「矛盾は生じるが、スカーに掘り下げようという意図は買う」ライオン・キング ムファサ 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
矛盾は生じるが、スカーに掘り下げようという意図は買う
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バリー・ジェンキンスがオリジナルの『ライオン・キング』をどう捉えているのは知らないが、この前日譚は現実的な要素を取り入れることで、オリジナルに抜け落ちていた部分を補強する試みに思える。なぜスカーは安っぽい悪役(しかし悲哀がある)なのか? 強権的な世襲制の君主にみえたムファサは、いかにして王になり、いかにして国民(動物だけど)の信を得たのか? 育てられ方の違いはどれだけ人格や価値観に影響を及ぼすのか? 勇気とは、愛とは、嫉妬とは? いささか短絡的な物語だった『ライオン・キング』に奥行きを与えようという気概はわかるが、そもそもが短絡的すぎて、どうしてもムリが生じる。そのムリを押してでも、スカーを卑怯で臆病でムダに自尊心をこじらせている(だが共感の持てる)一人格として描こうという姿勢には好感を持つが、どうしてもオリジナルの『ライオン・キング』に繋がることで、強引さやムリ押しが目立ってしまう。気持ちはわかるが失敗作なのか、失敗覚悟で挑んだことに意義があるのか? 正直、まだ評価を決めかねているが、嫌いにはなれない。
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