WALK UPのレビュー・感想・評価
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シンプルな構造に滲む語りのマジック
いつもながらのホン・サンス映画といえるし、でも、翻って考えると彼ほど「いつも」という言葉が意味を持たない監督は他にいない。彼の映画は大抵は二人か三人が織りなすシンプルな方程式であり、あるいは固定カメラと長回しの会話劇。本作でもその特徴を踏襲しつつ、かと思えば、小さな4階建てアパートを上へと昇っていく。昇るたびに、時制と関係性は微妙に様変わり。作品の要となる「映画監督」という役どころはいつもながら、側から見ると尊敬すべき豊かな人間のようでいて、実のところ情けなく、だらしがない。本人も自分の性根に気づいているのに、もはや流れる川のように、どうすることもできない。すなわち、彼らは昇る。それに合わせて、我々は主人公の心をズンズン降りていく。そうやって彼という人間を深く知る。その上、章が変わると「あれっ?」という展開がじんわりとにじむ。ほら、いつもどおり。我々はホン・サンス映画の魅力と沼に抗えない。
何にもないようで、味わい深い
ホン・サンスの心地よさは、一種の気まずさが絶妙に織り込まれているからなのかもしれないな。時に野菜を食らい、時に肉を食らい……男女の空間に微かに漂う老い。成熟さの中にちゃんとダメさがあるのがホン・サンスらしい。示唆しているようで単なるおふざけっぽいのも。
ちょっと変わった?
モノクロ撮影の固定カメラによる長回しを多用し、特別な波乱のない物語を淡々と撮るというスタイルは毎度変わらないのに、心の裏側をくすぐる様な味わいにまんまとして遣られ、公開毎に足を運んでしまうホン・サンス監督の新作です。
自身の分身と思しき映画監督はこれまでも作品中に度々登場していましたが、これほど物語の中心となる作品は初めて観ました。そのせいなのか、カッコ付ける場面は勿論、自身の弱さすらをも男の魅力に見せるが如き撮り方が目に付き、「狡いなぁ」と感じてしまいました。ホン・サンスはもっと突き放したドライさが持ち味じゃないのか。彼に何かあったのか? それとも、何かあったのは僕の方なのか?
【今作は、いつものホン・サンス監督の自身の姿を反映させたかの如きモノクロ会話劇と思いきや、そのスタイルは踏襲しつつ、一捻りさせた不思議な作品構成に驚く作品である。】
■有名な映画監督ビョンス(クオン・ヘヒョ)は、5年振りに戻って来た娘のジョンス(パク・ミソ)と旧知のインテリアデザイナー、ヘオク(イ・ヘヨン)を訪ねる。
ヘオクが家主のアパートは、地下がヘオクの作業場、1Fがレストラン、2Fが料理教室とレストランの個室、3Fが賃貸住宅、4Fがアトリエになっている。
そして、物語は各階ごとに独自の展開をして行く。
◆感想
・序盤は、いつものホン・サンス監督の自身の姿を反映させたかの如きモノクロ会話劇で始まる。
有名な映画監督ビョンス(クオン・ヘヒョ:ホン・サンス監督の超常連)は、娘のジョンスの願いでと旧知のインテリアデザイナー、ヘオクを紹介し、娘をヘオクの元で勉強させることが決まる。
ー このシーンは、いつものように登場人物達が、酒と食事を摂りながら会話を交わす姿を固定アングルで撮影している。だが、ここから物語進行はねじれて行くのである。-
・ビョンスが”ちょっと、知り合いの映画監督から呼ばれたから。”と言って姿を消す所から、シーンはビョンスが2Fで知り合ったレストランの店主ソニ(ソン・ソンミ)と3Fの賃貸住宅でちゃっかり同居しているシーンに移る。
そこでも、二人は会話しながら菜食の食事をしている。
・次は4Fのアトリエで、不動産業のジヨン(チョ・ヨニ)が通い妻の如く、テラスでビョンスと肉を焼いて食べている。そして、ジヨンは、彼のために朝鮮人参の蜂蜜漬けなどを健気に持って来るのである。
そこに、ヘオクが序盤とは打って変わったかのように、遣って来て1Fで喋っていた”4Fの人は良い人なんだけど・・。”と言う言葉の如く、呆れた顔でやって来るのである。
<今作は、序盤のいつもの会話パターンから、ホン・サンス監督が縦長のアパートメントの各階ごとに、微妙に連関した物語を構成した作品である。>
<2024年8月11日 刈谷日劇にて鑑賞>
トイレの音が上の階とかぶった つぶやきシロー
【鑑賞まえの予想】
四階建てで起こる珍事件の映画らしい。
うちのアパート(三階建て)でも、住民のすったもんだは たびたびなので、どんなものかと鑑賞を決めました。
興味津々ですね。
戸建てにも「お隣さん問題」はあるし、
階層建てにも、入居者同士の独特のトラブルは起こるんです。
タワマンのマウント闘争ならずとも、
上の階と下の階とで
「物理的な上下関係」が「メンタルな上下関係」に影響を与え合うわけですよ。
本作品の目の付け所が面白い。
シチュエーションが「四階建て」というこぢんまり感が、既視感もあってリアルだからだろうね。
「パラサイト 半地下の家族」では、山の手の豪邸と下町の低層住民の対立を、地形の標高とソサエティを重ねて魅せてくれた韓国ムービーでした。
今回はそこをギュッと凝縮しての四階建てストーリーらしいです。
さて、どんな物語を展開してくれるのでしょうか。
・・・・・・・・・・・・・
【ドン引きの映画体験】
しかーし!!
「ホン・サンスという事件」は
評判も興行収入もどうでも構わないらしく、
売れない映画監督=主人公の引きこもりを長々と見せてくれましたね。
こんなに長く感じた映画も 僕は初体験でして、つまり、固定カメラで「延々とテーブルを挟んだ会話シーン」だけの実験映画です。
この日の気温は35℃、
やっと涼しい館内に腰を下ろし、照明が落とされると スクリーンでつまらない会話劇を見せつけられるという趣向。
寝落ちして目が醒めても、安定の 「あいも変わらずさっきと同じ光景」が流れています(笑)
監督のボヤキと、女たちの退屈しながらも煮えきらずにワインに付き合う光景だけが、無限に続くわけでね。
でもこんな面白みにも気付きましたー
女たちは勝手にドアを開けて(暗証番号を押して) ずかずかと自分都合で入室して来るし、
また自分都合で、女たちは仕事や、用事や、友人とのお茶のために 外の世界と行ったり来たりをするのだけれど、
監督の男だけはこの四階建ての小惑星から足を踏み出せない。
階段を登って上階に幕が移動すれば、こんな彼にもなにがしかの変化があるのでは!と観ている僕の激しい欲求にも関わらず、
わずかの期待は全て裏切られて振り出しに戻る結末とは・・
呆れ。
堕ちた星の王子さまが、様々な女たちにしだれ掛かりながら、次の来訪者を待つ。
それだけの97分でした。
・・・・・・・・・・・・・
【退屈という魔法】
で、
館内では、10数名ほどのお客さんが爆睡しているのが可笑しくって、そこを狙った催眠映画なのだと気付いた時はもう遅かった。
中途退場者続出。
エンドタイトルが流れると、肩を怒らせて大股で席を蹴るお客さんの列。
僕としてはホン・サンスはもう観ないとは思うが、一生忘れない作品になった事だけは確かで、
首を振りふり家路につきました。
ちなみに、
うちのアパートは三階建て。
階段が割と急なもので、えっちらおっちらと 訪問者の皆さんは登っているうちに何か錯覚をするらしくて
二階の僕の部屋のドアをノックしてくれます。
早朝、
「ちょっと!起きてんのか?」
「いるんだろ」、
「ドンドンドン!! 」だ。
(上の三階に寝坊すけの土方が住んでいるのです w)。
集合住宅では、漏れ聞こえる騒音問題も鬼門ですよね。
スピードラーニングを買ったら、1年後にはアパートの住民がみんな英語ペラペラになっていたという笑い話もありますねからね😁
確かにここは小世界の小宇宙です。
上映中はあんなに苦痛だった白黒映像が、帰途、小さな思い出し笑いと共に、不思議な後味になって蘇る・・
ハチミツ漬けの朝鮮人参は あとから来ます。よーく噛めと。
ホン・サンス、恐るべし。
ホン・サンスの会話劇炸裂!
主人公の映画監督のいい加減さ&ダメな感じを
会話劇で終始描き切っているのがが面白いです。
主人公がフロアを上がると付き合っている女性が変わっているのですが、
その時間軸とかよくわからないですし、
ラストの娘がコンビニから帰ってくるシーンには驚きました。
最初のシーンでいなくなったと思ったら、そうくるか!と。
ホン・サンス作品は『小説家の映画』で面喰いましたが、
それ以来気になる監督として、今回2本目にチャレンジしました。
観るたびに中毒になりそうな気がしております。
次作もきっと観ると思います。
ドラマでよく見る俳優さんたちで、 似たような前の映画がダメだったの...
ドラマでよく見る俳優さんたちで、
似たような前の映画がダメだったのに、
つい見てしまう
着いていきたいのに着いていかれない映画
ワイン飲みたくなる
一つの建物、登場人物5〜6人、ルームツアー映画という新ジャンルかとも思った。そして特に何も起こらないのだが、同じ空間なのに謎に擬似的オムニバス。時空と人間関係がループ構造になって終わる。白い壁の涼しい部屋で白昼夢を見たような気持ちよさ。ところで韓国人て、あんなにワイン好きなのか、自分も混ざりたくなってしまう。
結局ひとりが気楽でいいんだよね、という低体温の人間には納得しやすいトーン。皆んな言葉では言いたいこと言ってるけど、人物のアップは全くなく表情すら希薄。表現のキモは人と人との「距離」なのかな。
肩透かし隔靴掻痒的脱力系映画で、モノクロ映像の中には凝った設えが施されていてときめく、紛れもないアート作品なのであった。
夢を見させる建物
映画監督のビョンスは娘のジョンスを連れて旧知のインテリアデザイナー、ヘオク所有の建物を訪れる。机を挟んで三人の会話劇が続いていく。ビョンスのスマートフォンが鳴り彼は打合せのため中座する。その後ジョンスとヘオクがビョンスの話で盛り上がりジョンスはヘオクに仕事を教えてもらいたいと懇願する。ジョンスはワインがなくなり外に買いに行く。
ビョンスがまたヘオクの建物に来る。そして1階、2階のレストラン店主ソニが加わり三人でワインをしこたま飲みながら会話が続いていく。会話の途中でビョンスが映画製作のことで憤りを発散したり、なぜかソニは泣き出してしまう。二人が自然に自分の感情をあらわにできる二人のフランクさが、バルコニーでタバコを吸うビョンスの笑顔に象徴される。
前述した二つの挿話はまだ連続性がある。時間が現在から未来へ通常通り流れている。しかし、三つ目の挿話に入った時、時間の連続性が断絶されていて見る者は戸惑う。映画を短編集としたら納得すると思いなおして見続けた。
三つ目の挿話のストーリーの前半は理解可能だ。二つ目の挿話でビョンスとソニの関係性を見ていたから。しかし三つ目の後半と四つ目の挿話はまったく時間の連続性がなく、ストーリーの脈絡を追いかけようとしても理解不能なのだ。
映画にそもそもストーリーの脈絡が必要なのかと疑念がわく。映画館に入りまさに夢を見ることも映画的体験だ。ホン・サンスの描出する映像と会話は、まさに見る者に対して夢体験を提示したのだ。ファーストシーンとラストシーンの車とジョンスの態度と口のききかたがまるで違い、驚きしかない。真実と夢、その境界も判然としない。建物に入った時、夢が始まったのか。
夢は地下一階、地上四階の建物が見させている。映画の進行とともに、地下一階、二階、三階、四階と四つの挿話で階数が変化していく。見る者は地下一階から徐々に上の階に歩いて上がっていき、そこで繰り広げられる会話劇をお馴染みの長回しで見せつけられる。まるで建物の上階に上がっていくうちに徐々に深い夢の世界に入っていったようだ。
ジム・ジャームッシュっぽい。
この監督は以前『小説家の映画』を観てて、それ以来2本目だけど、やっぱりジム・ジャームッシュっぽいよな…と。
4階建てのアパートを舞台に描かれる芸術家たちの人間模様って事ですが、
結構どうでもいいような話を、モノクロで雰囲気だして、オシャレに装飾して、もろジャームッシュっぽい。
オフビートな感じ(笑)
ゆるい会話の中にも刺さるセリフがありまして、映画監督が純粋な芸術性と商業的な成功の間で発するセリフが良かった。
映画スコアは、60点ぐらい。
これぞ真骨頂
2022年。ホン・サンス監督。国際的に活躍する映画監督が娘の就職の世話を頼むためにインテリア・デザイナーを訪ねる。こじんまりした4階のビルの大家でもあるデザイナーと、そのビルで小さな食堂を営む女性を交えて会話が進行するうちに、監督がそのビルに住むことになって、、、という話。
何気ない会話がそれぞれの人生の機微に触れ、関係が変わっていく。これぞ監督の真骨頂の会話劇。音楽をきっかけに時間経過が示され(ほとんど同じ絵柄なので会話によって後からわかるのだが)、最後には時間がループしたかのような構造。要するに、起承転結のストーリーではなく、会話を描きたいのだ。そしてそれは大いに成功していると思われる。当初は監督に対して敬意に留まらない個人的な感情を抱いていたように見えるデザイナーの大家が、監督が映画を撮らずビルの一室で食堂の女性と同棲するようになると、言葉の端々に嫉妬交じりの冷淡さがにじむあたり、うまい。
自分には合わなかった
好きなレビュアーの評価も高かったので
同監督の作品として初めて見たが、残念ながら合わなかった。
雰囲気はよく、目を凝らしていたが、途中と肝心なラストで寝落ちしてしまった。。
階段を登ると世界線が変わる”一炊の夢”
題名の「WALK UP」の言葉通り、階段を段々と登っていく映画でした。そして階段を登るたびに時空が歪むのか、同じ場所なのに別の世界線に移動しており、穏やかなギターの調べと白黒映像という舞台装置とは対照的に、不思議な世界を体験したという感じがした作品でした。
コロナ期間中の韓国のお話なので、まさに現代劇ではあるのですが、敢えて白黒で撮影し、(実際は普通の建物なのかもしれないけど、白黒で撮影しているためか)石造り感のある建物の室内が主な舞台であったこと、ギターの柔らかい音楽が所々で流れること、時間の流れがゆったりとして、どこか幻想的な印象があったことなどから、50年くらい前の南欧の映画なんじゃないかと錯覚させられた作品でもありました。
そうした舞台装置と、階段を登る度に世界線が変わる展開から、実は全て夢の中の話なんじゃないかと思えてきて、狐に鼻を摘ままれた感もありました。まあ悪く言えば、意味不明と言えなくもないものの、”一炊の夢”の故事が思い出されもし、中々味わい深い作品でした。
韓国映画というと、派手なアクションと後半の大爆発が定番と思っていましたが、こんなに静かで、それでいて目が離せない展開の作品に出会えるとは思えませんでした。
そんな訳で、本作の評価は★3.5とします。
ホン・サンス監督作品ではこの作品が好み
ホン・サンス監督作品は3作品目。逃げた女、小説家の映画は個人的に物足りなさを
感じワースト作品としたが、今回、この2作品よりは良かった。
クォン・ヘヒョの演技は素晴らしかった。アパートの階ごとにあがることに4つの章に
分かれるストーリーはなるほどと唸らされた。予測がつかないストーリーだった。
白黒映像はホン・サンス監督のお家芸で相変わらず。
ただ、ホン・サンス監督の作品を観て思うのはどこか退屈さもある。今回の作品然り。
次回のホン・サンス監督作品を楽しみにしたい。今回はワースト作品にはしません。
好きなんだよなぁ、こういうの。
喜劇ですよね。きっと。
口には出ないけど終止心が
クスクス笑ってました。
時間軸を巧みに操作して、
まるでマンションの階段を
昇り降りするような感覚で
オムニバスのように、
ある男性の一連の
女性絡みのストーリーが
展開していきます。
本当に巧みです。
最初と最後のつなげ方なんて
ニクイですよね。
僕としては監督がベッドに
横たわり「本当は独りが・・・」
のシーンが大好きです。
本作を観て身につまされる男性、
多いんじゃないでしょうか?ww
それほど男ってアホで滑稽ですよね。
きっと、ホン・サンス監督自身が
そう思ってるんじゃないか?と
思います。
特筆すべき点のもう一つ。
脚本、演者すごいです。
全部アドリブに見えるほどの
長尺会話シーンの数々。
どうやって演出してるんだろう?
これがあるから成り立ってます、本作。
苦手な方も多いとは思いますが
僕は本作、好きですね。
飛び切りの連作短編小説集か!!
劇場のチラシに「作家主義」との言葉が目に入った
ホン・サンスの不思議なテナントビルの話。
作家さんの魅力を余すところなく発揮する連作短編小説と思えば、
実に豊かな想像力を我々に喚起させてくれる。
どなたか「ホン・サンス的マルチバース」と書かれていたが、
面白い見方で、それも想像力の膨らむ鑑賞の仕方だ。
これまでの淡々としたリアリズムの形式の奥にこんな表現魔力が潜んでいたのかと、
改めて巨匠だと感心する。
一瞬のシチュエーションや人物の何げない仕草、それを気っっ掛けに
話がシフトしたりジャンプしたり。
見る方も実に勝手な想像力で紡いでいくことができる。
日本でも村上春樹というファンタジーの名手が人気なので、
この作品もきっと多くの心にヒットすると思う。
映画も観客も、実に自由だ!
ホン・サンス的マルチバース?
今週公開作品で唯一、劇場鑑賞を決めたホン・サンス作品。サービスデイのヒューマントラストシネマ有楽町12時10分からの回の客入りはさほど多くはありませんが、割合的には若い方も結構いらしていた印象です。
いわゆるエンタメ作品とは対極と言えるホン・サンス作品。全般会話劇で構成されており、画面上で起こることは多くなく、物語りの展開の大半はその中の会話の内容から想像するだけ。また、その内容もよくありそうな話が殆どだし、どの作品も酒が入るとボヤキや愚痴が止まらなかったり、その場にいない人間を否定的に評したり。ただそれだけの内容なのについつい聞き続けてしまいます。
今作も裏切らない感じで進んでいく中、シーンが変わった「2章」、交わされる会話の内容から間もなく、時間の経過と共に「新しく登場した人」と「そこにいない人」について把握しつつ、徐々にこの後の大きな展開を予想させる雰囲気はオールドスクールな感じかと思いきや…
終演後も「これで終わり?」と戸惑いを感じて劇場を後にしながら、一体この作品をどう理解すれば良いのかと考えた私の結論は「これ、もしかしたらマルチバースということか?」。
こぢんまりとした4階建てのアパートメントという構造物を使い、章ごとに舞台となるフロアが変わった世界線は特に「3章」以降の展開におけるビョンス(クォン・ヘヒョ)周りの状況に対する「この世界観にしてはダイナミックで想像が追いつかないほどの変化」も、実はマルチバースだったということなら納得がいくかも?
なんて、冒頭で「エンタメ作品とは対極」と書き出した私をいい意味で裏切ったホン・サンス。この無理やりな解釈は間違っているかもしれませんが、それでも今回もこれだけ私を楽しませて頂いたわけで、これだからやめられないホン・サンス。次作も楽しみにしています。
だメンズって、なんでモテるの?
ほぼ予備知識ゼロでスクリーンへ。とにかく状況把握が難しく、ただシーンが切り替わるごとにフロアが替わるというのか、絡む女性が入れ替わっていく。
有名な男が好きなオーナー、素の部分を晒しながら酒をあおるうちなんだかいい感じになっちゃった料理人、そして素性はよくわからないけど金満不動産女王と、コロコロと、まさに「花から花へ」だ!
どこに魅力を感じるのか理解できないけれど、一部沼にはまる人種がいるのでしょうか……
不思議な作品でした。けど、嫌いじゃない。
「過去に出会った女たちを列挙してみた」みたいな、モテる男は辛いよにも見えてくる不思議
2024.7.1 字幕 アップリンク京都
2022年の韓国映画(97分、G)
娘のために旧友のアトリエに来た映画監督を描いたヒューマンドラマ
監督&脚本はホン・サンス
原題は『탑』で「タワー(塔)」という意味、英題は『WALK UP』で「歩いて昇る」という意味
物語の舞台は韓国のどこか
映画監督のビョンス(クォン・ヘヒョ)は、娘ジュンス(パク・ミソ)とともに、インテリアデザイナーの旧友へオク(イ・へヨン)の自宅を訪れていた
ジュンスはインテリアデザイナー志望だったため、ビョンスは何かの参考になるのではないかと考えていた
へオクはアトリエ兼住宅に住んでいて、地下が作業場、1、2階は料理人のソニ(ソン・ソンミ)に貸し出していて、彼女は1階をレストラン、2階を料理教室として使用していた
3階は住居部分で、近々住人は出ていく模様で、4階がへオクのアトリエとなっていた
一通り建物を案内してもらった二人は、地下の作業場に降りる
そこから本編が始まり、階を上がるごとに「ビョンスの相手が変わる」という流れになっていた
章立てとまではいかないが、ドアを開ける暗証番号の音で場面が変わる感じになっていて、時間の流れもそこで動いている
地下で娘と話していたところで、ジュンスがへオクに弟子入りを志願するという流れがあったと思えば、次のシーンではジュンスはすでにどこかに行っていて、済州島で民宿の手伝いをしていたりする
いつの間にかビョンスはその建物に住み着いていて、ソニと恋人関係になったかと思えば、へオクの影響でベジタリアンにさせられていたり、最後には不動産屋のジヨン(チョ・ユニ)と同棲していたりする
この時点でソニとどうなったのかはわからないが、ラストではソニの店のウェイター・ジュール(シン・ソクホ)がいるのでまだ開いているように思える
だが、このシーンは時系列的に過去(起点)に戻っているように感じた
このあたりの説明はほぼないのだが、単純に見れば、女性を通じてビョンスがどんな人物がを知るという物語でもあり、さらに女性に影響を受けまくるのが男性という見方もある
これらが現実なのか、それぞれの住人と会ったことでビョンスが勝手に妄想しているのかはわからないが、ちょっと変わった作風になっているなあ、と感じた
いずれにせよ、モノクロ映像なのでカラーで見分けをつけることができず、しっかりと人物の顔と話し方(訳し方)を覚えておかないと、場面が変わった瞬間に「誰?」と混乱するかもしれない
展開はあってないようなもので、ほぼ会話劇なので眠気に誘われるのだが、一瞬でも気を抜くとついていけなくなるので、意外と集中力がいる映画なのかなと思った
パンフレットは超充実していて、話の流れはラスト以外書かれているので、おさらいをするにはちょうど良いのではないだろうか
あくまでも、ホン・サンス監督作が好きな人向けだとは思いますが
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