雨の中の慾情のレビュー・感想・評価
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福子の魅力が半減してしまう、脚本の欠陥とは
つげ義春先生の原作は未読です。ねじ式とか、他の作品は何作か拝見したと思いますが、あまりに良い意味で支離滅裂(笑)、そしてシュール過ぎる作風からか話の筋が全くというほど記憶に残っておりません。もしかしたら深層心理の奥のほうに刻まれてるのかもしれませんけど。
今作は冒頭の雨宿りのシーンから品の無い欲情映像全開でいったいどんなエロが展開されるのか大変興味が湧きましたが、そこからつげ義春テイストが徐々に発揮され不条理でありつつも映像が落ち着いていきます。
台湾ロケとのことですが昭和の戦中戦後を思わせる様な気怠い退廃的な空気が再現されており、音楽も古風かつロマンチックで作品世界に非常にマッチしていたと思います。
もともとつげ義春先生の漫画作品を言うほどエロいとか女性キャラが美くしいなどと思ったことはほとんどありませんでした。しかし、今作では福子を演じた中村映里子さんが綺麗な裸体を惜しげもなく披露しつつ妖艶かつ謎めいたキャラクターを全力で演じられており、エロ度と女性的魅力がかなりブーストされていた印象です。本当に素晴らしい役作りをされたと思います。ついついファンになってしまいました(笑)。
夢なのか現実なのか、はたまた欲望の妄想なのか分かりませんが、登場人物の設定やら場面設定やら時間軸などが目まぐるしく変化していく中で、常に主人公が惹きつけられる女性として福子が描かれます。福子に対する主人公のねじ曲がった愛情や欲情、嫉妬や執着、それらが静かに腹の底で黒くグツグツ煮えてる感じがしてとても良かったです。
ただ、前述の場面や人物の設定の変化があまりに頻繁で、映像に対しての集中力がその度にどんどん削がれるというなんとももったいない脚本の欠陥があったのも事実でした。
「え、またこれ?なんかしつこいし長いなあ」と正直思いつつ、福子の濡れ場だけはしっかり凝視してしまった自分が悲しいです・・・。
では。
総督府エレジー
朝鮮総督府時代から朝鮮戦争と台湾総督府の面影のあるロケ地で昭和エレジーを見事に彷彿させた。
台湾だからあの明るさと開放感があり、日本的な面影もあり韓国とも違う軽さがあり心地よかった。
ストーリーは、まるでクリストファー・ノーランのように、場面がピースパズルの様に時系列を超えて、夢と妄想を織り交ぜながら大日本帝国による激動に翻弄された敗戦者の儚いファンタジーに仕上がっているが、本当はエレジーだよね。
最高のロケ地とカメラアングル。
そして、義男を成田凌、福子を中村映里子、伊守を森田剛、尾弥次の竹中直人は実に見応えのある演技だった。
それにしても映里子さんの妖艶さには恐れ入りました。特にダンスが素敵でした。
惜しむらくは、映画の題名が日活ポルノのようで恥ずいです。
( ^ω^ )
雨の中の慾情
劇場公開日:2024年11月29日 132分
「さがす」「岬の兄妹」の片山慎三が監督・脚本を手がけ、漫画家・つげ義春の同名短編を独創性あふれるラブストーリーとして映画化。
ほぼ全編台湾でロケを敢行し、2人の男と1人の女の切なくも激しい性愛と情愛を描き出す。
貧しい北町に住む売れない漫画家の義男は、アパート経営のほかに怪しい商売をしている大家の尾弥次から、自称小説家の伊守とともに引っ越しの手伝いに駆り出される。
そこで離婚したばかりの福子と出会った義男は艶めかしい魅力をたたえた彼女にひかれるが、彼女にはすでに恋人がいる様子。伊守は自作の小説を掲載するため、裕福な南町で流行っているPR誌を真似て北町のPR誌を企画し、義男がその広告営業を手伝うことに。
やがて福子と伊守が義男の家に転がり込んできて、3人の奇妙な共同生活が始まる。
義男を成田凌、福子を中村映里子、伊守を森田剛が演じた。
「ドライブ・マイ・カー」の脚本家でドラマ「ガンニバル」でも片山監督と組んだ大江崇允が脚本協力。
2024年・第37回東京国際映画祭コンペティション部門出品。
雨の中の慾情
劇場公開日:2024年11月29日 132分
長い…
往年の日活なら85分で仕上げただろう。
夢現
不思議な苦痛を味わう
時系列もバラバラで、なんだなんだ?と意味がわからないままエロティシズムな幻想に付き合わされながらも、不思議と置いてけぼり感がない映画。台湾との合作と知ってなるほど、と腑に落ちました。日本とは違う世界観だからこそ幻想空間への誘いが自然だったような気がします。主人公の義男(成田凌)が戦争のさなかに片腕を失ったり、恐怖や苦痛で意識を失い狭間で見ている夢の中のお話、、だと思います(合ってる?)肉片が飛び散る現実を目の当たりにしながら、自己防御のために夢の中では恋愛だったり、エロだったり、ドラマティックな罪を何度も犯してしまう気持ちはわからんでもない。ちょっと二回観ようとは思えないけど(^^;成田凌さん含めて森田剛、竹中直人さんなど役者陣たちの濃厚で贅沢に選びぬかれた珍味な陳列シーンの数々を堪能できるのは、この映画ならではのような気がします。
個人の感想ですよ
めくるめくつげワールド
エロス、カオス、うおー、原作を読んだときと同じ感覚・・・だった気がするだけで、実際はどうなのかは怪しいです─というのも原作なんて覚えていないので─でも、わっけわかんね、けどいい・・・いいと思ったのは若かりし格好付けたような思いとかではなく、ホントに良かったんだなぁと、この映画を見てあらためて思った次第。
変な世界をインモラルにぐるぐる回るこの話なんて、まぁ嫌になる人も結構いるんだろうなぁと思いながら見てました、正直・・・何せ出だしからああですからねー。
決して楽しい内容でもないし、出てくる人はみんな嫌な感じだし、行いも色々問題あるし─。それでも、原作で感じる少し色あせた地味な感じとは違って、結構カラフルな印象の映画だった気がします、いい悪いは別として─。
何気に主演の成田凌がハマっていた気がしました。巡っていく世界の中でも、それぞれ役柄がしっかりと変化があって、混乱しそうになるところを、彼の演技で見やすくなっていたような─。他の脇の方々も、台詞回しとか雰囲気とか、見事に世界観に合わせたような感じで、同じように素晴らしかったのですが、その代表者が成田凌だったというところです。
原作を大胆に脚色しながら、原作の良さを失っていないような作品なのかもしれません、といっても、原作の記憶が希薄なので憶測にすぎませんが─。
率直に楽しく見ることができたました。
夢の中の月並みな幸福(しあわせ)
鏡と目。そして、誰かが始めた良からぬことに唆されて、主体性なく後乗り(戦争などでも言えることか?)。別れは、自分の中でその人を殺すこと。ならば、夢の中で逢えたら別れなくていい。性欲から始まった恋も、やがて愛に帰結するのだろうか?市井の人々からこぼれ落ちて、普通の生活ができない人がいること(=そこに一貫した作家主義を感じる)。あるいは、そういう時代が確かにあったこと。
地続きの奇妙ヘンテコさに、テーマなど掘り下げて考え始めると頭の中の理解が追っつかない。この作品で何を伝えたいのだろうか?衝撃のオープニングシーンから、正直全くもってオーディエンスフレンドリーな内容ではないので、観客ウケは悪そう。監督の作品はその否定しようのない力強さと鑑賞後に感情や理解の処理に困る作品ばかりの厄介なフィルモグラフィーで、本作もまた見終わった後にああでもないこうでもないと考えてしまうが、今までのそれとは毛色が違うことは確か。
監督だけの予定だった舞台挨拶にサプライズ成田凌!台湾ロケありきの企画だったとは。
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