シビル・ウォー アメリカ最後の日のレビュー・感想・評価
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戦場カメラマンの視点
アメリカ国内の内戦勃発をテーマにして、戦場の最前線を取材するジャーナリストの視点で描いたアクションスリラー。
リアルな戦闘シーンは迫力があり戦場カメラマンの命がけで取材する姿にはハラハラしました。カメラマンのシャッター音と同時に一時停止する映像が非常にインパクトがあり緊迫感が増しました。
2024-164
ココロのの処理中
いやー正直ナメていました…
お得意のドンパチ、ディストピアムービーと思い、席に着いたのですが…
冒頭からやられました(^^;)
練られた脚本、思わせぶりたっぷりの映像(いくつかハットさせられる画がありましたんね)、セリフの抜きの銃声等だけの演出やサイレントの使い方と音楽の使い方などなど…
少し鼻につくという方の多いとは思いますが、お恥ずかしながら自分的にアリでした!説明過多にならず、分断、内戦、関心領域、本当に敵は誰?、そもそも敵とは?、ジャーナリズムのあり方など様々ことを感じさせてくれたように思う。
極右・保守VS左翼・リベラル
日本でも極右や保守派が幅を利かせて来ていて危ないなと最近は思う。リベラルが一番フラットな立場で物を見れるのに対して、反日だの売国奴だのレッテルを貼りたがる極右や保守派は新なる戦争の火種になりかねない。アメリカに付くか中国に付くかみたいな極端な選択に走るのはあまりにも危ない。どっちにも付かずが一番良いのだ。アメリカは移民の国だからもっと複雑だし白人だけでは生きていけないのに移民に厳しい差別主義者を大統領にしようとしている。この映画みたいに極端になるのもあながち嘘ではない。人を理解して尊重し愛し愛されて育んでこそ人間社会は成立するものだ。
なぜ、どうしての連続
分断の理由や背景が最後までわからず、「なぜどうして?」の連続。
単なる内戦映画で終わってしまった。
いくつか挿入歌が入りますが個人的には違和感がありました。
たぶん監督は「地獄の黙示録」のファンですかね。
観た後、なにか考えさせられる映画かと思ってましたが
そうではなかったですね。
緊張感のある映像の連続なので惜しい作品です。
議事堂襲撃事件のパロディ
なぜドナルド・トランプのような人物がアメリカ大統領になれたのか。イギリス人監督アレックス・ガーランドによれば、本作の着想はまさにそこにあったそうなのだ。しかし、このアレックス・ガーランドという人、かつて本心を語ったインタビューを一度として目にしたことのないひねくれ者で、作品の解釈につながるようなヒントもまったく教えてくれない超がつくほどのあまのじゃくなのである。
確かに自分の都合の悪い報道はすべて“フェイク・ニュース”として片付けるトランプの態度にも大いに問題があるとは思うのだが、ウォール街やDSの言うことをまったく聞こうとしないが故に、左派報道機関にやってもしない罪を次から次へとでっち上げられているのもまた事実なのである。民主党陣営に不利な報道はすべて“陰謀論”ですまそうとする、左に偏った日本マスゴミの報道がどこか胡散臭く感じるのも、まさにそのせいなのだ。
カリフォルニア州(民主党地盤)とテキサス州(共和党地盤)が分離独立を求めて決起、その鎮圧に動く正規軍と民兵組織が内戦状態に突入している、という設定だ。戦場カメラマンとしてカリスマ的存在の(ゴシップコラムニストの故リズ・スミスを連想させる)リー・スミス(キルステン・ダンスト)と彼女を尊敬してやまない駆け出しのジェシー(ケイニー・スピーニー)らプレス一行が、米大統領へインタビューをするためワシントンD.C.を目指すロード・ムービーとなっている。
はじめは分離独立を目指すヒスパニック系民兵と戦っていた白人主体の米軍だが、一行がワシントンD.C.に近づくにつれ、軍の内部で同士討ちがはじまり、出身州や国だけで敵味方を判別する残虐行為へと発展。はてはクーデターを起こした軍隊が大統領が立て籠ったホワイトハウスに総攻撃を仕掛ける。白黒をハッキリつけたくないガーランドならではの演出だろう。現実世界を反映してそうな政治的アレゴリーよりもむしろ、リー・スミスとジェシーの関係性に注目すべき映画のような気がするのだ。
『スパイダーマン』のMJとは180度異なる役処のダンストが、リンダ・ハミルトンのような皺を眉間に浮かべ、ベテラン俳優ならではの貫禄を十二分に漂わせている。あまりもの修羅場に堪えきれず思わず車内でオエコを撒き散らすジェシーとは対照的だ。しかし、自分の師匠にあたるベテラン記者を軍の発砲により失うと、ワシントンD.C.に近づくにつれ激しさをます戦闘に反比例するようにリーの態度が次第に気弱になっていく。逆に新人のジェシーは何かふっきれたような行動に出て、シャッターチャンスを次々とものにしていくのだ。
すでに名声を手にしているリーにとってこの旅は、もはや得るものは少なく失うものの方が多いわけで、失うものがなにもないジェシーとは真逆の立場にある。ゆえに、旅が核心へと迫っていくごとにリーは“保守的”になり、ジェシーは銃弾が雨霰と降り注ぐ中大胆不敵な行動をとるようになるのである。そんなジェシーを間近に見ながら、リーは自分の若い時の姿をそこに重ねていたのではないだろうか。ラスト「自分を撃たせるな」と語った誰かさんのように、ジェシーを助けようとしたのではなく自分自身を守ろうとしたのではないだろうか。
すでに権力を保持している者が保身に走れば走るほど人心というのはなぜか離れていくものなのである。守るべきものしかないカマラ・ハリス陣営が、トランプの二番煎じみたいなことしか言わないのも当然のことなのだ。失うものがなにもないジェシーはリーの◯を踏み越えて、ラスト、ピューリッツァー賞間違いなしの大スクープ写真をゲットするのである。もしかしたら、マスゴミにボロクソ叩かれ続けてもはや失うものがなにもないところに、ドナルド・トランプの本当の強味があるのかもしれない。
オシャレ戦争ロードムービーもの
ゴリッゴリのアメリカ内戦映画がまずあって、それのスピンオフ作品だったら良かったかな
トム・クルーズの宇宙戦争みたいなタッチを期待してたんだけど…
牧歌的なアメリカの風景とそれに不釣り合いな事物の組み合わせは素晴らしく、全体的に悪くなかったけどラストがなぁ…
戦闘シーンに臨場感や没入感はあまりない
トゥモロー・ワールドの長回しを知ってると尚更
ラストの戦闘シーンがショボく、終わり方も微妙
10月1週の本命対抗作品ではあろうと思うが、なかなかむつかしい映画
今年355本目(合計1,447本目/今月(2024年10月度)6本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。
今週の「本命対抗」というのは、本作品と「HAPPYEND」、あるいは「ドキュメンタリーオブベイビーわるきゅーれ」のことですね(人によっては「ゲゲゲの鬼太郎」が入るかも)。
近未来をテーマに「もしアメリカが分裂して戦うようになっていたら」のifを描く部分です。"The Civil War" と定冠詞がついた場合、歴史上体験した「南北戦争」を指すためその回避と、アメリカであれば常識扱いであるこのことと定冠詞違いとはいえタイトルをそろえたことで意図は何かを察してね、というところになると思います。ただ、日本ではいわゆる戊辰戦争等を除けば国で別れて戦ったという歴史がありません。
そのような事情があることを前提にしたレビューです。
映画として見る分には十分楽しいアクションものです。「もしそうであったら」のifものなので結末が決まっているわけではなく、ネタバレになりようがないからですね。一方で、この映画の設定としていたるところライフラインが破壊されるという状況になるため、映画として「暗い」設定で(ここでは「明るさ」の意味で使用)、そこで近未来を想定した戦闘シーンというと、いわゆる電子ビーム銃?といったようなものが出てくるので、そこでの目のちかちか差がかなり厳しいんじゃないかなといったところです。またごく少数の場所ですが、誰が誰か見分けがつかない部分があります(何とか字幕ではわかる)。
映画として見るには十分ありなストーリーだと思うし設定でもあったと思うのですが、明るさ(ここでは、一般人がちかちかなど想定して見られるレベルで、という意味の「明るさ」)に問題があり、そこがちょっと好き嫌い分かれるかなといったところです(ただ、ライフラインの提供が止まっていたという設定であり、そこをどうとるかで判断は分かれる)。
とはいっても大きな傷ではないし、本作品も含めて10月1日は本命対抗と色々な作品がありますし、「いわゆるちかちかが苦手な方は様子見もありかもしれないが、アクション枠という観点ではおすすめ」といったところです。
採点に関しては以下を考慮しています。
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(減点0.3/画面の「明るさ」とちかちか、エンディングロールの読みづらさ)
近未来が想定されているので、電子銃?か何かからレーザーが飛んでくるというようなちかちかシーンがあります。そして上記にも書いたとおり設定の関係上「暗い」映画なのでどうしても「ちかちか」が避けられない映画です。
一方でエンディングロールになると、白色のシルク?本?に、キャラクタと俳優が表示されるエンディングロールが待っているのですが、目がちかちか状態でこの部分を見るのは難しいかな…といったところで
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嘘ではなく現実に起きるかもしれない世界
一つの国の内戦だろうと国同士の戦争だろうと、どちらも人と人との殺し合いであり、それは非人道的で悪夢のような凄惨な光景の連続です。撃たなければ撃たれる壮絶な世界での恐怖と人間の内面、そして無力さをジャーナリストの目から描いた衝撃的な作品です。
ベテランの女性報道カメラマンのリーと報道カメラマン志望のジェシーの対比が上手く描かれています。
過去の取材でよその国のこうした惨状を何度も目にして来たリーにすれば母国アメリカで起きてしまった惨劇の中で蘇る恐怖。若いジェシーにすれば見た事もない悲惨な光景の真っ只中での恐怖。これまでの考え方や価値観など一変させてしまう体験です。
「どの種類のアメリカ人だ?」の言葉と、いとも簡単に人を撃ち殺すシーンに衝撃を受けました。
それはホワイトハウスでの交渉役の女性や大統領に対しても同じです。
殺らなければ殺られる。戦争と言う狂気の世界では誰しもがそうなってしまうのかも。
真実を伝えると言う報道の立場でもこの現実の世界に無力さを感じるリーに対して、ひたすらシャッターを押し続けるジェシー。その姿もまたこの狂気の世界が生み出したものかも知れません。以前のリーがそうして来たように。
今現在も世界の各地で戦争が起きているように、「それは、今日起こるかもしれない」と言うコピーは正にその通りだと思い知らされます。
いい映画を見ました
戦争ジャーナリズムの暗黒面
内戦を描くよりも戦争ジャーナリズムの暗黒面をさらけ出す。そんな意図を感じる。
戦争ジャーナリストを自称する若い女性ジェシー。憧れと野心のためにニューヨークで内戦の取材を始め、ワシントンへ向かう有名ジャーナリストとの同行に成功する。
想像を遥かに超える戦争の残酷と非情を目の当たりにして、ジェシーは文字通り吐いてしまう。ジェシーの甘っちょろい考えが引き起こした結果とも言えるので、言わんこっちゃない。と呟きたいところ。
なんだけど、映像的にジェシーの行動を強制的に追体験させられてしまう作りになっている。だから、ジェシーの愚かさを批判する余裕なんかなく、その場から逃げたくなるくらい心が抉られる。自分だったら、最初のヤツでトンズラします。
局地戦のシーンはあるが、内戦自体は、はっきり描かれず、内戦に至った経緯もわからない。
が、内戦下における市民の有り様は、アイロニックに映し出される。
停電の可能性がある時のエレベーターの利用は、あくまでも自己責任でと、慇懃無礼に案内するホテルのフロント係。
戦争地域から離れている街では、我関せずとばかりに変わらない日常を振る舞っている。
アメリカの分断を描くとばかりに思っていたら、内戦によってあぶり出される人間のダークサイドに圧倒されてしまった。従軍することによって、命がみなぎるってどういうこと。
あまりにもリアルな音響で交戦真っ只中にいると錯覚してしまう。IMAXかDollby Atomsでの鑑賞をお勧めします。
この作品をブラックジョークと感じるのか、もうすぐやってくる近未来と、とるのかは、あなた次第。
頑張り過ぎに感じてしまう
予告をみて勝手に激しい映画を想像したが、ジャーナリスト中心て意外に穏やかにストーリーが進むが、調子外れの明るい未来音楽が鬱陶しい。いろいろな要素を詰め込もうとしたが理解し辛く。戦争ものの痛快さは皆無。
戦場カメラマンが繰りなす 本格ロードムービー
予告編を観ただけで、鑑賞を決めていたので、封切日に観ました。
予告編(トレイラー)を観る限り、B級TV映画の様な印象がありましたが、内容はきちんと作り込まれており、戦時下の無法地帯を行くロードムービーとして、文句のつけようがない非常に優れた映画でした。
題名のつけ方と、宣伝の仕方が、悪いのでしょう。
この映画は、独立戦争でもなければ、
南北戦争の様に、2局分断による戦争でもなく、
"軍事クーデター"です。
だから、政府軍が独立派を押さえ込もうとしているのではなく、赤(共和党)と青(民主党)の代表的な両州勢力と言うか、米陸軍自体がDCに攻め込んでいるのです。
兵士の記章・装備をみる限り、州兵ではありません。本作に対しての 風当たりを 交わす為に、あえて両州の名を 外に出しています。
リアル世界でも、大統領選挙で、青がエグイ事をすると、赤が起こしかねない近未来予想映画でもあります。
4体に、石灰石を振りかけるシーンがでてくるが、これは、石灰は水分で発熱して腐敗が早まる為です。
音楽と効果音が絶妙に うまく使いこなされとおり、監督の編集能力は、非常に優れています。
白黒写真は、現像液、停止液、定着液(粉末はありえません)を順番に、ダークバック、ピッカー、ドラム、ジョウロを使い
そして大量の水で洗浄するので…いい加減に、テキトーな ソレぽいシーンは、アレです。
この映画では、なくても良いシーンだから、それらの道具を側に置いて、地面を水に塗らし、水筒でも 転がせて
いきなり スマホで現像したネガを読み込むシーンから、始めれば
事は、完璧に済んだでしょう。
若手戦場カメラマンの"目つき"が"逝ってしまった"光景は
「野獣4すべし(1980年)」松田優作さんのように、エクスタシーを感じていたのだと思います。
本作の次に観るべき映画は、「野獣4すべし」です。
期待度○鑑賞後の満足度○ ワシントンD.C.に侵攻してからホワイトハウスに突入するまでは正に戦場にいるような迫真さで魅せる。世界の各地ではこんな事がいま起こってるんだよ、どうよアメリカ?という映画。
①いま、リー・チャイルドの「ジャック・リーチャー」シリーズにハマっている。ジャック・リーチャーはアメリカ合衆国内を放浪していて各州で色んな事件に出くわす。で、いま色んな本を読んでアメリカ合衆国の各州についてお勉強しているところ。
アメリカ合衆国第2位の経済規模のカリフォルニア州と第3位のテキサス州が組めばそりゃ第1位がどんなに頑張っても勝負ついてます、という事ですわ。
でも、映画が始まったらもう内戦は始まっていたし、劇中でも何故こんなことになったのかは一切語られない。
自分には関係ないと思っている国民や、距離をおいていれば良いんだと思っている国民もいる。
その一方、敵が誰でもよくて自分達を殺そうとするからこっちも相手を殺すだけと言う国民もいれば、内戦のどさくさに紛れて大義もなく人を殺す国民もいる。
【shoot】="撃つ"と"撮る"は同じな写真とカメラの暴力性…これは現代の"地獄の黙示録"か!
フロンティアからフロントラインへと、西部劇ならぬ"東部劇"な手に汗握る社会派アクション・スリラー。緩急つけた緊張の展開が続く。興味をそそられる題材だけど、なぜそうなったのかは描かれない(ヒット次第で前日譚製作できそう?してほしくないけど)。キルスティン・ダンスト ✕ ケイリー・スピーニー = ベテランカメラマンのリーと新人カメラマンのジェシーの師弟関係的ロードムービーでもある。アメリカという開拓者精神溢れる起り・歴史とは逆に、西部から東部へ侵攻するWF。戦場カメラマンとして国内に戦争の暴力性・残酷さを伝えてきたつもりなのに、その無力さを露骨に感じては時に打ちひしがれるのか。人間の愚かさ故に様々なキッカケでその発露を求めるような、集団心理的凶暴性(ex.『パージ』)。無論、これが人間の本質だなんて思いたくないが。銃をカメラに持ち替えて、けど結局同じか。
恐怖のショータイム、死のゲームに興じるような赤サングラス姿ジェシー・プレモンスの登場尺に対する圧倒的存在感がショッキング!ヤバイ奴感エグい。キルスティン・ダンストとの夫婦共演と言っても、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』での関係性とは全然違う。恩師の死(※写真を消すの重要)から、カメラを相手に向けることの暴力性を痛感するように、終盤少し躊躇いながらも、報道の役割は時として歪んで伝わることも。逆に新人カメラマンのほうがグイグイと行く。そして、あの最後だから…。その瞬間、彼女は被写体に対する容赦の無さ・ショックな瞬間に対する貪欲さとか"一人前"になったのか、どうだろうか。ラストカットまで本当に引き込まれっぱなしだった。
冒頭A24ロゴから既に、音(楽)がすごい!意表と核心を同時に突くような、思いがけぬ選曲とそのタイミング含め秀逸。効果的な無音…からの心臓に悪い銃声!これはIMAXやDOLBYで見る価値アリ!! その個性的クセ強なフィルモグラフィーで一貫してヘンテコな作品を届けてきてくれたアレックス・ガーランドの新作は、演出意図の伝わってくるような引きのショットや演出が好み。今作でもしっかりとクセがあって、けどそれが超大作らしく幾分か取っつきやすい形になっている気もして、端的に監督前作『MEN』と比べるとより一層。また、力強い役者陣にそれらは支えられて、力強く考えさせられる。曖昧ながら警鐘を鳴らされているのは確かで、本作をどう受け取るかはあなた次第、見る者に委ねられている。ただ、敢えてこう締めくくりたい…"大いに楽しませてもらった"、と。
♪Dream Baby Dseam / Suicide
P.S. "A24最大ヒット"?"全米2週No.1"?…と鳴り物入りな情報など何処吹く風で、前からすごく楽しみにしていた作品の一本。日本では公開順が逆になったけど、『エイリアンロムルス』でも光っていたケイリー・スピーニー!あと、ちなみにニック・オファーマン大統領、眼鏡ソノヤ・ミズノ記者
戦争のリアルを巧妙なプロットで描く大傑作~
米国は世界各地に押しかけて戦争を直接・間接問わず仕掛け、世界の秩序を言い訳に豊富な資金を背景に捻じ伏せてきた。だから北米本土においての戦争は南北戦争にまで遡らなければなせない、すなわちそれ以降は国土が戦争によって汚された事はない。本作は「IF」の前提ではあるものの、近年の社会の分断を背景にあり得るIFを描いてみせた。だからラストシーンで米国大統領自身が「殺さないでくれ」の最後の一言もむなしく、あっけんからんと女性兵士によって銃殺される。そんな馬鹿な?って思うのは甘すぎます、さんざ他国でこれをやってきていたのですから米国は。おまけに死体を前に笑顔の記念撮影! これが戦争なのです。
ハリウッド映画でさんざ描いてきた第二次世界大戦でのヨーロッパ各地での戦争のリアル。のどかなフランスの田園地帯でナチスか否かで疑心暗鬼なシチュエーションで、突然の銃撃の雨と爆撃される家々。それをそっくりそのまま現代の米国の豊穣な農園で展開される恐ろしさ。モールは廃墟と化し遠雷のように戦火が飛び交う。ここはイラクか? ゲームスタジアムはさながら難民キャンプの様相で、遭遇した民兵のような輩に「WHAT KIND OF AMERICAN?」と聞かれる恐怖。同じアメリカ人なんて意識は、もはや通用しない。50年代?と思わせるローカルな商店街で聞かされたのが「関しないようにしている」と。無関心でいられる次元は遥かに超えてしまっていると言うのに。
しかし作者は実に巧妙で、民主党・共和党と2分する現実を取り込まず、カリフォルニア州とテキサス州の西部連合が立ち上がる設定を編み出す。そんな組み合わせあり得ないのが現実だからこそ、架空として観客は受け入れられ、しかも諸々の経緯も一切省略で兵器に訴える結論で本作は始まる。前提条件を描いていたら総ツッコミ必定ですから。描きたいのは本土での戦争そのもの。で、何が起こるか? 極限状態での人間の変わりようなのです。もっとも象徴的なのが赤いサングラスの野郎なのです。アウシュビッツ強制収容所さながらの累々たる死体を前にした狂気の様相なのです。
しかも、ニューヨークがスタート地点で、目的地がワシントンDC、ふたつの市街戦に挟まれるロード・ムービー仕立てってのが冴えてます。狂言回しに戦場カメラマンを据えて、その功罪をも内包し、さらに縦軸にカメラマンの先輩と後輩を配し、軟弱カメラマンを一丁前の報道カメラマンへの成長談として描く巧妙さ。さらにですよ、ピュリッツァー賞のような全世界へ発信する写真の筈が、妙に「その瞬間」のようなタブロイド調に陥ってしまったような描写が一筋縄でゆかない困難さをも描く。
IМAXでの鑑賞ですが、見事に縦も天地までのラージフォーマットで、耳をつんざく銃声の激しさには身が震える程。その銃声飛び交う音響はやはりIМAXならではのド迫力。静逸な田園風景の直後の銃撃音の鋭い事。監督・脚本のアレックス・ガーランドってこんなに巧かった? ドレスを試着する辺りの鏡を多用した撮影は、小娘にほだされる照れまで巧く伝わりました。ラスト近くでは広大な緑地の軍事キャンプでの夥しいヘリコプターや戦車など、相当に大掛かりなロケーションの大作感に酔いしれますが。これで製作費5,000万ドルとは「デューン 砂の惑星PART2」の4分の1とは驚き。
スパイダーマンに逆さキスをされてたキルステン・ダンストがすっかり貫禄増して驚きました。小娘に対する苛立ちを上手く表現して、演技も相当に成長です。その五月蠅い程にハラハラさせ、あまつさえ師匠筋にあたる先輩の死が自らに負うているにも関わらず、その瞬間を撮って悦に入る小娘がケイリー・スピーニーなんですね。「プリシラ」での美少女が、色気もない「エイリアン ロムルス」の少女と同じとは思いもよらず、本作観てやっと繋がった。あちこちで拝見する名優スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソンが単なる抑えの役割に留まらない工夫もいい。
そしてなんといっても前述の赤サングラスの男に扮したジェシー・プレモンス(クレジットに記載なし)が圧巻です。近頃いい役で出まくりで「憐れみの3章」でも大活躍。より白っぽい白人でブロンドとくると、往々にして理性を逸脱した〇〇主義者みたいな役が多く。亡くなったフィリップ・シーモア・ホフマンのポジションに収まったかのよう。イケメンとは程遠くアメリカのど真ん中あたりに生息していそうな迷惑男にピタリ。そして彼が実生活では主演のキルステンの夫ってのが凄いよね(結局夫婦愛出演)。
米国本国でも無論ヒットしてますが、今一つ評価が上がらないのは、それはもう我が身を突っつかれている訳で、大統領(3期目とセリフにあるってことは独裁に入ったのでしょう)が情け容赦なく殺されるのもひっかかるのでしょうか。ラストのホワイトハウス攻防は当然に生々しい共和党による襲撃を連想しますが、桁違いの重火器による激しい戦いです。どんな大義も完全無意味、人々は虫けら同然に殺されるのが戦争なんです。
何故内戦を描いたのか?
この作品を見て若いカメラマンが憧れのカメラマンの取材に同行しカメラマンとして成長していくストーリーだと浅はか丸出し感想を書いてしまうとは?何故内戦を描いたかと?対立軸をあえて明らかにしないイデオロギーでの東と西の分断の不明瞭差が言いたいところ。互いにどうでもいいところ共産主義とか極右とか罵りあってるとこんなこと事のななるかもよ?って。
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