「痺れるほどの皮肉が効いた米国内戦下のロードムービー」シビル・ウォー アメリカ最後の日 よしてさんの映画レビュー(感想・評価)
痺れるほどの皮肉が効いた米国内戦下のロードムービー
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「3期目」の大統領が君臨するアメリカ合衆国で起きた内戦下のロードムービー。
テキサスとカリフォルニアという二つの州が同盟を組んで政府軍と戦うという「あり得ない設定」ですが、分断の進んだ現在のアメリカでは必ずしも「あり得ないとは言い切れない」絶妙なリアリティ。
その中でベテランの戦場カメラマンと戦場カメラマンを志す若者、そして2人のジャーナリストが、独裁者である米大統領のインタビューを取るべくワシントンDCを目指します。
内戦で崩壊した「自由と夢の国」を舞台とした暗澹たるロードムービーの果てに、ベテラン戦場カメラマンはそのプロとしての矜持をすり減らした結果、人間性を取り戻し、戦場カメラマン志望の若手は人間性をすり減らし、「プロ」としての矜持を獲得します。
その結末に描かれるのは、「正しい」目的を持ち、独裁者の殺害を正当化するようなプロパガンダとしての一枚の写真を示すことで物語は終結を迎えます。
予告を見る限り、よりアクション要素の強い戦争映画を予想させつつも、アレックス・ガーランドがそこまでシンプルな映画を作るはずもなく、「正義」が正義ではなくなる瞬間の皮肉を見事に描き切った一作に仕上がっています。
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