「国を世界を混乱させた罪を思い知れ」シビル・ウォー アメリカ最後の日 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
国を世界を混乱させた罪を思い知れ
実写洋画がヒットしない昨今の日本興行。
昨秋の公開時、週末ランキング初登場1位。人気シリーズ新作や大ヒット作の続編でもない洋画実写オリジナル作品で、これは近年異例の事!
インパクトある題材や浸透しつつあるA24スタジオへの信頼だろう。
意欲的な作品を発表し続けるA24が、同社最大の製作費を投じて贈るのは…
もし今、もしくは近い将来、アメリカで内戦が起こり、分断したら…?
実にセンセーショナル。邦画でも新海誠監督で南北に分断された近未来の日本(その世界で生きる若い男女たちの恋と青春)を描いた作品があったが、現リアル独裁者の強引な政策で、ただでさえアメリカ国内や世界が揺れている今。決して起こり得ない絵空事ではない。
今も国が分かれ、睨み合い続くと言えば、韓国と北朝鮮。
アメリカも100年以上前、北と南に分かれた内戦があった。
それらの事が、今アメリカで起きたら…?
アメリカ、そして世界はどうなってしまうのか…?
鬼才アレックス・ガーランドが描く!
…のだが、やはり鬼才は変化球。
もっとポリティカルな作風かと思ったら、ジャーナリズム映画。プラス、ロードムービー的。
結構賛否分かれてるようだが、なるほどそれも納得。見る前とはちょい違った印象。
憲法違反の3期目、FBIを解体など独裁体制の大統領。
19の州が分離独立を表明。テキサス/カリフォルニアから成る“西部勢力”とフロリダ~オクラホマから成る“フロリダ同盟”は連邦政府軍を撃退し、首都ワシントンに向かっていた。
戦場カメラマンのリー、記者のジョエル、リーの師でもある老記者のサミー、道中出会った新米カメラマンのジェシー。4人はNYを発ち、ワシントンに向かう。大統領への独占直撃インタビュー。
大陸横断の道中、内戦~分断~無政府状態となったアメリカの姿を目撃する…。
荒廃した町。
道端には死体が無造作に転がり、目を覆いたくなるような光景。
内戦に関わらないようにし、以前のように穏やかな町でさえも。
そこかしこに屯する人々もとっくに正気を失っている。
道中、所属不明の兵士に捕まる。どの“アメリカ人”か、聞く。“アメリカ人”でなかったら、容赦なく処刑される…。(ジェシー・プレモンズ怪演)
殺伐とした雰囲気、異様な雰囲気、失われた雰囲気…。
それらをリーたちはカメラに収めていく。
一個人としてはトゲがあり、自己中的でもあるリー。大統領インタビューも独断。
が、ジャーナリストとしては信念あり。フィルター越しに世界(アメリカ)を覗いて。
ジョエルもサミーも振り回されつつも、サポート。
当初は何かを犠牲にしてまでカメラを向けるリーを理解出来ないでいたジェシー。
若い彼女も信念あるカメラマンになりたい。
次第にリーの姿を見つめ直していく。
リーが問う。私が死ぬ時もカメラに撮れる?
その時は答えられなかったジェシーだが、まさしくそれがクライマックスに…。
ほぼ4人の動向が主軸となり、とりわけキルスティン・ダンストとケイリー・スピーニーの熱演光る。
思ってた作風とはちと違ったが、それでも臨場感、緊迫感は圧倒的。特にクライマックスに近付くほど。
遂にワシントンへ。首都は激戦真っ只中。音響、映像、編集…戦場の渦中に入り込んだかのよう。
ホワイトハウスに突入。隠れていた大統領を見つけ出す。
銃を向けられ、最期の言葉は、陳腐な命乞い。
国を世界を混乱させた罪を思い知れ。
劇中の架空の大統領に言ってるのではない。
ジェシーのカメラは、我々の目は、その瞬間を逃さない。