「人間の営みの喜劇性」雨の中の慾情 HKさんの映画レビュー(感想・評価)
人間の営みの喜劇性
愛の映画でありながら、それに絡めて戦争を美化したり、悲劇一辺倒に描いていないのが新鮮で素晴らしかったです。
どんなに厳しい追い詰められた極限状態にあっても、
慾情に揺さぶられてしまう滑稽さ(喜劇)が同居しているのは、
リアルな人間像だと感じました。
美しい配色の画面、
切れ目なく舞台転換するカット、
時間軸も含めて夢と現実が頻繁に交錯する構成、
そしてなにより、たくさん出てくる戯画的、幻想的な表現が
映画の世界観と適合して、強く心を揺さぶられました。
ラブシーンも変な艶っぽさは少なく、
ときに戯画的で、本能にしたがう動物的な大らかな表現が印象的です。
全体に癖の強めな、少し不快感さもある濃厚な表現の中、
夢に溺れそうな状態で観ていましたが、
成田凌さんの一服の清涼剤のような爽やかさに悲しみ(雨)や純愛が現実であってほしいと強く思わされました。
映画表現の潜在力をまざまざと見せつけられた時間でした。
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