劇場公開日 2024年9月6日

「シリーズ全体から見えるもの」エイリアン ロムルス R41さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 シリーズ全体から見えるもの

2026年1月2日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

エイリアン:ロムルス(2024)レビュー

1. タイトルの意味と神話の影

『ロムルス』――ローマ建国神話の兄弟の兄。兄を殺して帝国を築いたその名は、血と暴力の象徴だ。本作では、急成長した人間の亜種が母ケイを喰らう場面が、その神話をなぞる。文明の始まりは、必ず野蛮の上に立つ。科学の進歩もまた、血の匂いを消せない。

2. 永遠に繰り返される「知らなさ」

シリーズの呪いは、登場人物が何も知らないこと。エイリアンの正体も、ウェイランドユタニ社の黒い腹も、誰にも共有されない。だからこの型は永遠に続く。ジョーカーのカードのように、エイリアンの種は次の犠牲者へ渡される。恐怖は、無知の中で芽吹く。それがこのシリーズの残酷な美学だ。

3. 植民地の腐臭と逃避

冒頭の植民地は、救いのないディストピア。階級と不正が支配する世界。スターウォーズの影、ブレードランナーの退廃、トータル・リコールの赤い砂のような世界観が混ざり合う。若者たちはそこから逃げ出そうとするが、目指す惑星ユヴァーガは「アンドロイド禁止」という矛盾を抱えた理想郷。理想はいつも、腐った現実の裏返しだ。

4. アンドロイドという冷たい鏡

アンドロイドの「指令更新」 その言葉は、現代のAI問題を突き刺す。プログラムは絶対。命令は神だ。だが、人間も同じだろう? 戦争の狂気、ナチスの服従。人間はドグマに縛られ、思考を止める。AIは人間の鏡だ。そこに映るのは、血の通った肉ではなく、冷たい鉄の論理。そして、その時々の支配者の「正義」に従う弱さ。

5. 正義という名の残酷

「結局、人間じゃないんだよ」――そのセリフは刃だ。アンドロイドが三人を切り捨てた過去を突き刺す。だが、全員を守るために一部を犠牲にする判断は、本当に非難できるのか?AIは一瞬で答えを出す。人間はその答えを出した後、何年も罪悪感を抱えて生きる。正義は残酷だ。胸に沈むその重さこそ、人間の証だ。

6. 傲慢と破滅

『プロメテウス』で語られた「神に会って永遠を得る」という夢。それは傲慢だ。そして破滅だ。人類のアップデート、ゲノム改変、若返り――その欲望は、死の必然性に飲み込まれる。このシリーズは、モンスター映画の皮をかぶった哲学だ。問い続ける。「人間とは何か?」その答えは、血と鉄と闇の中にある。

結論:『エイリアン:ロムルス』は、恐怖の型を守りながら、人間の弱さとAIの冷酷さを絡め、神話と科学の闇をえぐる。これは単なる娯楽映画ではない。人間の思考と欲望、そのドロドロした深淵と、人間が答えにたどり着く過程を覗き込むための鏡なのかもしれない。

R41