「新人ジャーナリストのエピソードは不要としか思えない」シビル・ウォー アメリカ最後の日 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
新人ジャーナリストのエピソードは不要としか思えない
冒頭から、既にアメリカが内戦状態に陥っていて、どうしてそんなことになってしまったのかについては、ほとんど説明がない。
確かに、現在のアメリカは、共和党(特にトランプ)の支持者と民主党の支持者との分断が深刻なのだろうが、だからと言って、カリフォルニアやテキサスやフロリダ等の州が独立に動くとも思えない。
映画の狙いが、「内戦が勃発したアメリカ」をシミュレートすることであるならば、下手に理屈を並べてその理由を説明すると、逆に現実味がなくなってしまうので、こうした、「原因はともかく内戦が起こっています」という描き方も「有り」なのではないかと思った。
実際、アメリカの街並みがウクライナやガザのようになっている光景はショッキングだし、水不足やら停電やらドルの下落やらによって市民生活が困窮している様子も生々しい。
何よりも、隣人同士が殺し合うという状況には戦慄を覚えるし、一行が住民の大量虐殺(の死体処理)の現場に出くわす場面では、「戦争の狂気」と「命の軽さ」が感じられて、肌感覚の恐怖を味わえた。
ラストのワシントンD.C.での激戦は、「戦争映画」としての本気度が伺えて見応えがあるものの、劣勢の大統領側が降伏もせずに最後まで戦い続けたり、大統領を問答無用で射殺してしまうところには、やはり違和感を覚えてしまった。
3期目を迎えているということなので、おそらく大統領は「独裁者」になっていて、それにふさわしい末路だったのだろうが、せっかくのチャンスだったのに、そもそもの目的だったインタビューがろくにできなかったことには、どこか釈然としないものを感じてしまう。
また、劇中、ベテランの女性ジャーナリストが、新人の女性ジャーナリストを教え導くような場面が度々出てくるのだが、それによって、戦場ドラマとしてのテンポや緊張感が途切れてしまい、間延びした感じになってしまったのは残念でならない。
それでなくても、新人ジャーナリストの勝手な行動とヘタレぶりにはイライラさせられたのだが、ラストでは、自分のせいで先輩が撃たれたのに、その様子を撮影するだけで、彼女を放置したまま、平然とその場を後にする姿には、あまりの非常識さに唖然としてしまった。
もしかしたら、戦場カメラマンとしての彼女の成長を描きたかったのかもしれないが、人命を軽視することがプロ意識であるかのような描写は、それこそ、ピントがズレているとしか思えない。
それから、報道クルーの全員がスチールカメラしか携行しておらず、映像や動画を撮影していないことにも、疑問を感じざるを得なかった。