「脇役みんな愛おしい作品で、物語の締め方もシンプルだけど美しい」ブリーディング・ラブ はじまりの旅 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
脇役みんな愛おしい作品で、物語の締め方もシンプルだけど美しい
2024.7.11 字幕 MOVIX京都
2023年のアメリカ映画(102分、PG12)
実際に父娘の関係である俳優が諍いのある父娘の関係修復を演じるヒューマンドラマ
監督はエマ・ウェスティンバーグ
脚本はリビー・キャスター
原題は『Bleeding Love』で「あふれる愛」という意味
物語の舞台は、アメリカのニューメキシコ
サンディエゴに住む娘(クララ・マクレガー、幼少期:Devyn McDowell)は、父(ユアン・マクレガー)からいきなりどこかに連れて行かれることになった
父は行き先を友人のところとぼやかすものの、娘をそこに連れて行く必要性があった
娘も反抗的になることもなく、父いついて行くのだが、それには大きな理由があった
映画は、ニューメキシコの一本道をひたすら走っていく映画で、道中でいろんなトラブルがあって、癖の強い人たちと出会っていく様子が描かれる
エンジントラブルによって出会うエルシー(キム・ジマー)は、自分の家に彼らを招待し、彼女の義理の兄エイモス(ウィラード・ランサボーヴ)に車の修理を頼む
そこには甥っ子のキップ(ジェイク・ウィアリー)が登場するのだが、彼は娘が未成年と知らずに酒を飲ませてしまう
娘はアルコール依存症で、過剰摂取によって心肺停止になった過去があった
父は彼女を「危険なところから遠ざける」という言い回しをしていたが、実際にはリハビリ施設に入所させる計画だった
だが、それを言えぬまま時を過ごし、娘は父の再婚相手からそれを聞かされてしまうのである
映画は、マクレガー父娘のリアルが反映されている内容になっていて、おそらくは娘との不和は再婚によるものだと推測される
父と娘には役名がなく、それは「一般的」でありながらもパーソナルという部分があって、いわゆる「本人役」をやっている感覚に近いのだろう
別の名前を使うと他人の話になるし、実名を使うと実話なのかと誤解をされてしまうので、このキャスト名になったのは英断なのだろうと思った
物語は、わかっているけど言葉にできない愛情を描いていて、二人の関係修復がメインになっている
それぞれが娘の幼少期の思い出を想起する流れになっていて、それが二人の共通した「戻りたい時間」なんだろうと思う
だが、そこに戻ることはできず、今の時間軸を生きていく中で、二人は大人にならなければならない
そう言った意味において、次の一歩を踏み出すための旅だったのかな、と感じた
いずれにせよ、普遍的な親子の物語で、ロードムービーとしても個性的な面々が登場するので面白い
ブロードウェイを目指す売春婦トミー(ベラ・バルダー)が車のライトで踊るシーンも良いし、レッカー屋エルシーの「ここから先は誰とも目を合わせるな」からの満面の笑みも最高だった
ショップ店員(フィッチャー・クナップ)のキャラからして濃く、氷を掬っているだけのモーテルの客(J・ネイサン・シモンズ)たちも妙な存在感があるので、どこから見ても楽しめる映画だったのではないだろうか