「戦争で人の感覚が麻痺するってどういうことか」シビル・ウォー アメリカ最後の日 TSさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争で人の感覚が麻痺するってどういうことか
日本人である私は、政治的メッセージを感じることはなかったのだが、アメリカ人だとやはりあるだろうな。それについては、ここではあまり触れない。
内戦に至った経緯が全く不明、何故、政治思想の異なるテキサス州とカリフォルニア州が同盟を組んでいて、しかもどうして政府軍に勝っているのか(州兵主体だろ?各州にある連邦軍の基地ごと寝返った?)とか、色々と設定には突っ込みたくなったのだが・・・。
そういう設定の現実味はともかく、内戦下の人間の生き様、死に様、戦闘のリアルを観させてもらった。有り体に言えば、それだけだった。
戦場ジャーナリスト、カメラマンという人たちは、ある種「不感症」で、「死よりも好奇心」が強くないとやっていけないと思うのだが、この作品の若きカメラマン、ジェシーが衝撃的な出来事を乗り越えて、そうなっていく様が描かれていた。
それと対比するように、数々の死を見てきた百戦錬磨のベテランカメラマン、リーが時折みせる苦悩や魂の抜けたような呆然とした姿に、リアルな人間の姿を見た。
リーが自分を庇って撃たれて倒れるまでのシーンを確実にフィルムに収めるジェシー。
そして大統領最後の見せ場を演出したジョエルとシャッターを切るジェシー。
仲間の死、罪なき多数の人々の死を目の当たりにしてきた彼らが採ったこの行動をどう評価するか?彼らもまた戦争で感覚が麻痺してしまったのか。大義があれば、許されることなのか(大義すらなかったように思うが)。
その他、印象に残っているのは、以下の2つのシーン。
・夜道、戦闘で森が燃える中を走る車中から見る(皮肉にも)美しい景色
・「おまえはどの種類のアメリカ人だ?」という戦闘員の台詞(私は、この台詞に特段深い意味はなく、どんな回答であろうと、気に食わない奴は即刻射殺するだろうと思った。それが戦争の狂気)
「内戦?関わりたくないね」と言って暮らす街の人々も、感覚が麻痺している。
果たして、こんな事態に日本が陥ったら、どうなるのか?
自分はどっち側の人間になるのか?なってみないとわからない。
人間ほど難しいものはない。
(2024年映画館鑑賞27作目)
共感ありがとうございます。
このお話は現段階で完全フィクションなので、プライベートライアンみたいにドイツは降伏しアメリカが勝利、世界を牛耳るみたいな“その後”が視えないのが恐ろしいと思いました。