「「Mack the Knife」の歌唱シーンで、どの歌詞がイディッシュかわかる人はすごいと思う」アンジェントルメン Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
「Mack the Knife」の歌唱シーンで、どの歌詞がイディッシュかわかる人はすごいと思う
2025.4.7 字幕 TOHOシネマズ二条
2024年のアメリカ&トルコ&イギリス合作の映画(122分、G)
原作はデイミアン・ルイスの『The Ministry of Ungentlemanly Warfare』
非合法のスパイの暗躍を描いたアクション映画
監督はガイ・リッチー
脚本はガイ・リッチー&アラシュ・アメル&エリック・ジョンソン&ポール・タマシー
原題の『The Ministry of Ungentlemanly Warfare』は、「非紳士的戦争省」という意味で、劇中のスパイメンバーにつけられた名称のこと
物語の舞台は、1942年の大西洋沖
スウェーデンの漁船に乗り込んでいるガス・マーチ=フィリップス(ヘンリー・カヴァル)とアンドレス・ラッセン(アラン・リッチソン)は、ナチスのBボートの職質を受けていた
彼らは船内を隈なく捜索し、奥に隠し部屋があることに気づく
そこには仲間のヘンリー・ヘイズ(ヒーロー・ファインズ・ディフィン)とフレディ・アルヴァレス(ヘンリー・ゴールディング)がいて、彼らの発砲と同時に、船上でも銃撃戦が始まった
4人はBボートを制圧し、そこから予定通りの航海を続けていく
彼らはもう一人の仲間であるジェフリー・アップルヤード(アレックス・ベティファー)を救出するためにイタリアのラ・パルマ島を目指していて、合流したのちには赤道ギニアのフェルナンド・ポー島に向かうことになっていた
目的は、そこに停泊しているスペイン船ドゥケッサ号を沈めるというもので、その船はナチスの誇る潜水艦Uボートへの食糧や兵器、燃料などを補給する船だった
Uボートは大西洋の覇権をドイツのものにするほどの性能があり、それによってナチスと交戦中のイギリスはアメリカの協力を得られていなかったのである
物語は、2016年にウィンストン・チャーチル(ロニー・キリア)が公開した文書をもとに作成された原作に倣っていて、いわゆる「事実に基づく(Based On)」の作品になっている
劇中に登場する女優のスチュワート(エイザ・ゴンザレス)も実在の人物で、作戦の立案はのちに「007」シリーズを執筆するイアン・フレミング(Freddie Fox)で、作戦の責任者は「M」のモデルでもあるガビンズ准将(ケイリー・エルウェス)だった
映画で描かれる作戦は「ポストマスター作戦(Operation Postmaster)」で、これも実際に行われた作戦で、1942年1月14日に行われ、映画のようにタグボートで曳航し、引き渡しが行われたとされている
本作は、ナチスに家族を殺された人々が集まって復讐を果たすという流れになっていて、いわゆる無双状態で相手を薙ぎ倒していく様子が描かれていく
ピンチというピンチはなく、ひとり被弾するものの、悲壮的な展開になることはない
相手がナチスだったら何をしてもOK状態に近いので、そう言った一方的な戦争に爽快感を求める人ならばOKだろう
ただし、作戦が成功するかどうかを緊張感を持って見守るというテイストは最低ラインで残されているので、飽きが来ないつくりにはなっていると思った
いずれにせよ、詳しい予備知識は必要なく、ほとんどが映画内で説明されている
007シリーズを知っていれば、イアン・フレミングとMにニヤリとするぐらいものもので、ユダヤの言葉が聞き分けられる人ならば、後半の決定的なシーンの意味がすんなりと入ってくるように思える
ちなみに、あの歌唱シーンにおいて、スチュワートは
「Mack the Knife」という曲をドイツ語で歌うのだが、その歌詞の中で「Yeder Veyst(「みんなが知っている」という意味のイディッシュ語)」という言葉を使ってしまう
それによって、ルアー大佐(Til Schweiger)は彼女がユダヤ人であることに気づくのだが、これがわかるのは言語にかなり精通している人だと思う
映画では、ちょうどスチュワートが歌いながらルアー大佐の膝の上に乗るシーンになるので、見返せる人は気に留めてみたら良いと思う
ちなみに、著作権的にOKかわからないが、YouTubeに該当シーンの動画があるので、自己責任で「Mack the Knife」+「映画の原題」でググってみれば良いのではないだろうか