シビル・ウォー アメリカ最後の日のレビュー・感想・評価
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自国で再現
サブタイトルがダサくないか。
だが本編はメチャクチャ面白かった。
シュミレーションというより、おそらくSFジャンル。
かつ米国自身が他国で行ってきたことを、自国内でもやってみたら、という皮肉が凄まじい。
大戦では一度も本土が脅かされることのなかった米国において、自分たちの国がヨソでやてきたことを実感することは難しいだろう。目の当たりにしたことで、作品がヒットしたこともうなずける。
赤勝て、白勝ての話にしないため、視点をプレスにおいたことと、写真という客観の究極であるモチーフの導入、そしてプレスが疑似家族構成であるところに、状況との絶妙な距離感を感じている。冷静、公平に観察しつつも、物語の中には感情移入しやすい自分のアバターが存在するというのは、かなり没入感を高めているはずだ。
国内が内戦になったら、というテーマももちろんあるが、様々他国の内戦にいっちょかみしてきた米国である。同じことが自国でも行われたらというシュミレーションで問題定義も兼ねているとしか思えない本作は、アッパレだ。ただの戦争映画に終わらない。
戦闘シーンのリアルさ、緊迫感が凄まじかった。
オレンジグラサンの兵士に捕まるくだりはもうどこかで見た気しかしなかったし、本当に怖かった。
割とこの通りだから困るアメリカ
今の分断したアメリカ見る限りでは本作
極めてリアルで明日にも起こり得る話
アメリカの郊外には
ミリシアと呼ばれる私設民兵組織がいて
銃器どころか爆弾まで持っているという
そういう連中が軍の基地とか占拠すれば
クーデター可能な軍備を揃えることは容易だ
さて本編のストーリー見ると
荒廃した町を行く4人組という構図は
ジョージ・A・ロメロ監督の「ゾンビ」を思い出させる
今の人から見れば
ギャグ要素の無いゾン100という感じかな
あと自分を助けて死んだ瞬間のリーを撮影し
師の死を乗り越えて一人前になるジェシーは
「北斗の拳」のサウザーの南斗鳳凰拳を思い出す
(目隠しして師匠と戦って倒したら伝承者になれる)
ただ「こんなに苦しいなら愛など要らぬ」と泣いたサウザーと違い
ジェシーは達観したのか壊れたのか
無の境地に達していた感じだが
タイトルを回収すると
あの赤いサングラスの男の意味不明さに
呆然とした人も多いと思うが
実はアメリカという国には
現実にあの手の異常者がいっぱいいる
1割の天才やエリートや富裕層と
9割の貧困底辺層やバカや異常者で出来てると言われてる国だし
(普通の人はいないのかよ)
この映画の状況でなくても
アメリカの田舎の街に迷い込んだら
あの赤サングラス級の異常者に遭遇する可能性大
「イージーライダー」や「悪魔のいけにえ」など
田舎に行った主人公がいろいろひどい目に遭う映画が
アメリカでは定期的に作られてるのは
多くのまともなアメリカ人にとっては事実だからだ
ひとつツッコミ入れるなら
あの大統領がトランプ級の独裁者ならば
アメリカ国内でも平気で核兵器使用すると思うのだが
斬新で奇妙
カメラでシュートするマカロニ・ウェスタン
アメリカでCivil Warといえば、南北戦争。
この映画は、言ってみれば
南北戦争を背景にしたマカロニ・ウエスタンの現代版。
ただし主人公はガンマンではなく、
Nikon FE2 + Ai Nikkor 35mm F2 (なんと!広角レンズーーめっちゃ寄らないとまともに撮れない)
+ モノクロフィルムという古式ゆかしい「武器」を手に
戦場カメラマン・デビューを果たす
23歳女子ジェシー(ケイリー・スピーニー)
カリフォルニア+テキサスという西部軍が、
南北戦争で南軍の最前線だったバージニア州シャーロッツビルまで進攻し、
合衆国の首都ワシントンD.C.を目の前にしている中、
ロイターの記者とフォトグラファーが
ニューヨークからD.C.へ行く車に
便乗したジェシー。
途中、マカロニ・ウエスタン風の
「おらぁ悪役だぜ、文句あっか」的ならず者たちと遭遇しつつ、
同行者を殺されたりしながら、何度も命の危険をくぐり抜けて、
合衆国の最後を見届けるまでが描かれる。
とにもかくにも、
マカロニウエスタンだと思って観るのが肝心。
つまりは、
なぜそうなった、とか、
人があっさり死にすぎじゃね?とか、
そんなバカなことしたら絶対死ぬでしょ、とか
その他もろもろ難しいことを
考えてはいけないのです、きっと。
憲法を書き換えちゃったらしい
3期目の独裁的大統領が、
ホワイトハウスに突入した西部軍によって
射殺される瞬間をフィルムに収め――
そのとき台詞はないんだけれど、ワタクシには
「カ・イ・カン」
と聞こえたのであります。
ワタシゃ快感は感じなかったけど。
タイトルなし
勝手にエイリアンの出てこない「インデペンデンス・デイ」みたいな痛快作品だと思い込んでいた。そして今日観たかったのは、そんな痛快な作品だったのに、蓋を開けてみれば感染者の出てこない「28日後…」みたいな、ずっと静かな緊張感が漂う全く違ったジャンルの作品だった。鑑賞中は、ずっと「28日後…」が頭の中に有ったんだけれど、後で調べてみれば監督が「28日後…」の製作総指揮と脚本やっていて納得。
派手さは無いが、やたらリアルで、どこに行っても危険な所っていう緊張感が常に有る。
なんでも有りみたいな情勢で知らない奴が出てくると一気に緊張感が高まる。ピンクのサングラスをした金髪軍人は大っ嫌い。車に吹っ飛ばされていたけれど、是非とも◯んでいて欲しい。きっと太々しく生きてるんだろうけど。
登場人物の方は構成的に最後まで生き抜き変化を見せる奴、途中で退場する奴、最後に退場する奴って感じで、チームが結成した辺りから話の展開はバレバレだった。
終盤、先輩カメラマンそっちのけで写真を撮りまくる若手カメラマンが凄まじく、倒れ行くキルスティン・ダンストにカメラを向ける姿には狂気を感じた。
戦争映画は沢山作られてきたが、ほとんどの作品が過去の戦争を描いたものに対して、この作品は完全なフィクションであるにも関わらず、そう遠くない未来に起こりえそうな恐ろしさが伝わってくる。この感想を書いている短い期間の中でも、アメリカの民主党議員が暗殺されたというニュースが入ってきているし、デモでアメリカ人が石を投げ合っている映像なんかも流れてくる。こういった作品は戦争抑止には少なからず効果を出していると思っているのだが、世の中が争いに向かっていくスピードを、ほんの少し緩める程度の力しか無いんだなという現実を突きつけられた気がした。
内戦って、寧ろ酷くなる??
内戦状態になったアメリカを、ジャーナリストの目を通して描く物語。
トランプ政権誕生で顕在化したアメリカの分裂を、シビアに映した秀作です。
物語はロードムービーテイスト。ワシントンを目指すジャーナリスト達が、その道すがら目の当たりにする残虐な光景を活写します。
市民の分断、人間の残虐性、身近な死、そして恐怖・・・ユーゴ内戦を想起させるようなシーンの連続に肌が粟立つ思いです。
ベテランと記者志望の若者を組ませたのも秀逸でした。特に、想像を絶する光景に立ちすくむ若者の姿は、鑑賞している私の代弁者でした。
クライマックスは迫力十分。でも、中盤迄のリアルを失わない程度に抑えられていて好感が持てました。
私的評価は4.5にしました。
「米国の分断」を描いた映画ではありません
内戦が起きたアメリカで大統領にインタビューしに行くジャーナリストが主人公です。これは題名から想像されるような政治系の話ではなく、戦争状態における戦場での狂気や生々しい恐怖が主体となった作品です。「米国の分断」を描いたような映画ではありません。
戦争の現場は殺人が肯定される場所であり、そこでは丸腰であるかどうかなど関係なく殺人が易々と実行されると。手を上げている人間を易々と射殺する、そういう狂気にあふれた非人間的な場所だと言うことを強く訴えていると感じました。この映画の見せる狂気・悪意は戦場であればどこでも通じるのだと思います。そこがとても怖ろしく感じました。今もこのような悪意にさらされている人々のことを思うと胸がいたみます。面白くなかったわけではないですが、あまり気持ちの良い映画ではないです。
報道カメラマンの話だった…
あの『地獄の黙示録』と被るかな?と思った瞬間、少し冷めたかもしれない
監督は、『エクス・マキナ』『MEN 同じ顔の男たち』のアレックス・ガーランド。この二作は、どちらも独特で面白かったから、いやでも期待値は上がるよね。
よくできた作品だけど、ちょっと微妙なとこはあったね。アメリカの内乱というとんでもない状況で、戦場カメラマンとして成長していく女の子の物語とも言えるのだけど、成長と言うには、いくつかの点で無理があって、、、
その女の子をケイリー・スピニーが演じるのだけど、キルスティン・ダンテストと並んで演技していると、ただのお人形さんにしかに見えなかった。『プリシラ』と『エイリアン:ロムルス』の主役の女の子だったんだっていうのも後から気づいたくらい。三作品とも、無表情で少し気の強そうなワンパターンの演技だったからかも。言い過ぎかな。近々、超大作の主役とかで大活躍するかもね。いや、それはないかあ。
でも映画自体は、ホワイトハウスで大統領を追い詰めるクライマックスとか超迫力あったし、登場人物もそれぞれいい味出していたし、『地獄の黙示録』的なインパクトある映像といかにもな音楽による世紀末的演出???もよかった。話題になった赤いサングラスの男だけど、『おまえはどんな種類のアメリカ人なんだ?』はキレッキレッ演技だったよね。急遽代役として起用との経緯らしいけど、実生活ではキルスティン・ダンテストの結婚相手というのには驚いたね。
いまに始まったことじゃない分断。某大統領の存在など、リアルなアメリカの近未来の映画なんだ的な話もあるけど、そこじゃないと思った。イギリス人なガーランド監督って、社会性を意識したっぽい脚本書くけど、結構引き気味なスタンスだよね。どこか全然違う方向を見ているようなファンタジーっぽい違和感がある。うまく説明できていないけど。今作品で強く思った。
アベンジャーズ ⁉️
死に身の戦場カメラマン
A24史上最高の製作費を費やした映画と言われ興行も批評も成功した。
が、私見としてはゾンビを内戦にした映画、という印象。主人公はロイターの記者ら。リアルだがシチュエーションがありそうにないから、ジャーナリズム魂の根拠が希釈された。にもかかわらずひたすら命がけ、ノーヘルで小隊にぴったりはりついてアナログ写真を撮りまくるのが変すぎる。シリアスなジャーナリスト、なのに動機がない。ゾンビなら解る世界だが、内戦と言われるとピンとこなかった。
だがRottenTomatoesは81%と69%で意外にも批評家がサムズアップしていた。どこがいいと言っているのか見ると、幾人かの批評家はこれをホラーとみなしている。ゾンビ映画と同列にみるなら社会派視点からの講評がまぬがれる。
またサウンドデザインがいいと言っている。たしかに選曲とその使い方は地獄の黙示録風で秀逸だった。
さらに説明を省いているのがいいと言っている。内戦に至った経緯や情勢など解らぬまま、戦闘描写を見せられ、状況が解らなすぎるゆえに、その解らなさが戦争の無意味さを際立たせた、と評価された。
そのほかキルスティンダンストの演技やスペクタクルで手加減しない殺戮シーンなどが評価にあがっていた。
が、個人的にはピンとこなかった。新米戦場カメラマン役のCailee SpaenyはラフなTシャツ姿で死に身の戦場にいるっていうよりスーパーボウルかなにかを観戦している人にしか見えず、そこらへんに死骸や乗り捨てた車両が転がっている世界は内戦よりもウォーキングデッドが連想された。ゾンビを内戦にした映画という見方でいいのは解ったが、となれば比べるのはロメロになるから、むしろハードルは上がってしまう、という話である。
唯一凄みを感じたのはジェシープレモンスが出てくるシーン。超国家主義かつ白人至上主義で戦乱に乗じて気に食わない人間をコロしまくっている暴徒を演じていた。プレモンスが演じるとほんとに怖いのはさすがだった。白眉だったと思うがプレモンスは旦那枠でノークレジットだった。
wikiからの引用だが、否定派の批評家が『脚本が有色人種の登場人物を残虐行為の媒介物として利用している点はもっと掘り下げる必要があった』と述べていた。
この意見は、内戦が政治的なものでなく、ヘイトから発展したものである可能性を示唆していると思う。前述したプレモンスのシーンで殺されたのはいずれもアジア人の記者だ。
かつての南北戦争=Civil Warは黒人を奴隷あつかいする派と解放したい派の争いだったが、あたらしいCivil Warはアジア人のヘイト派と擁護派の争いなのかもしれない、という示唆である。そして懸案となるアジア人とは当然中国人のことだ。言うに及ばず、世界中に中国人が蔓延している。未来にはアメリカに限らず中国人を火種とする争いはじゅうぶんに考えられる。
ホラーより怖い「アメリカ合衆国」の最期
2024年公開、アメリカ・イギリス合作映画。
【監督・脚本】:アレックス・ガーランド
主な配役
【リー・スミス】:キルスティン・ダンスト
【ジョエル】:ヴァグネル・モウラ
【ジェシー・カレン】:ケイリー・スピーニー
【サミー】:スティーヴン・ヘンダーソン
1.あまりに生々しい終末のアプローチ
◆他国から奇襲攻撃を受ける
◆隕石が地球に衝突する
◆異星人が侵略を試みる
◆核戦争が始まる
過去には、さまざまな空想(科学)のアプローチで、
アメリカの危機や終末が描かれてきたが、
「内戦」によるアメリカの自壊は、いまを反映していて生々しい。
本当に生々しすぎて、映画を観てまったく笑えない。
2.アメリカ人と日本人の違い
アメリカ人はこんな人たちだろう、と想像している通りの人物たちが次々と登場してくる。
ナチュラルに怖い。
日本人とは決定的に異なることが分かる。
アメリカ人=敵対勢力は、原則として、殺す
デフォルトプログラムが「殺す」なので、
やりとりの緊迫感はハンパない。
3.まとめ
記録映画のようなリアリティ。
本当に怖い映画。
ホラーより怖かった。
素晴らしい作品とは思うが、
怖い映画は苦手なので、☆3.0
アメリカの分断を描く最終形。そしてジェシーのお尻も大きい
嗚呼!戦場カメラマン
日本の報道レベルの低さに嫌気がさし、彼等を見習って欲しいと願った戦場カメラマン
彼等は、戦争の惨さを伝えるためという尊い志で命がけで赴いてるのだと思いきや…………
実は大金を儲けるため、スクープ写真を取るためのただの’野望’しか持っていなかったのか
そう思わせる映画だった
実際は違うことを願うのみ
主役のキルステン・ダンスト
どこかで見たなぁと思って調べたら
スパイダーマンの彼女役だった
スパイダーマン当時からさほど美人ではないのに、なぜ抜擢されたのかと思ってたけど、演技力でのし上がってきたのかもね
独裁的な大統領のせいで分断されるアメリカ
これはトランプを揶揄してるのだろうか?だとしたら、歴代大統領の中でもかなり「まとも」な大統領だと思っているので、憤慨してしまう
まぁそれはともかく、映画中の糞みたいな大統領のために命を張る意味がどこにあるのだろうか
生きるか死ぬかの瀬戸際でさえ「わたしを56させるな」と上から目線で一介のカメラマンに言う大統領なのに
56されると分かっていても、身代わりとしてホワイトハウスを大統領専用車で出る側近達
降伏を宣言しながらも最後まで抵抗し殺戮を繰り返す警護官
同じ4なら、それだけの価値ある人の身代わりになりたい
恩師サミーの死に際の写真を削除するリー
自分をかばってうたれて倒れる彼女を撮影し続け、声さえかけないジェシー
もうそこには人間の心は存在してない
56し合う軍人や情けない大統領と同じ
戦争とは本当に恐ろしい!!
4人がD.Cへ向かう途中、突如通った一見平和そうな田舎町を見ていると、結果的に’無関心な者’こそが漁夫の利を得るのだと言いたかったのか、かなり意味深なシーンではあった
それにしても、ドリームの国の同じ国民同士が、ある日突然憎しみ合い56し合うなんて‼️
勿論、諸悪の根源は、金儲けのために安全な場所にいて戦争を仕掛ける奴等なのだけど
人類の悲しい未来が、人間の性が描かれた作品です
戦場での打ち合い等が行われているまさにその時に、カメラマンによって撮られた瞬間、白黒となった映像が止まるシーンが何度もある
それがまた、戦場の臨場感をリアルに伝えてくる気がした
戦いのシーンとのどかな自然風景の対比
そして、幸福感さえ感じるギャップのある挿入曲が印象的だった
未来予想のアメリカ東西戦争をリアルに描くも、映画的帰結に曖昧さが残る
南北戦争(tha Civil War/American Civil War1861年~1865年)以来の国家を二分する大規模な内戦に陥ったアメリカ合衆国の近未来を想定した戦争アクション映画。主人公は女性報道カメラマンとして活躍するリー・スミスで、記者のジョエルと恩師サミーと共にニューヨークから大統領取材目的で首都ワシントンD.C.に車で向かいます。そこにリーに憧れる新人写真家ジェシーが加わり、彼らが悲惨で危険な戦場や無政府状態の国土を辿るロードムービーにもなっています。戦争の発端は、独裁者の大統領が憲法を反故にして3期目に就任しFBIを解散させたこと。これに怒り独立したテキサス・カリフォルニア連合WF(Western Forces)がフロリダ同盟と手を結び、政府軍と激しい攻防戦を重ね、最後は敵連邦政府が殲滅するまで死闘するという、斬新奇抜で刺激的な作品でした。それで監督と脚本兼ねたアレックス・バーランドと撮影と音楽までの主要スタッフがイギリス人で占められている。流石に政治的な隠喩を連想してしまう内容だけに、アメリカ人の制作では難しかったかと想像します。主要キャストはアメリカ人の他に、ブラジル人、日系イギリス人、台湾系カナダ人と多様でした。
映画的な迫力と衝撃度の点で、前半の凡庸さと後半の緊迫感の差が大きいことが挙げられます。先ず内戦状態の敵味方分からない不安感が一気に増す中盤、彼らの知り合いであるアジア系ジャーナリストと偶然出会い、謎の兵士に捕まり危機に瀕するシークエンスが、実に怖い。お道化たユーモアからカーアクションのスリル、そして兵士に脅される戦慄の息詰まるタッチと、ここのバーランド監督の演出には一目置かざるを得ませんでした。その後の夜の山火事の中を車が走る異次元的で幻想的な美しさのあるシーンが素晴らしい。そして一機のヘリコプターが道案内するかのような朝焼けシーンからシャーロッツビルWF前線基地に辿り着く映画的な流れもいい。
それでもこの映画の見所は、夜の首都ワシントンD.C.で繰り広げられる激しい市街戦のクライマックスでしょう。光るワシントン記念塔を見せ、その前にあるリンカーン記念堂の攻防から、ホワイトハウスに突撃するまでの映像の迫力は、正にアメリカ映画の力量を見せ付けます。装甲車や攻撃ヘリコプターの活躍に続く、逃走する大統領専用車のアクション。遂にラスボスの大統領を捕まえるまでの銃撃戦と、息つく暇もなく圧倒されました。
このアクションシーンの見応えに対して、主人公リー・スミスの最期は、ジェシーの身代わりになる映画的な帰結に収めた作為を感じます。リアルを追求する表現に対して、彼女の思いが描き切れていない不満が残りました。折角キルスティン・ダンストが良い演技を見せているだけに、主人公としてもっと大事に扱って欲しいと思いました。ジョエル役のヴァグネル・モウラ、ジェシー役のケイリー・スピーニーもそのバックグラウンド含め人物の深みに物足りなさが残ります。それと巨漢の老体であるサミーが最後までいるとなると、動きの鈍さで不自然になり、それで脚本上途中で消したのではないかと思えてしまいます。現場の臨場感が写真の価値とは言え、命を賭けた兵士の邪魔にもなるジャーナリストの使命とは何かまで考えると、この脚本自体の強引さも指摘せざるを得ません。また象徴的なラストカットは、アメリカの観客がどう観たのかも気になるほど、西部劇に出てくる写真のように見えて、不謹慎ながら少し可笑しかった印象を持ちました。
昨年の大統領選挙で明らかになったアメリカの政治的分断を思い起こす野心的で、警告的なアメリカ映画でした。
国を世界を混乱させた罪を思い知れ
実写洋画がヒットしない昨今の日本興行。
昨秋の公開時、週末ランキング初登場1位。人気シリーズ新作や大ヒット作の続編でもない洋画実写オリジナル作品で、これは近年異例の事!
インパクトある題材や浸透しつつあるA24スタジオへの信頼だろう。
意欲的な作品を発表し続けるA24が、同社最大の製作費を投じて贈るのは…
もし今、もしくは近い将来、アメリカで内戦が起こり、分断したら…?
実にセンセーショナル。邦画でも新海誠監督で南北に分断された近未来の日本(その世界で生きる若い男女たちの恋と青春)を描いた作品があったが、現リアル独裁者の強引な政策で、ただでさえアメリカ国内や世界が揺れている今。決して起こり得ない絵空事ではない。
今も国が分かれ、睨み合い続くと言えば、韓国と北朝鮮。
アメリカも100年以上前、北と南に分かれた内戦があった。
それらの事が、今アメリカで起きたら…?
アメリカ、そして世界はどうなってしまうのか…?
鬼才アレックス・ガーランドが描く!
…のだが、やはり鬼才は変化球。
もっとポリティカルな作風かと思ったら、ジャーナリズム映画。プラス、ロードムービー的。
結構賛否分かれてるようだが、なるほどそれも納得。見る前とはちょい違った印象。
憲法違反の3期目、FBIを解体など独裁体制の大統領。
19の州が分離独立を表明。テキサス/カリフォルニアから成る“西部勢力”とフロリダ~オクラホマから成る“フロリダ同盟”は連邦政府軍を撃退し、首都ワシントンに向かっていた。
戦場カメラマンのリー、記者のジョエル、リーの師でもある老記者のサミー、道中出会った新米カメラマンのジェシー。4人はNYを発ち、ワシントンに向かう。大統領への独占直撃インタビュー。
大陸横断の道中、内戦~分断~無政府状態となったアメリカの姿を目撃する…。
荒廃した町。
道端には死体が無造作に転がり、目を覆いたくなるような光景。
内戦に関わらないようにし、以前のように穏やかな町でさえも。
そこかしこに屯する人々もとっくに正気を失っている。
道中、所属不明の兵士に捕まる。どの“アメリカ人”か、聞く。“アメリカ人”でなかったら、容赦なく処刑される…。(ジェシー・プレモンズ怪演)
殺伐とした雰囲気、異様な雰囲気、失われた雰囲気…。
それらをリーたちはカメラに収めていく。
一個人としてはトゲがあり、自己中的でもあるリー。大統領インタビューも独断。
が、ジャーナリストとしては信念あり。フィルター越しに世界(アメリカ)を覗いて。
ジョエルもサミーも振り回されつつも、サポート。
当初は何かを犠牲にしてまでカメラを向けるリーを理解出来ないでいたジェシー。
若い彼女も信念あるカメラマンになりたい。
次第にリーの姿を見つめ直していく。
リーが問う。私が死ぬ時もカメラに撮れる?
その時は答えられなかったジェシーだが、まさしくそれがクライマックスに…。
ほぼ4人の動向が主軸となり、とりわけキルスティン・ダンストとケイリー・スピーニーの熱演光る。
思ってた作風とはちと違ったが、それでも臨場感、緊迫感は圧倒的。特にクライマックスに近付くほど。
遂にワシントンへ。首都は激戦真っ只中。音響、映像、編集…戦場の渦中に入り込んだかのよう。
ホワイトハウスに突入。隠れていた大統領を見つけ出す。
銃を向けられ、最期の言葉は、陳腐な命乞い。
国を世界を混乱させた罪を思い知れ。
劇中の架空の大統領に言ってるのではない。
ジェシーのカメラは、我々の目は、その瞬間を逃さない。
アメリカ国民の銃の所持の権利は政府が間違っている時、国民は力を持って政府を打倒せよと合衆国憲法が定めでいるのです
シビル・ウォー アメリカ最後の日
2024年4月米国公開
Amazon prime video
シビル・ウォーとは辞書で引くと内戦のこととあります
というより米国人には南北戦争のことだとまず最初に理解するみたいです
1861年から1865年のアメリカ合衆国と南部連合国との内戦
南部連合国の国旗はXです
ツィッターを買収した大富豪はそれをX と改名しました
南北戦争は内戦と言っても本格的な戦争でした
それも両軍で300万人もの兵力が激突し4年で66万人が戦死したガチの戦争です
同時期の日本の内戦戊辰戦争では戦死者は両軍合わせて1万人ほどしかありませんでしたからケタ違いです
戦場になった合衆国南部の諸州の街々は焼かれ荒廃しました
「風とともに去りぬ」のクライマックスで焼かれたアトランタのように
アメリカ人は南北戦争をトラウマのように大変に恐れています
国論が二分され対立が激化したときまた南北戦争を起こしてはならないと恐れています
本作は合衆国大統領選挙の直前に撮られました
もちろん片方の候補が当選を阻止するための政治的な思惑によるものです
報道や映画界などメディアが先頭に立ってそれを防げ!そうしないと、数年後には本作の世界が現実になるぞという警告です
その戦いの結果はご存知の通り
1月20日何がなんでも大統領にしてはならない人物が大統領に就任しました
ウクライナは早々に見捨てられ
欧州もNATOと共に見放されました
アジアもどうなるか知れたものではありません
だから、新大統領が就任した以上本作の役割は終わりました
それでも本作をそれ以降も見る意義や意味はあるのか?
今日は2025年4月15日です
新大統領は関税戦争に取りかかって大騒動を全世界に繰り広げています
株式市場も債権市場も乱高下して
正に合衆国最後の日を迎えようとしているかのようです
本作の中で大統領が話す内容は
まるで現実のニュースのままです
合衆国憲法で禁じられている三期目の大統領就任まで考えているとのニュースですらつい先日現実に聞いたばかりです
彼は独裁者になろうとしているのです
しかし合衆国の人々は新大統領に従っています
表立って異を唱えたり反抗する議員や政治勢力はないようです
何故かって?
政府から弾圧を受けるから?
いくら酷い大統領であっても大統領は大統領、従うしかないから?
それもあるでしょう
しかし、本当のところは真っ向から対立して国が半分に割れてまた南北戦争になったらと恐れているからだと想います
本作の世界が現実化しないように
黙っているのです
彼らアメリカ人には本作の世界があり得ることをよくわかっているのだと思うのです
いくら酷い政策であろうとも南北戦争の再来よりはマシであると
リアルです
リアル過ぎるほどです
第二の南北戦争に突入したときアメリカがどうなってしまうのか
克明に映像化されています
アメリカ人にはもう本作の世界が見えているのだと思います
今日のニュースの延長線上にこの世界があることを
だから、この世界を現実化させないために、自分は黙っていよう
本作の中でも衣料品店の女性がそれが一番良いことだ思うと言っていました
この世界は間違い無く訪れてしまう
そんな悪寒に震えました
ではどうしたらそれを防げるのか?
ジャーナリスト?
メディア?
こうなった以上
そんなもの何の力も無いというのが本作の結論だったと思います
アメリカ国民の銃の所持の権利は政府が間違っている時、国民は力を持って政府を打倒せよと合衆国憲法が定めでいるのです
身も蓋もないことですがアメリカ国民がこの大統領を望んだ結果なのですからまして他国の日本人の私達になし得ることなど何も有りません
力だけがものをいう世界になってしまったこと私達日本人も本作を観ることでより早く気がつくことだとだけだと思います
暗澹たる思いです
武器を持たずに戦場を走り回る報道カメラマンの仕事の厳しさが分かる。...
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