「イラン テヘラン 聴かせて 政治情勢」聖なるイチジクの種 梨剥く侍さんの映画レビュー(感想・評価)
イラン テヘラン 聴かせて 政治情勢
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イランというのは不思議な国で、強権的な体制で国民を抑圧しているイメージが強いが、映画界に目を向けるとアッバス・キアロスタミやアスガー・ファルハディといった逸材を生んでいる。確かに彼ら以外は(本作の監督を含め)国外に流出している例も多いが。ファルハディなど必ずしも国家観に沿った作風とも言えないように思うけれど。
この映画はヒジャブ着用をめぐって拘束後死去した女性に端を発する反政府デモを背景に、ある家族にじわじわ迫りくる閉塞感を描いている。アスペクト比の異なる画面は実際の記録映像と覚しい。父親が裁判所の調査官という言わば為政者側に属しているのが、とりわけ状況を複雑にしている。八方ふさがりの家族を襲うジレンマに、見ている方もずっと胸が押しつぶされる思いだ。
ところが一転、テヘランから脱出した後はにわかにぐだぐだな展開となり、銃の顛末もあまりにも肩透かしで、廃墟の追っかけっこのくだりは取ってつけたような。これで終わられても、残された家族もただでは済まないだろうし、あとは地獄の日々が待っているだけのような気がする。
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