「シェークスピア悲劇」トランスフォーマー ONE 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)
シェークスピア悲劇
トランスフォーマーの枠を超え、
シェークスピア悲劇や、
古代神話の神々しい輝きを融合させた、
壮大な叙事詩と言っても過言ではないほど、
完成度の高い作品に仕上がっている。
プライマスは、まさに全知全能の主(神)としての威厳を放ち、
その創造物であるオプティマスプライムと、
メガトロンの宿命的な対立は、
その物理的ロジックと感情的ロジックをうまくみせつつ、
まるでギリシャ神話や古事記における神々の戦いをも射程に入れている。
更にコグ(魂)という抽象的な概念を、ビジュアル化し、
シナリオに演出に自然に溶け込ませる試みは、決して容易ではない。
しかし本作は、その点においても見事な手腕をみせる。
コグの有無、損傷や変異が、
キャラクターの精神状態や行動にどのように影響を与えるのかが、
緻密に描かれている。
特に、傷つき汚れ、そして機能不全に陥るキャラクターたちの姿は、
まるでシェークスピア悲劇の主人公たちのようであり、
ハムレットとクローディアス(本作では親友)の対立の宿命のように観る者の心を深く揺さぶる。
労働者階級のオートボットと
エリート階級のデセプティコンの対立は、
単なる善悪の対立にとどまらず、
階級闘争という普遍的なテーマを軽く匂わせて、
深くは掘り下げない。
(エンターテインメントのレシピをわきまえている)
奴隷として扱われるオートボットと、
絶対的な力(親衛隊って・・)を持つデセプティコンの対立は、
歴史上繰り返されてきた権力闘争の縮図であり、
現代社会における分断と地続きの普遍的なテーマでもある。
仲間と敵の役割が明確に描かれ、
それぞれの部下への鼓舞は、
観客にも強く伝わる。
それをテンポ良く展開させる手腕はプロのチームの仕事だ。
傷ついたボディや汚れにまみれたテクスチャは、
ミレニアムファルコン号、
反対にピカピカに光るロボットは帝国軍の兵士を連想させ、
古き良きSF映画へのオマージュを感じさせながら、
敵と味方の、役割のちがいも明確にしている。
【蛇足】
コグを入手、覚醒してトラック、
は、
チェーンを入手、覚醒してダンプ(松本)、
が頭から離れず・・・・、
一応は異音同義のシークエンス・・・ww。
主人公の奥の方で、
デザインも、雑な扱いも、旧ザクのような物体がいた・・ような気がする。