「大惨事」セーヌ川の水面の下に U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
大惨事
面白いコンセプトだった。
ラストの水没したパリの街並みはどうかと思うが、メッセージ性は大きかったと思う。
鮫をモチーフにしたパニック映画だ。
が、それを主軸に環境問題や尊大な人の愚かさをも描いてる。コレはパリ五輪の頃の映画なのかなぁ…だとしたら、なかなかにタイムリーで、当時セーヌ川の水質汚染とか問題に上がってたから別の角度から権力者達の傲慢さも描いているのかもしれない。
脚本的にもフックが効いてて、不発弾のネタがあんな効果をもたらすとは思わなかった。
ある意味、自業自得であり人類の負の遺産だ。
大西洋の大海原には第三の大陸と呼ばれる程の海洋ゴミで形成された海域があり、海の生態系の変化から鮫がセーヌ川に迷い込む。
折下、パリはオリンピックを見据えたトライアスロンの大会の直前だったりする。
鮫が淡水に?と思うのだけど、淡水で産卵する種もいるらしく…それはまだいいのだが、この鮫は単体での生殖が可能って進化をした個体だった。
…いや、さすがにと突っ込まずにはいられないんだけれど、そこは設定として飲み込んでおこう。
なので、鮫の巣として設定された地下墓地を回遊してる鮫の群はなかなかに迫力があった。
鮫映画らしく人が喰われるカットも多々あるんだけど、よく出来てたなぁ。
鮫は人に危害を加えないとする環境団体の素っ頓狂な主張もまとめて張り倒してるとこなんかは、見てて気持ちがいい。
とは言え乱獲していいとも思えず、人間以外の命は人間の為だけに存在してるわけでもない。
長らく人類が忘れていた生存競争の場に引き摺り込まれたような感覚にもなった。
海ん中での覇者は人類ではないのだな。
セーヌ川が主なロケ地で、そのセーヌ川を取り囲むパリの街並みは美しかったなぁ。
序盤に環境団体の基地?が紹介されるんだけど、城の中の一室みたいな作りになってて、そのアンバランス差に驚く。日本じゃああはいかないというか、日本で言うと寺の中に最新機器や巨大なモニターが設置されてるような状況で、その国の特色が出てはいた。実際もああいう使われ方をしているのだろうか?異国情緒たっぷりで、見てて面白かった。
警察のホームレスへの対応が人道的だったりと、なんかパリはのびのびしてんだなぁって思ったり。
CG関連もしっかり馴染んでて嬉しい。
脚本的なディテールに「?」と思う箇所もありはするが良作で、バットエンディングではあるものの、水没するパリの街並みはインパクト大で、ある意味スカッとしたいい結末だった。
セレモニーの前に手を洗った市長が側近のスーツで手を拭くとこなんか、いい役作りだったなぁ。
色々、非常識が常態化してるのが人間社会なんだろあなぁ…と、結構噛み応えもあるかもしれない作品でした。