う自分がいることにびっくり
当時の裁判官や判事をインタビューで追い回す意味が全く分からない。意見をプライベートで話せるわけがない、当たり前だ。それをしつこく追い回す時点で犯罪犯してんのはあんたらやろ、って思ったら、監督自らGPS装置を対象者につけるために住居不法侵入という罪を犯している時点で呆れた。
鑑定はあくまで科学的に同じかどうかを調べただけで、ほかにも使われるものがあったのかどうかを調べるのはあくまで警察の仕事。ヒ素を鑑定した理科大の教授の言うことは全く持って当たり前の話、鑑定人は言われたことをしただけで判断や捜査は警察の仕事。
あたかも新しい証拠が出てきたかのようにいっているが、袴田事件とは全く別物。そんな画期的な証拠が出てきたら再審の道は開けるだろうに全く相手にされていない点でその程度の証拠。ああ、何かの陰謀説で再審請求が却下されているんでしたっけ?
あの当時のマスコミの騒ぎっぷりはすごかったし、この映画を観るまでは「もしかしたらきちんとした証拠がないのかも。だったら死刑にしてはいけないのでは?」と思っていたが、映画を観終わってあまりに偏った意見なので、かえって「死刑でもしょうがないのか?」と思わせる、ある意味私には逆効果な映画となっております。
文句ばかり言っていますが、犯人ではないという世間一般とは真逆の意見をしっかり聞けたという点では有意義な映画でした。これも偽らざる気持ち。
平日の昼間に鑑賞にいきましたが、映画館がほぼ満席でびっくり。観に行っておいていうのもなんですが、そんなに関心がある人いるのか?って思いました。
ドキュメンタリーは猛獣使いと似ていて
「 奥崎謙三 」や「 佐村河内守 」といった近所にいたらお付き合いしたくない猛獣をいかに「 いなす 」 かが監督の力量を問われるのだが、今回の猛獣は林真須美の夫の健治だろう。
保険金を貰う為に自ら砒素を飲んで、その保険金をいくらせしめたかをカメラの前で堂々と語っているとこは天晴れで、せっかく顔をモザイクで隠している林真須美の長男がいくら語ろうとも、健治親父の詐欺自慢の前では霞んでしまう。もう、こいつが主役でいいじゃん?
林真須美が冤罪だという噂は昔から聞いていたが、目撃者の証言がかなりいい加減で、砒素が検出された鍋とは違う鍋を触っていたのに犯人に仕立て上げられて、家には落書きされまくりで更に放火をされて家が全焼してしまう。気の毒としか言いようがないですな。
宣伝文句になっている
「 監督が一線を越えてしまう」
というのは、どんな過激な手段を取るのかを楽しみにしていたが、
「 インタビューをする相手にGPSを仕込んで住居不法侵入をする 」
というゆるゆるの犯罪だったのには拍子抜けしてしまった。ションベン刑ですむじゃん?気にしない、気にしない。
もっと、過激な事を期待してたんだけどなぁ( おい )
近所の人や、被害者側のインタビューが殆ど出来なかったのは残念。カメラ回ってないとこで本音を語ってほしかった。実際、隠し撮りしてるシーンがいくつかあったんだから、もう少し粘らないと?
都心部では大入り満員の劇場もあるそうだが、自分が見た回は平日にしては多い方でしたね。
youtubeでさんざん長男が語っていたので、事前知識が無い状態で見れなかったのは残念。
とはいえ、この映画で林真須美死刑囚が冤罪を訴えているという事を初めて知る人もいるだろうから見る意義のある映画かと思います。
KBCシネマでは週末に監督のトークショーがあるのでお近くの方は行く事をお勧めします。
目新しい情報はなく断片的。加害側の意見を伝えるための作品。
多角的に検証したドキュメンタリーと宣伝されていて気になっていた。
期待はずれだった。ストーリー性がなく断片的。
現場住民の方は取材を断っていて被害者側は被害者の会の人が1人しかインタビューに出ていないのに対し、死刑囚・加害者家族側は弁護士や研究者、ジャーナリストなど錚々たるメンバーがインタビュー出演していて、バランスが中立とは思えなかった。加害者家族の出演時間も多かった。
盗撮シーンが多いのはドキュメンタリーでは普通なのか。そのあたり詳しくないが、これを上映して隠し撮りされた人たちから怒られないのか見ながらずっと気になった。
加害者家族の全面協力で冤罪だと思わせるために作ったというのは十分理解できる。冤罪だと思っている方々からしたら、反証は甘いが訴えかけるという意味においては素晴らしい作品だろう。
目新しい情報はなく事前予告されていた「この映画はスクープだ」とは思わなかった。
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