「エイリアンの恐怖は広がり続ける」エイリアン ロムルス sumichiyoさんの映画レビュー(感想・評価)
エイリアンの恐怖は広がり続ける
新たな監督のエイリアンが気になったので鑑賞しました。
物語は2142年、ゼータ2星系を漂うノストロモ号の残骸からエイリアンの遺体を回収するシーンから始まる。遺体はとある施設へ運び込まれた。一方、ジャクソン星採掘植民地の農作業員であるレインは従者であるアンドロイドのアンディと共に地球型惑星ユーヴェガへ移住を希望していた。だが、許可されず、知人4名の非合法な渡航計画に加わる。6人は盗んだ宇宙船でジャクソン星を脱出し、長距離航行に必要な冷凍睡眠設備と燃料を求め宇宙を漂う廃棄船へ向かう。だが、そのウェイランド・ユタニ社所有の廃棄宇宙ステーションはノストロモ号から回収したエイリアンの遺体が運び込まれた場所であったのだった…。
本作は『エイリアン(1979)』でリプリーが始末したエイリアンの残骸のその後が描かれました。『エイリアン2(1986)』が57年後なのでその間の出来事。加えて、『プロメテウス(2012)』を連想させる描写もあり、シリーズの核心に触れる正当な続編でした。ただ、シリーズの生の親であるリドリー・スコット監督が製作に移ったため、違った部分も。
本作を監督したフェデ・アルバレス監督は自身のスリラーを描きつつ、所々に過去作のオマージュも散りばめていました。宇宙ステーションの密閉空間で6人がエイリアンに襲われるシチュエーションは『エイリアン(1979)』を思わせますね。ただ、6人は知識も技術も戦闘力も持たない民間人なので逃げたり息を殺すしかなく、その緊迫感あるシーンは『ドント・ブリーズ』を思わせました。また、序盤から脱出劇だったので、過去作のような人間の欲まるだしの思惑が弱い部分で少し寂しく感じました。それも恐怖以外を引き算した監督の思惑かもしれませんが。でも、ラストは『プロメテウス(2012)』のオマージュなのだろうか…。
本作の主人公レインは女戦士のようなリプリーと比べるまでもなく、小柄で華奢で戦闘向きでないけれど、直感的な行動力や正しい判断力、恐怖に硬直しない精神力などのサバイバル能力はリプリーと通じていました。十分にエイリアンと戦えるポテンシャルを持った女性です。レイン演じるケイリー・スピーニーも恐怖に屈しない幼さが残ったような顔立ちがレインにピッタリだったと感じました。
他、俳優陣は無名な若手ばかり。監督の意図なのかインディーズ感がありましたが、余計な先入観なくホラーに浸れました。
20世紀スタジオがディズニー傘下となって、エイリアンシリーズも新たな幕が上がった気がします。本作はアルバレス監督テイストが色濃いスリラー作品でした。シリーズはアクション強めのナンバリングタイトルやミステリーテイストのプロメテウス、モンスターバトルな対プレデターなど、主人公、場所、物語を選ばない作品群になりつつある。どの作品も不思議と受け入れられますね。宇宙のどこかに実在するかもしれないエイリアンの魅力は底しれない。これから様々な作り手の下でエイリアンの恐怖が広がっていくことを願っています。
まずはライトセイバーと戦ってほしいかな。